閑話 突き放した者 2
「アトラス様? 今日はデートの約束じゃ……」
「すまない、少し急用ができた」
「そうですか……」
アトラスはそう言って、部屋を後にした。
「馬の準備を頼む、向かうところがあるんだ」
「でしたら、馬車を……」
「いや、個人的な用だ、俺一人で向かう」
「かしこまりました」
アトラスは使用人に、馬の準備をするように言った。
使用人は急ぎ足で、馬車へ向かった。
「さて……」
アトラスは行く前に体を清めようと、風呂場に向かった
その途中……。
「あの、アトラス様……?」
「……ハイドラ殿下」
彼の新たなる婚約者が声を掛けた。
アトラスは少々いらだっている声で返事をした。
「あの……」
「何の用だい? 要件なら早めに言ってくれ」
「あの……どこかにお出かけなら私も……」
「ダメだ」
「そんな……」
ハイドラは、婚約者の言葉に言葉を失った。
「すまない、また今度、予定を空けておく、帰りの馬車を用意してあるから、今日は帰ってくれ」
「……」
ハイドラはその場に立ち止まり、アトラスは風呂場へ向かった。
ハイドラはアトラスの後姿を見ることしかできなかった。
「そんな……アトラス様……」
ハイドラの視界がぼやけ、その場に膝をついた。
「……酷いですわ」




