第四十四話
カグラ様は、私の首筋に牙を触れさせた……。
痛……くない?
カグラ様は……甘噛みをしていた。
「か、カグラ様!?」
「……ん」
カグラ様は、私の声に耳を貸さず、甘噛みを続けている。
い、一体何ですか!?
数分くらい甘噛みをした後、カグラ様は私から離れた。
「ははは、びっくりした?」
「……」
私はあまりの出来事に、絶句した。
「本気で吸うわけないじゃん、あはは!」
「……」
カグラ様は変わらず笑顔を見せてくれている。
「ほ、本気で吸われるかと思いました……」
私は少し深呼吸した後、そう言った。
「ふふふ、言ったでしょ? わざわざ人間から吸う必要はないって」
「そ、そうですよね……あはは……」
私は安心したのと、少し残念な気持ちになってしまった。
なんでしょう、この複雑な気持ちは……。
「あ、ちなみに、さっきの甘噛みは婚約の印ね!」
「は、はい!?」
えぇ!? こここここ婚約!? いきなり何を言い出すんですか!
ちょっと待ってくださいよ! 私まだ心の準備できてないんですよ!
せめてもうちょっと関係を深めてから……。
「あはは、大丈夫、相手も甘噛みしなきゃ成立しないから」
「あ、そうですか……」
少し安心した……嬉しいですけど!
「それで? 私のどこが好きなの?」
「い、言わないとダメですか?」
「言って」
「は、はい……」
私は唾を飲み込んで、カグラ様の好きなところを語った。
いざ言うとなるとかなり恥ずかしいですけど……言います!
「わ、私は……」
「何?」
「……」
やっぱり無理ですぅ~!
「じゃあ、答えてくれるまで帰さないから」
「えぇ~!?」
う、嘘ですよね!?
ま、まさか……答えるまで……ずっと……。
「さぁ言って!」
「は、はい~!」
その後、なかなか言い出せず、解放してくれなかったのは別の話です……。




