表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

50/100

第四十話

「そろそろ……いいでしょうか?」


 私は一歩を踏み出せないでいた。

この一歩を踏み出せば、恐らく、ここに来ることは一切ない。

来ることが一切ないということは、すなわち……。


「カグラ様……」


 あれ……? なんだが視界が……。

それに、手の甲に水が落ちているような……?


「い、いけませんわ!」


 私は目から出た涙を拭い、立ち上がった。


「さぁ、行きましょう! 我が家へ……」


 ……ダメですわ、やはりカグラ様の事を考えると、涙が出てしまう。

私を裏切ったあの人との記憶を一瞬で洗い去ってくれた、白き聖女。

私にとって、カグラ様はそういう風に見えているのであろう。

だからだろうか、ここから離れたくないという気持ちが勝ってしまう。

どうすればいいのでしょうか……?

 そんな事を考えていると、ドアを叩く音が聞こえる。

なかなか来ないので、使用人の方が迎えに来たのでしょうか?


「リブラ? 私だけど……いい?」

「は、はい! もちろん!」


 声の主は先ほどまで考えていたカグラ様だった。

この声を聴くのも恐らく最後。

そして姿を見ることも……。

私は悲しみを抑えてカグラ様を迎え入れた。


「ごめんね、突然……」

「い、いえ!」


 カグラ様は入室するなり、ベッドに腰を掛けた。

私はその隣に座った。


「その……」


 カグラ様は顔を下に向けて、拳に力を入れていた。

私はその姿を見て、何とも言えない気持ちになった。


「あ、あの……カグラ様? え、ちょっと!?」


 カグラ様は私をベッドの奥へ押し倒した……!?

え、何ですか!?


「カグラ様……?」

「……」


 カグラ様は牙を立て、私を見ている。

両手は押さえつけられ、私は身動きが取れないでいた。

まさか……私の血を……?

でも……カグラ様なら……


「リブラ……」

「カグラ様……」


 私は目を閉じた……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ