閑話 待つ者たち、明かされる秘密
「リブラ……無事で帰ってくるかなぁ、心配だなぁ……」
「貴方、落ち着いてください」
「はい……」
伯爵家の書斎、ベガは落ち着かず、書斎を歩き回っていた。
それを見かねたオヒュカスは、落ち着くように肩を掴む。
「すまない……無事なのはわかっているのだが、不安でな……」
「私だって同じです、ですが不安になっても仕方ありませんよ」
「そ、そうだが……」
2人が会話をしていると、書斎のドアが叩く音がし、2人は返事をする。
「お父様、お母様、よろしいでしょうか?」
「あ、あぁ……」
ドアを叩いた主はレオだった。
ベガが返事をすると、レオはゆっくりと扉を開け、入室した。
「失礼します、お父様、お母様」
「なんだい? レオ」
「どうしたの? 朝から……」
ベガとオヒュカスは、リブラが失踪したことをレオに伝えていなかったので、そのことについて聞いてきたのではないかと、少し焦りを見せていた。
「突然申し訳ございません、昨夜、こちらの本を読んだのですが……」
「あぁ、それか」
「勉強熱心なのは良い事ですよ、レオ」
2人は、リブラについて聞いたわけではないことに、少し安心した。
レオは、「コーヴァス家その歴史」というタイトルの本を持っていた。
レオはページを開いた……そして、破れたページの所で手を止め、2人に見せびらかした。
「質問してもよろしいですか?」
「あ、あぁ……」
ベガは破れたページを見て、何かを察していた。
「この破れたページ……一体何が書かれているのですか?」
「……」
ベガはオヒュカスを見た……オヒュカスは目線を逸らし、向こう側を見ていた。
「そ、それよりも、他のページは見たのか?」
「すべて見ました、昨日のうちに」
「そ、そうか……」
レオは昨夜のうちに、全てのページを読み終えてしまった。
寝ようと思ったが、眠れなかった。
これも破れたページが気になって眠れなかったからだ。
「それで? 破れたページには何が?」
「そ、それはだな……」
ベガはオヒュカスに再び目をやった。
オヒュカスはため息をついて、口を開いた。
「そろそろ良いでしょう、貴方。レオももうすぐ結婚ができる年齢、伝えてあげましょう、いい機会でもありますし」
「あ、あぁ……破られたページの事だが……」
「迷宮の森の調査……ですね?」
「あぁ……」
ベガは書斎の奥にある金庫を開け、破られたページを取り出した。
金庫は二重三重に施錠されていて、かなりの機密事項であることをレオは覚悟した。
「いいか? 今から話すことは他言無用で頼む……オヒュカス、ちょっといいかい?」
「えぇ……」
オヒュカスは書斎の外に出た。
「さぁ、掛けなさい」
「はい……」
レオはいつもと違う父の雰囲気に、緊張を隠せずにいた。
「いいか? あの森にはな……」




