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第三十八話

「お待たせしました、メインディッシュでございます」


 アブラム様がそう仰ると、台車を押した使用人の方々が入室し、私たちの前にメインディッシュが置かれる。

それは湯気を放ち、こげ茶のスープの中に色とりどりの野菜と、肉が入っていた。


「これは……シチューですか?」

「ははは! そりゃそうでしょ!」


 カグラ様は笑いながらそう言った。

シチューは確か、隣の国の郷土料理だと記憶していますが……この里にも存在しているのですね……。

 そしてシチューの隣に、白い粒がたくさん入ったが置かれる。

ちょっと待ってください。


「これは……どういう風に食べればよいのでしょうか?」


 先ほどのサラダは、ただフォークで食べるだけでしたので大丈夫だったようですが、恐らくメインディッシュは相応の食べ方がある筈……ここは失礼のないようにしないと……。


「あはは! 別に食べ方なんてどうでもよくない?」

「ど、どうでも……いい?」


 私はカグラ様の言葉に驚愕してしまった。


「そうですよ、自由にお食べください」

「ははは、その謙虚なところ、オヒュカスにそっくりだね」


 盟主様とルーセット様がカグラ様に同調してフォローをしてくれた。

ルーセット様は、そういうところもお母様に似ていると仰っていますが……。

ところで……。


「この白いものは何ですか?」

「それはお米を水の中に沈めさせて、火にかけたものだよ」

「お米……ですか」


 お米というのは聞いたことはある。

 遠い東の国で主食として食べられている他、王国の南の地域のごく少数の民族が主食としてお米を作っているのは聞いたことがある。


「ここは小麦があまり育たなくてね、その代わりに、お米が良く育つんだよ」

「へ、へぇ~」


 なるほど、根本的なことは分かりませんが、そういう理由があるのですね。


「それよりさ、早く食べなよ! 冷めちゃうよ!」

「あ、はい!」


 私はまず、スプーンでシチューをすくい、口の中に運んだ。


「どう? 美味しい?」

「美味しい……です」


 カグラ様はニコニコとこちらを見て、感想を聞いてきた。

あまりジロジロ見られると……恥ずかしいです……。

シチューの味は、塩辛いスープの中に、野菜と肉のコクが混ざっていて、口に入れた瞬間にそれが舌の上に溶け込んで……。

シチューは今まで数回しか食べたことがありませんが、今まで食べた中で一番おいしいと感じましたわ。

この里では、野菜や肉が名産なのでしょうか? 屋台でも、小物よりも食べ物が多かったように見えましたが……。

 カグラ様の方に目をやると、シチューをすくったスプーンをそのままお米に持って行き、お米と一緒にシチューを口の中に運んでいた。

なるほど、そう食べるのが美味しいのですね! で、では私も……。

……なんでしょう、同じシチューなのにお米を介して食べるだけで、また違う世界観が見えますわ。


「あはは、そんなに美味しい?」

「あ、はい!」


 カグラ様は私の顔を見てそう言った。

わ、私、そんなに嬉しそうな顔をしてましたか!?


「うふふ、喜んでいただけると、私達も嬉しいですよ」


 盟主様も笑顔でそう仰った。

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