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閑話 家臣とメイド

「おう! おかえり、私の可愛いコウモリちゃん! 先に寝てるよ!」

「……コキク」


 大き目の寝室のベッドに、盟主の家臣であるコキクが横になっていた。

コキクはナミスから頼まれた伝言を伝え終わり、床についていた。

森の外で活動するための薬が切れ、瞳は青から赤に戻っていた。

アブラムは反対側のベッドに腰を掛けた。


「どうだった? あの人間の子は?」

「……別に」

「別に? 君の事だから今すぐにでも殺してやりたいとか何とか言うのかと思ったよ」

「オレを快楽殺人者とでも思っているのか?」

「そういうわけじゃないよ、ただなんか態度が違うな―って」


 威圧的な態度を取るアブラムだが、コキクは平然としていた。


「というかお前、いつも言っているが、もう少し家臣らしくしろ、なんだ? そのだらしのない恰好は」


 コキクは先ほどまでの燕尾服を脱ぎ、シャツ一枚で、横になっていた。


「いいじゃん、もう仕事は終わったし! 盟主様に呼ばれたらすぐに行けるようにしてるよ」

「……あっそ」

「それよりさぁ、折角男児が産まれた祝い事があったんだし、私は是非とも美しい君と踊りたかったなぁ、残念だなぁ」

「……からかうのも大概にしろ」

「私はいつだって本気だが?」

「……そうかよ」


 アブラムはコキクに背を向け、着替え始めた。


「おうおう、相変わらず綺麗な体だねぇ、どれ私が手伝ってあげよう」

「近寄るな! この薄汚い猛獣が!」

「その言い方は酷いじゃないか、ほら……」


 コキクはアブラムの背後から抱き着き、服を脱がせようとしていた。


「や、やめろ……」

「いいから……」


 コキクはアブラムの腹部を触り、耳元で囁く。

アブラムは抵抗の意思表示を続けた。


「やめろと言っているんだ!」


 アブラムはコキクを払い除けた。


「言ったはずだ、次触ったら……」


 アブラムは牙をむき出しにし、コキクを威嚇する。

しかし、コキクは余裕そうな表情でアブラムを見ていた。


「冗談だよ! 冗談! そんなマジにならなくてもいいじゃん!」

「……なんだと?」


 コキクは微笑みながら、アブラムの顎を触る。


「その怒った顔、いつ見ても美しいよ……やはりそそられる」

「ふざけるなよ……オレは本気だぞ……?」

「ほう?」


 両者にらみ合いをしているが、端から見ると、アブラムが一方的に敵意をむき出しにしているようにしか見えなかった。

 コキクは変わらず笑みを浮かべている。


「……今日は客がいるから大目に見てやる」

「嬉しいねぇ、ありがとう!」

「だが! 次触ったら……本気で殺す……」

「はいはい」


 コキクはアブラムの顎から手を離した。


「以前から言っているが、君は今まであった女の中でも一番だ……私のものになる気はないのか?」

「……オレはお前が嫌いだ、出来る事なら今すぐにでも相部屋を解消してほしい」

「そんなこと言わないでくれよ、私はこんなに可愛い女と相部屋なことが人生で一番嬉しい事なのに」

「……お世辞が下手だな」

「お世辞なんかじゃないさ、君はいつ見ても美しいよ」


 コキクは自分のベッドに腰を掛け、着替えるアブラムを凝視する。


「見るな!」

「なんでだい? この距離なら必然的に見てしまうよ」

「この猛獣が……」

「猛獣か、確かに私はそうかもな、君を食いたくて仕方がない」

「……」


 アブラムはタオルを持って、部屋を出ようとした。


「お風呂かい? なら私も……」

「来るんじゃない! お前と一緒に入ると、いつ食い殺されるか分からん」

「別に食べないさ、今はまだ……な」


 コキクは素早く着替え、タオルを持った。


「おい! 来るな!」

「いいじゃないか、女同士、背中を流し合おう」

「別に必要ない!」

「私はどうしても必要だ! お前のその屈強な手で、私の背中を洗い流してほしい!」

「……この変態が」


 アブラムはコキクに押され、浴場へと向かった。

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