第三十話
「そうなんだ、私はしょっちゅう入ってるけどね」
「しょ、しょっちゅう!?」
頻繁に同性と入っていらっしゃるのですか!?
いやいや、ここではそういうの普通では……
でもでも! いくらなんでもそんな……
「そんなに驚かなくても、アブラムとだよ」
「そ、そうですよね……」
「あはは、なんだと思ったの?」
「あ、いえ、その……恋人……とか……」
ちょっと! 私ったら何を言っているのですか!
これじゃあ意識しているのが丸わかりじゃ……
「あぁ恋人? 私ずっといないんだよねぇ、男性も女性も」
「へ、へぇ~」
カグラ様は気にしていないのか、普通に答えた。
よ、よかった……ってそうじゃなくて。
でも、少し気になることがあるので、聞いてみましょう……。
「あの、吸血鬼の中では、女性同士が付き合うのは普通……なんですよね?」
「そうだよ」
「その……カグラ様はどうなのですか……?」
「どうって?」
「その……カグラ様は……女性に興味はあるのですか?」
私は気になったことを率直に聞いてみる。
べ、別に私がカグラ様と付き合いたいとか、そういう下心はないんですよ!
「私? そうだなぁ~」
カグラ様はしばらく考える。
私はその間、「のぼせていた」
「……うーん」
「……」
カグラ様は考える。
その間で、私は自分のことを後悔した。
会って数時間しか経っていない、しかも吸血鬼からしてみれば得体のしれない存在である人間が、自分の趣味嗜好を聞いてくるなんて、普通に考えたらどうなのでしょうか?
カグラ様は真剣に考えているようですが……私はが逆の立場だったら、回答に困って、適当なことを言ってしまうかもしれない。
「好きと言えば好きだし、嫌いと言えば嫌い」のような。
普通ならば、そのような曖昧な答えを言うしかないだろう。
私はカグラ様の答えを待ち続けた。




