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第二十九話

 その後は、食事をして、カグラ様がまた血を飲んで、屋台のゲームで遊んで……。

楽しい日々は、あっという間に過ぎて行ってしまった。

気が付くと、私は遊び疲れたのか、欠伸が込み上げてしまった。


「ふふふ、そろそろ戻る? 私もそろそろお風呂に入りたいな……」

「お、お風呂!?」

「あ、私たち流水は別に平気だよ?」

「よ、読まれましたか……」

「この辺は有名どころだからね」


 伝承って本当に役に立ちませんわね! 嘘だらけじゃないですか!

……まぁ、これも里を守る為でもあるのでしょうか?


「じゃ、屋敷へ戻ろうか!」

「は、はい!」


再びエスコートされ、私たちは城へ戻った。



 今、私は大変な状況に陥っている。

私は今、お風呂に入っている。

それだけならば別にいい、お風呂は生活の中では欠かせない物ですからね。

問題はこの状況です。


「いやー、こんなに大きいお風呂、やっぱり複数人で入らないと意味が無いよね!」

「そ、そうですね……」


 今、私の真横には、雪のように美しい、白い肌の女性がいる。

今この場には、アブラム様もいない。

完全に2人きりである。

私は横に目をやることができなかった。


「どう? リブラ、温度はちょうどいい?」

「え、えぇ! とても気持ちが良いですわ!」

「そう、なら良かった」


視界の端っこに、カグラ様が見える。

カグラ様は万年の笑みでこちらを向いている。

カグラ様は気にしないのでしょうか? 同性と2人きりでお風呂なんて……。

でも普通に考えて、同性なら何も問題はない筈……問題ない筈なんです!


「どうしたの? なんか顔赤いけど」

「い、いえ!」

「もしかして、お風呂の水、熱い?」

「あ、熱くありませんわ! あはは……」


 私は緊張を笑ってごまかした。

な、なんとかして、この場を切り抜けられる方法は……。

い、今は何とかして視線を……

私は硬くなっている首を動かし、カグラ様に目をやる。

カグラ様はやはり美しい。

服越しではわからなかったが、若干筋肉がついているのが分かる。

やはりあのような猛獣を相手にするには、少しは鍛えていないとやられてしまうのでしょうか……?

吸血鬼は皆力が強いというのも伝承である。

全ての吸血鬼がそうとは限らないとは思いますが、少なくとも、カグラ様とアブラム様は、里の中では強い方なのでしょうか?

里の皆様は安心しますね……このような方々が盟主様の娘であり、従者であり……。

それに比べて私は……婚約を破棄され、屋敷から飛び出してみんなに迷惑を掛けて……。


「ん? どうしたの? 私の顔になんかついてる?」

「あ、いえ……その、同性とお風呂に入るのが初めてなもので……」

「そうなんだ、私はしょっちゅう入ってるけどね」

「しょ、しょっちゅう!?」

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