第二十七話
しばらくして、私たちは一旦離れた。
周りの視線はこちらに一点集中、当たり前ですが……。
「やはりあの方は姫様の……?」
「あの踊り……息がぴったり……」
「信じられない……私達より格段に美しかった……」
私は冷静になり、先ほどまでの事を振り返った。
い、いったい私は何をしていました!? た、確かに踊りは楽しかったですし、とても優雅でしたわ!
その後、つい、私は……。
あぁ! カグラ様と目が合わせられない! 先ほどまでずっとそうしていたのに!
なぜでしょう? カグラ様を見ると、変な気持ちになってしまう。
まるであの人と付き合っていたころに受けたような……。
……あの人? あの人って、誰でしたっけ?
わかりませんが、今の私は……。
「あはは、尚の事勘違いされてるみたいだね」
「か、勘違い……そ、そうですね……」
勘違い。
私はその気であっても、カグラ様はそうではない。
先ほどの……あれも、ただ乗せられてやっただけなのでしょうか?
悲しいような、当然のような……何とも言えない気持ちになってしまいましたわ……。
「さ、踊りも終わったし、何か食べよ!」
「え、えぇ……」
私たちは広場を後にし、通りへと向かった。
私は複雑な心情のままだった。
◇
通りを歩きながら、私は考えた。
カグラ様は、今の私をどう見ているのだろう?
数時間前に会ったばかりの私なんて、ただのどうでもいい、領主の娘程度にしか見ていないのでしょうか?
でも、先ほどまでの私への態度、まるで親しい人に接するような態度でしたわ。
『あの……大丈夫?』
『よく見たら脚怪我してるじゃん』
『大丈夫? 怖かった?』
『凄いでしょ? 私も好きなんだ、この街』
『あはは、緊張しなくてもいいんだよ、お見合いじゃないんだから』
『ふふ、やっと笑ってくれた』
……緊張を解くための演技……なのでしょうか?
いえいえ! 人を疑うなんて、人として最低ではないですか!
きっとあれは本心に違いありませんわ!
……でも。
『あまりに男性の人数が少ないから、女性同士のカップルっていうのも珍しくないんだよ』
『気にしなくていいよ! そう見られるのもしょうがないって!』
『あはは、尚の事勘違いされてるみたいだね』
……もしかしたら、カグラ様はそういうのにはご興味が無いのでは?
で、でも、私だって興味ありませんでしたし! ……先ほどまでは。
今はもう、この白銀の髪を見るだけでも見とれてしまう。
どうしましょう、繋いでる手が震えて、嫌な気分にしてしまうのではないのでしょうか?
……アブラム様の視線も気になりますわ。
これでカグラ様を万が一傷つけたら、私はここで天寿を全うすることになってしまう。
一体どうすれば……。




