第二十六話
「大丈夫? 緊張は解れた?」
「は、はい! 少しは!」
カグラ様と私は、両手で手を繋ぎ、お互いに向き合っていた。
「少し? 本当に大丈夫?」
「あ、その……」
「あはは、深く考えなくていいよ」
いざ会場に着くと、やはり周りの視線や他のカップル、色々なものに目が行ってしまう……。
「リブラ」
「は、はい!?」
「緊張するなら、私の目だけを見て」
「え、えぇ!?」
そんなこんな言ってる間に、演奏が始まる。
カグラ様の体が動き出したのと同時に、私も動く。
ダンスはいつも家でお稽古をしているのですが、女性同士は初めてだったので、上手く踊れるかは不安だった。
でも、カグラ様の素顔を見ていると、安心した。
自然と体が動き、カグラ様に合わせた。
この場合は、カグラ様も私に合わせてくれているのでしょうか?
どちらにせよ、どこか優雅な気持ちになった。
段々と、曲乗ってきた私たちは、踊りが激しくなっていった。
曲が終盤に差し掛かろうとした時だった。
カグラ様が突然私を持ち上げた。
私は一瞬動揺したが、それに乗せられてしまった。
私はカグラ様に持ち上げられたまま、静止した。
周りの目線は恐らく私たちに釘付けだった。
それでも、今の私たちにそれを考える隙は無かった。
恐らく、客観的に見ると、私たちは芸術作品の彫刻のように見えているでしょう。
気づいたら、先ほどまで見ていたカップルたち含め、拍手の音が響き渡った。
しかし、今の私は、嬉しいと恥ずかしいが入り交じり、ただ息を吸うことしかできなかった。
しばらくして、カグラ様が私を降ろし、顔を合わせた。
「こんなに楽しく踊れたの、初めてだよ!」
「私も……こんなに優雅に踊れたのは……初めてです……」
「……リブラ」
「……カグラ様」
その時、私は魔が差した。
カグラ様の美しい顔に見とれた私は、顔を近づけ、そして……。
「……ん」
「……んん!」
息が絶えていたにもかかわらず、私はそれに目掛けて口を合わせた。
カグラ様も同じ考えだったのか、特に嫌がっている様子はなく、寧ろ求めているようだった。
周りには拍手の声しか聞こえなかった。
それは、私たちを祝福しているような、称賛しているような……。




