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第二十五話

 私たちは、まだ待機している。

私の手はカグラ様にずっと握られている。

カグラ様の体温が、手のひらを通じて伝わってくる。

な、なんでしょう……? この感情は?

 女性同士なのに、妙に緊張してしまう。

周りを見ると、私たちと同じように、女性同士のペアが多く見られ、男女のペアは数組しかいない。

と、いうことは、別にこの中ではおかしくはない……いや、おかしいという表現はどうなのでしょう!?

 べ、別に皆さん好きで組んでいるわけで、ここでは女性同士のそういう関係は普通で……でも! 私たちはそういう関係ではなくて……と、友達同士という設定で……。

そ、そうです! 皆さん友達同士なのです! えぇ!


「ねぇ……まだかなぁ? アタシ早く踊りたぁーい!」

「まぁまぁ、ボクは君との時間がさらに増えて嬉しいよ?」

「もう……」

「ふふ……」


 ふと横に目をやると、金髪と黒髪のペアがそんな会話をして……接吻を……。

え、えぇ!? そんな大胆な……。

 黒髪の方の口調は男性的だったが、体系や雰囲気から女性だと分かった。

と、いうことは、女性同士のカップル!? ほ、本当に!?

周りを再び見ると、確かに距離感が友達同士ではない、それ以上に見える。

カグラ様は里で知らない人はいない……ということは……。


「……ねぇ、あの人、姫様のパートナー?」

「どう見てもそうでしょう……姫様あんなに楽しそうな表情をしていらっしゃるし……」

「お相手の方、美人な方ね……」

「里にあんな方いらっしゃったかしら?」

「こら! 色目使わないで! 私がいるでしょ!?」


 ……どうやら私は、カグラ様と、つ、付き合っている人に見えているようですわ……。

そうですよね! そう見えますよね!

ここにいる多くの方はカップルですし、私はそういう風に見られても当然ですよね! えぇ!

……恥ずかしい、何回目かもわからない、体温が上がる感覚。

おそらくカグラ様は、手のひらを通じてそれが伝わっている。


「……恥ずかしいの?」


 カグラ様が察してくれたのか、そう聞いてくる。

図星だった。


「はい……」

「気にしなくていいよ! そう見られるのもしょうがないって!」

「そ、そうですか……?」

「うん! それに私は……嫌じゃないし」

「え、あ、その……私もです! はい!」

「あはは、顔真っ赤じゃん」


 カグラ様ったら、何故平然としていられるんですか!

私は恥ずかしさで頭が爆発しそうなのに……。


「お待たせしました! 只今より、開始いたします! 皆さまご準備を!」


 前方から、女性がそう呼び掛けた。

つ、ついに始まる……普通の夜会ではこんなに緊張しないのに……。


「落ち着いて……私に全てを委ねて……」

「あ、えっと……はい!」


 カグラ様の囁きは、今の私にとって、緊張をほぐしてくれる良い潤滑油となった。

カグラ様に恥をかかせないように、私も頑張らないと!


「さ、行こ!」

「はい!」


 気合を入れて、私たちは会場へと向かった。


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