第二話
ランタンの灯りが、私の顔の近くにあることが、瞼の裏から分かった。
え……?
「もしもーし! 生きてますかー? ……って立ってるし、息してるから生きてるか」
吸血鬼は、私に対して安否の確認を行っているみたいだった。
あまりに拍子抜けの出来事に、つい私は返事をしてしまった。
「は、はい……」
「あ、やっぱり生きてた、何してんの? こんなところで」
何をしている……? それを聞きたいのはこっちなのですが……?
ここはなんと答えればいいのでしょう……?
「あ、えっと……道に……迷っちゃって……」
「はぁ? そら迷うに決まっているでしょう? 迷宮の森なんだし」
「え、えぇ……」
「私が聞いてるのは、なんで人間の、それも女の子一人で、こんなところにいるわけ? 同行者はいるの?」
女一人なのは貴方も同じなのでは……?
そう聞き返そうと思ったその時、少女が突然険しい表情になり、私の背後へ素早く回り、壁になるように両手を広げた。
「え?」
「まずい……この人を付けていたのか……」
え? 私、付けられてたんですか? 何に?
「ここは危険だ! こっち来て!」
「え? ちょっと……」
私は謎の少女に腕を引っ張られ、木々の奥へと入っていった。
「はぁはぁ……」
「い、一体何ですか!? そもそも貴方は……ふごっ!?」
貴方は何者!? 吸血鬼なんですか!?
そう言おうとしたが、口を塞がれてしまった。
後ろから抱き着かれ、胎児のような体勢で横になっている。
ランタンの灯りは消え、私の目の前で横たわっていた。
すると、何か猛獣のような唸り声が聞こえた。