第二十話
「あはは! 凄い似合ってるよ!」
「は、恥ずかしいです……」
鏡で見た私は、まるで別の国の貴族のようでしたわ。
これが本当に私なのでしょうか……?
……っと、ちょっと待ってください。
「カグラ様……アブラム様……鏡に映るのですか!?」
「当たり前じゃん、何でそんなこと?」
「あ、いえ……」
「あはは! また伝承!? 面白いね!」
「す、すみません……」
また失礼なことを……しかも今回はアブラム様にまで……
アブラム様が怒ったような目でこちらを見つめているのが、鏡越しで分かった。
「ま、とにかく、これで外に行けるね! さ、行こう!」
「あ、ちょっと!」
「姫様! お待ちください!」
私はカグラ様に引っ張られ、外へと連れ出された。
◇
「ほら早く!」
「ももも、もうちょっとゆっくり歩いてください~!」
私たちは、ランタンが照り付ける街を歩いていた。
後ろにいるアブラム様も、かなり速足で私たちを追っている。
カグラ様は私をエスコートしてくれるも、まるで子どもが駄々をこねているように、私を急かした。
一体何なのですかぁ~?
「ほら! 見て!」
「な、なんですかぁ~……わぁ……」
カグラ様が立ち止まり、上を指差した。
上を見ると、無数の明るい星のような点が、あちらこちら動いていた。
先ほどの街灯だらけの道とは違い、この辺りは灯りが少なく、その光がはっきりと見えた。
「綺麗……」
「でしょ?」
「この光は一体何なのですか?」
「気になる? これはね……蛍だよ」
「蛍?」
聞いたことがありません……一体何なのでしょうか?
「蛍はね、光を放つ虫なんだよ」
「む、虫?」
む、虫が光を放つのですか?
信じられません……。
「光っているのは主に雄で、警戒しているときとか、雌に求愛する時に光を出すんだ」
「な、なるほど」
信じられませんが……綺麗なことに変わりはありませんがね!
「どう? 少しは気分、晴れた?」
「え、えぇ……」
「なら良かった」
カグラ様は笑顔を見せてくれた。
まさか……急かしていたのはこの為なのでしょうか?
……でも、それでも無理に引っ張るのはどうなのでしょうか!? ……嬉しいですけど。




