第十五話
「そんなことがあったのですね……」
「えぇ、共存できなかったことは悲しいですが、結果として、我々はこうして平穏に生きていけているのです」
「何と言いましょうか……申し訳ございません……」
「謝る必要はありませんよ、メリクは我々を守るために、そのように決断したのですから。むしろ感謝したい気持ちです」
曽お爺様の判断が正しいか正しくないかは分かりませんが……確かに、余計な争いを生まずに済んだのかもしれません。
ですがなんでしょう、この胸の奥に引っかかる何かは……。
「さて、私から使いを送ってベガに連絡しましょう、今日はこの屋敷に泊まってください」
「あ、ありがとうございます!」
「さ、挨拶も済んだし、行こうか!」
盟主様にお辞儀をし、私はカグラ様に連れられ、部屋を後にした。
「あの目つき……あの時のメリクにそっくりね……」
◇
「はぁ……緊張しましたわ」
「お疲れ様」
盟主様、とても貫禄があって、謎のオーラが出ているように見えましたわ。
「さ、そんな堅苦しい場所から抜け出せたってことで、街に出てみない?」
「えぇ!?」
突然笑顔でそう仰るカグラ様に、私は動揺してしまった。
「大丈夫だよ、『アレ』を使えば……」
「あ、アレ?」
「まぁ私に任せて! 部屋で待ってて!」
「あ、ちょっと、カグラ様!」
カグラ様はどこかに向かって走って行ってしまった。
もう! なんなんですか! 全く!
「……お客様」
「は、はい!?」
突然後ろから話しかけられ、私は飛び上がってしまった。
振り返ると、アブラム様がいた。
どうやら話が終わるまでずっとここで待機していたようですわ。
「部屋までご案内いたします」
「は、はい……」