第十四話
「さ、着いたよ」
「この先に盟主様が……」
それはとても大きな扉だった。
宮殿の玄関よりも一回り小さいくらいの扉。
私はその大きさに圧倒された。
カグラ様がその扉にノックをし、到着を知らせる。
「カグラだ、お客様を連れてきた」
カグラ様がそう言うと、扉がけたたましい音を上げ、ゆっくりと開いた。
中は、綺麗な茶色に包まれた部屋で、宮殿のダンスホールとさほど変わらない広さの部屋だった。
通路を作るように、女性の兵士の皆様が並び、頭を下げる。
奥に玉座のような大きめの椅子があり、そこに、王族が着るような立派な衣装を着た女性がいる。
あれが……盟主様……。
……なんでしょう、頭を下げている筈なのに、女性たちから謎のオーラを感じますわ。
まるで、私が招かれざる客のような……実際そうなのですけれでも……。
カグラ様は私の手を繋ぎ「大丈夫だよ」とおっしゃっているような顔で私を見つめる。
そのまま私は、カグラ様にエスコートされる形で、玉座の方へ足を運んだ。
玉座の手前まで来た辺りで、カグラ様の足が止まる。
私もそれに合わせて立ち止まり、玉座を見上げた。
カグラ様と見た目はさほど変わらない、生き写しのような方だった。
髪型はカグラ様よりもうんと短い、ショートヘアの女性だった。
「ようこそ里へ、私は『ナミス』、吸血鬼の盟主と言われています、どうぞよろしく」
女性は立ち上がり、お辞儀をした。
わ、私も自己紹介を……。
「こ、コーヴァス伯爵家のリブラ・コーヴァスと申します! お、お見知りおきを……!」
私もスカートを掴み、お辞儀をした。
緊張で手が震える……!
「コーヴァス……? なるほど、『メリク』の子孫ですか、確かに、その面影がありますね」
「メリク……?」
私の曽お爺様の名前……?
「理由はどうあれ、ここに来てしまった以上は仕方がありません、ここの事は他言無用でお願いします、よろしいですね?」
「は、はい……」
ですが、誰かに言ったところで信用してくれるとは思いませんが……。
もちろん言うつもりはありませんよ!
「……ですが、貴方がコーヴァス家の方で良かった」
「……え?」
「貴方の曽祖父……メリクには大変お世話になったのです、我々がこうしていられるのも、彼のおかげと言ってもいいでしょう」
ナミス様は続けるように、曽お爺様について語った。




