第十三話
「あぁ、人間社会だと長は大抵男性なんだっけ?」
「え、えぇ……」
「吸血鬼はね、どういうわけか、『女性の比率が高い』んだよ。」
「へ、へぇ~」
確かに通りを歩く人は、ほとんど女性でしたわ。
男性は……数人程度しかいなかったですわね。
「だから偉い人は大抵女性、ここの屋敷にいる人も多くは女性だね、だから子供で男の子が産まれるとその家は里の人総出で祝われるんだよ」
「な、なるほど」
「あまりに男性の人数が少ないから、『女性同士のカップル』っていうのも珍しくないんだよ」
「そ、そんなこともあるんですね」
女性同士のカップル……出生の問題などが生じないのでしょうか?
いやいや! 当人同士の愛ならば別にどのような形でも構わないではありませんか!
また私ったら失礼なことを……。
「ははは、別に私たちの世界ではそれが普通ってだけで、人間の世界だとそれが普通じゃないことぐらい分かってるよ」
……またも筒抜けだった。
恥ずかしくなってしまい、顔を手で覆った。
「どうしたの? 別に恥ずかしがることじゃないじゃない?」
カグラ様は気にも留めてない様子ですが……この方は陽気な笑顔を見せてくれているので、尚の事恥ずかしく感じてしまう。
「私……先ほどから失礼な事ばかり……カグラ様は、こんな私を不快に思われたりはしないのですか?」
「別に? というか、私たちの事を少しも知らない立場からすれば、そう思うのが普通じゃない?」
カグラ様はとてもお優しい方……その上、私はカグラ様に心配をかけてばかり……。
「リブラ」
「え?」
またもカグラ様は、私を包み込むように抱きしめる。
恥ずかしさがさらに増し、顔が熱湯のように熱くなるのが分かった。
「誰だって知らないことはある、今回それで知れたのなら、また新たな知識を得られたってことで、成長したと思わない?」
「え、えぇ……」
「その心を忘れないでいれば、それでいいと思うよ」
カグラ様は囁くようにそう言った。
だからなんで密着するのでしょう!? ……嫌なわけじゃないですけど。
「さ、行こう」
「あ、ちょっと……」
カグラ様は私の腕を引っ張り、目的地へと走った。
「ちょ、ちょっと! もうちょっとゆっくり!」