第十話
「あの、失礼ですが……お年は幾つなのですか?」
「あー……幾つだったかなぁ、200は越えてると思うけど」
「に、にひゃ……」
亡くなったお爺様よりも3倍近く生きていらっしゃる!?
「まぁこれでも吸血鬼の中では若い方かな、よろしくね、『リブラ』」
「あ、は、はい! よろしくお願いします、カグラ様……」
「そんなに硬くならなくたっていいのに、流石オヒュカスの娘さんだね」
なんでしょう、カグラ様はまるで私を付き合いの長い友人のように接している。
なんででしょう、不思議と私もその流れに乗せられそうになってしまいますわ。
「それで、なんで迷宮の森に来たの?」
カグラ様は今度は真剣な表情で私を見つめる。
その表情は、先ほどの笑顔とは違い、叱るような感じだった。
どうしましょう、先ほどは気晴らしと言いましたが、やはり信用されてないご様子……死にに来たなんて言えないですし……どうしましょう……。
「あのねぇ、人間の、しかも女の子が、夜一人で森の中に入るなんて、自殺以外考えられないんだけど?」
……筒抜けでしたわ。
ここは正直に言いましょう……。
「はい……おっしゃる通り……死のうと思って……迷宮の森に……」
そう言うと、カグラ様は立ち上がり、私の目の前に寄って来る。
「……ここに座って」
カグラ様はベッドを指差してそう言った。
私は先ほどとは違うカグラ様の豹変ぶりに恐怖を感じる。
……やはり私の血を吸う気なのでしょうか? 元々死のうとは思っていましたが、ここに来てそうなってしまうと……怖いですわ。
私はつばを飲み込んで、指示通りに座った。
カグラ様は私の隣に座り、私の顔を凝視する。
覚悟を決めて目を閉じた瞬間、森の中でも感じた、優しい暖かさが全身を覆った。
「え、ちょっと……」
「大丈夫……私がいるよ」
「み、耳元で囁かないでください!」
カグラ様の香りと体温がダイレクトに伝わる。
な、なんですか!? 吸血鬼は隙あらば抱き着いたり囁いたりするんですか!?
「なんで死のうと思ったの? 言ってごらん」
カグラ様は私の肩に手を置いて、また真剣な表情で見つめる。




