表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/100

第九話

『姫様、お茶の用意ができました』

「あ、どうぞ!」


 声からして、お姫様の部下の方だった。

 ドアが開き、お茶を乗せた台車を押した、メイド服を着た金髪の女性が入ってきた。

あら? 吸血鬼は銀髪の筈では?


「ありがとう、『アブラム』」


 なるほど、この方はアブラム様というのですね。

 この方もお姫様と同じような白い肌をしていらっしゃいますね、このお二方は、何と言えばいいのでしょう……雪のような肌をしていて、つい、視線が行ってしまう。

人の事をジロジロ見るなんてはしたないとは思いつつも、つい見てしまう。

あぁんもう! 私ったらなんでこんなことを考えてしまうの!


「失礼します……」


 アブラム様がお茶の用意をしてくれている。

……その時だった、私に対するアブラム様の視線が険しいことに気づいた。

 先ほどもそうでしたが、私は彼女から嫌われているのでしょうか……?

アブラム様はお茶を置いた後に、空の台車を押して、部屋を出た。


「ごめんね、あの子悪い子じゃないんだけど、どうも外にいる人間に不信感があってね」

「あ、いえ……私こそ……」

「さ、飲んで」


 私は出された紅茶を飲んだ……美味しい。

屋敷で飲んでいる紅茶よりも、香りが口の中に大きく広がる。

宮殿で出されたものも飲んだことがあるが、あれよりも断然おいしいと断言できる。

 ……そういえば、吸血鬼って血以外は口のできない筈では? なんでこんなにも美味しい紅茶を? お姫様も普通に飲んでいらっしゃいますね……アブラム様の髪の色といい、伝承で聞いていたこととはまるで違いますわ……。

お姫様を見ながらそんな事を考えていると、彼女がこちらに気づいたのか、またあの月のような笑顔を向けてくれた。


「吸血鬼が紅茶飲むのがそんなにおかしい?」

「あ、いえ、そうじゃなくて、あの……」

「いいよいいよ、知らない事なら仕方がないし」

「あ、その……申し訳ございません……」


 私ったらまた失礼なことを! さっきから謝ってばっかりではないですか!

なんとはしたない! なんとみっともない!

私は恥じらいを隠しつつ、そう考えながら、紅茶を飲んだ。


「ところで、そろそろ自己紹介をしなくちゃね……。」


 お姫様はカップをソーサーに置いて、私へ視線を向けた。


「私の名前は『カグラ』、みんな姫様って言うけど、盟主の娘ってだけで私はそういう器じゃないから……まぁ、気軽にカグラでいいよ、よろしくね」


 お姫様……カグラ様はそう言ってまた笑顔を向ける。

そ、そうですわ! 私も自己紹介を……。


「あ、その、私はリブラ・コーヴァスと申します!」

「コーヴァス? ということはオヒュカスとベガの娘さん?」

「へ!? 両親をご存じなんですか!?」

「うん、もちろん! そっかぁ……あの二人はもうそんな年齢になったんだぁ……感慨深いな」


 そんな年齢!? 見た目は私より年下に見えるのですが!?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ