プロローグ
「拝啓 コーヴァス伯爵家令嬢、『リブラ・コーヴァス』様、誠に残念ではございますが、貴方と一生を添い遂げられないと判断したため、婚約を破棄させていただきます、末筆ながら、リブラ殿下が新たな恋に発展されることをお祈り申し上げます。 ノクチュア王国第三王子 アトラス・ノクチュア」
書面には、このように記されていた。
封筒の中には、慰謝料と思われる大金が入っていた。
「そんな……」
アトラス様とは長い付き合いだった。
そう、あれは15年前の夜会のこと、当時10歳だった私は誤って彼の靴に飲み物をかけてしまった。
私はすぐさま謝ったが、彼は「気にすることはない。」と言って、靴を交換しようと言って、城で二人っきりになって……それで……。
あれ……? それで、どうしたんでしたっけ?
何も、見えない、思い出せない、あんなに長い時間を一緒に過ごしたのに。
こんな紙切れとお金ですべてが無かったことになるなんて……。
「お嬢様……? あの……きっと次がありますよ!」
メイドの『スピカ』が気を使ってくれたのか、私を励ましてくれた。
……でも。
「次……? 私はもう25なのですよ……? 次なんてあるわけありませんわ!」
25歳は一般的に、もうじき結婚を逃す年齢、私はあと1か月後に26歳になる。
こんな年寄りと結婚してくれる人なんて、いるわけがない。
もう私に生きる価値なんてない、どこかで消えてなくなりたい。
「お、お嬢様! お待ちを!」
日が暮れ、そろそろ真っ暗になるであろう大地の中を、私は馬で疾走した。
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