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おうさまのひとりごと

 フェルトン家を刺激してはならぬ。


 王位を継ぐ時、先代から耳にタコが出来るほど言い聞かされた事だ。

 私が次代に譲る時も口を酸っぱくして言うつもりだったが、息子は既にフェルトン家の一人娘と友情を築いていた。


 それにしてもアルマちゃんはなんと可愛らしい娘なのだ。可愛い。とにかく可愛い。羨ましいぞ息子よ。


 彼女の父親は私と同世代だが、彼が学生時代、王太子だった私は近付かせても貰えなかった。


 何故なら、危険だからだ。


 別に、王位を簒奪しようとか、そういう危険性はない。彼は権力にはとことん興味がなかった。

 ただ、戦う事が大好きで、それも効率重視な所がある。

 魔法の改良が趣味で、規格外の威力でよく訓練場を吹き飛ばしていたのは知っている。なぜ吹き飛ぶのか知るまでは、またか、と思う程度だったが。


 戦争のただ中の頃は、もっと酷かったらしい。

 その時のフェルトン家の当主は風魔法のスペシャリスト。


 一番有名なのは『竜の道(ドラゴンロード)』と名付けられた戦法だろうか。


 まず、魔法で起こした竜巻をドリルのように使い、地下10数メートルを掘り下げ、竜巻を移動させる事で巨大な壕をものの数分で作り上げる。その際、竜巻の通り道に建物があろうが兵器があろうが人がいようが、容赦なく巻き上げた。目にした者の記録によると、竜巻には、中に無数の金属が投げ込まれていたとか……。

 この竜巻は、敵陣のど真ん中に作られる。後ろの敵は進む事ができず、前にいた敵は戻る事もできず、いきなり分断されるわ竜巻が襲ってくるわで当然混乱する。最後は突風が吹き乱れ、何とか竜巻から逃れた敵も残らず壕の底へ……。


 最早、戦いと呼べるものでは無かった。


 そんな圧倒的な力で戦場を恐怖に陥れたフェルトン家当主は、とにかくダンジョンに興味津々だった。それで当時の王は当主にフェルトン領としてその地を与えたのだ。


 それで正解だったと思う。王都とも離れていてとても良い距離感だと思う。


 そんな恐怖の一族の次の次の当主が、私と同世代の彼だが、まあ彼も確かに、恐ろしく優秀な魔法使いだったらしい。

 初めは訓練場を吹き飛ばしていた事しか知らなかったが、彼は土魔法を極めている男だ。


 土と聞いてもピンとこないかもしれない。だが、彼は土の成分とやらを研究し、それが含まれているものはなんでも分解できる魔法を作ったらしい。

 分解し過ぎた結果、訓練場が吹き飛んでいたのだと聞いた時の私の混乱は分かるだろうか。


 全く意味がわからなかったので、使いを送って詳しく聞いてきて貰ったのだが、たとえば、窓ガラス、床、壁といったものは、元を辿れば土に行き着くのだそうだ。

 それらを、元の土に還す魔法を使うだけで、粉々になって吹き飛ぶのだ。


 ああ、しかし私が一番怖かったのはそこではない。

 彼は、土の成分は人の体にも含まれている、と断言したらしいのだ。

 何故言い切れるのか。

 考えるまでもない。試したのだ……それを聞いて私はその日のうちに、王へ、人体実験を禁止する法律を提案した。めちゃくちゃ調べあげて抜け道のない法を詳細に練り上げた。後にも先にもああまで必死に手と頭を動かしたのはあの時以外ないかもしれない。


 それ以来、私は誰に言われずとも、フェルトン家とは近付きすぎないよう、気を付けてきた。

 幸いというべきか、フェルトン家は国境で小競り合いがあっても自力で追い返し、しかも報酬を要求してこない。

 むしろ、思い切り戦えて良いご褒美だと言わんばかりに毎回当主が先陣を切って飛び出していくらしい。

 我ながら、適切な距離を保ってきたと思っている。客観的に見たらおかしいのかもしれないが、私と現当主にとっては、これが一番良い距離なのだ。


 次代は、どうやら密接に関わってきそうだが。


 アルマちゃんは可憐で優しい少女に見えた。

 まあ、息子たちが何やら画策していたのは分かっているが、アルマちゃんも乗り気だったようだから彼らの演技に付き合ってみたものの、あまりの可憐さにちょっと気が遠のきそうになってしまった。

 お陰で宰相であるクロムウェルに呆れた目で見られたが、仕方ないではないか。彼女の全てが私のツボをこれでもかというほど鋭角に突いてくる仕上がりだったのだ。

 

 国内どころか、大陸随一かもしれない強力な光魔法使い。彼ら一族が今までそうだったから、たぶん彼女も今後、光魔法を極めていくのだろう。

 希少な属性持ちを王家に取り込めない事をとやかく言う輩はまだいるが、アルマちゃんと息子たちが頑張ってくれたからな、あとは私が説得して見せようではないか。

 第一、フェルトン家は完全実力主義。その上でアルマちゃんを後継者に指名しているのだから、その時点で諦めろと言うのだ。

 戦いの記憶が薄れてきているせいか、貴族の中に刷り込まれていた筈のフェルトン家の恐ろしさも薄れてきているようだな。


 というか、さっさとライナスくんとの婚約承認しちゃえば良いのではないかな。現当主は何故のんびりライナスくんと文通しているのだ。もしや、アルマちゃんの気持ちが固まるまで待つつもりなのか。


 規格外な男でも、やはり可愛い娘には甘いという事なのか。

 そう思うと、少しだけ親近感がわくかもしれぬなあ。

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