決闘と暗躍する者
腐った林檎は他の林檎を腐らせるという。
それだけ林檎というのは腐るのが早い。
だからこそ早期に取り除くことで他が腐ることを防ぐのだが……
「ぼくはこの国のカッテ王子だ!」
簡単に取り除けない場合はそのまま腐ってしまう場合がある。
「おい聞いているのか庶民!!」
学園に併設された競技場で先程の少年と向かい合います。
なーんというかねぇ。龍王討伐した時の勲章授与でも王族の人はまともだったしハイネさんもお転婆そうに見えても根っこはまともだからこういうおバカな王族なんて創作の中だけだとおもってたんですよ。
だから現実逃避したって仕方ないじゃないですか。
しかしどうしましょうか。学園内での決闘なのでお互いに木剣です。問題は決闘とは言え王族に怪我をさせるようなことをしてもいいのか。
チラリとハイネさんの方を見れば親指を下にして首をカッ切るような動作をしていました。
大変お怒りのようです……。ハイネさんが身分を隠してるなら同じように目の前のカッテ少年も身分を隠す予定だったのかもしれません。
「おねえさまではありませんか!!」
あ、私の視線でハイネさんに気づいたのでしょうか。
それよりもハイネさんが天を仰いでいます。ここでバラされるのは想定外だったのでしょう。というか秘密にしてたことすら忘れられてる可能性がありますね。
「執事! じゃあ始めるよー」
そしてノリノリで審判役をしようとしているお嬢様はなんなんですかね。いやもういいです。さっさと終わらせましょうか。
「始め!!」
「フンッ! ぼくは産まれた時点で【剣術】スキルを持っていた天才の――ゲフゥ!?!?」
地面を全力で蹴って懐に入りそのまま右脚でヤクザキック。カッテ王子はゴロンゴロン転がって壁にぶつかりました。
「……手加減出来ましたね」
「執事の勝ち〜〜!!」
ところでなんのために決闘をしているのかいまだに聞いていないのですが誰か説明してくれないのでしょうか?
ちょうどいいタイミングでハイネさんが近づいて来たので聞いてみましょうか
「容赦ありませんね」
「手加減はしましたよ?」
「……あれで?」
「それでこの決闘なんですが原因はなんでしょうか?」
声をかけてきたハイネさんに答える。
本気で蹴ったら内臓飛び出しますからね。せいぜい胃の内容物が全部口から出る程度に加減してありますよ。
「それはですね――」
「Aaaaaaaaーー!!」
「ッ!?」
後ろから何か嫌な気配がしてハイネさんを守るように覆いかぶさる。
背中に感じる鋭い感触。
(刺された!?)
その後も何度か衝撃が続き、周囲で見守っていた学園の先生たちに襲撃者が取り押させられるまでそれは続いた……。
「いやー執事服がなかったら危なかったですね」
「なんで無傷なの!?!?」
「なんで無傷ですの!?!?」
「執事ですので」
驚くお嬢様とハイネさんのツッコミを受け流しつつ取り押さえられた襲撃者に近づく。
ちなみに私の執事服はブラックワイバーンの皮膜で作ってあるし諸々便利な付与もしてあるのでナイフ程度は通しませんよ?
で、原因となったのはやっぱりというかカッコ王子……いやカッテ王子でしたっけ。
縛られているカッテ王子に近づくと微かに妙な気配がする。
念の為に手袋をして懐をガサゴソっと。
出てきたのは罅の入った黒い宝石がついたペンダントだ。なんかもう、これが原因ですよというレベルで黒いモヤモヤした魔力が【魔力感知】に引っかかる。
手袋をひっくり返すようにして宝石ごと包んで先生たちに渡しておく。大事な証拠物品だしね。多分学園から王城のほうに連絡するだろうし。
さて、とりあえず私に出来ることは終わりましたし執事の仕事に戻りますか。
「いえ、だめですよ? 念のために休んでください」
「無傷なんですが」
いそいそとお嬢様の横に立とうとするとハイネさんが休めと言ってきます。
「執事? 休まなきゃだめだよ?」
「あー……では魔道具屋に注文しておいた回収の魔道具の受け取りをお願いしたいのですが」
お嬢様、そんなうるうるな上目遣いどこで覚えたんですか。
観念して休むために受け取り用に一筆書いてお嬢様に渡しておきます。
保健室を借りて休みますか……本当に怪我なんてないんですけどね。




