爵位と招待状
爵位に関してはわりと適当です。
旅は道連れ世は情け。
女三人寄れば姦しい。との言葉もあるように、賑やかで平和なまま王都と辺境伯領の中間地点にある街『ハルフニス』にやってきた。
たこ焼きやお好み焼きなどの香ばしいニオイが宿屋につくまでに馬車の中にまで侵入してくる……おい絶対ここに居付いた『迷い人』の誰かさんは大阪の奴だろ。いま通天閣と太陽の塔みたいな木工品見えたぞ!?
ちなみにこの国では米も作られているがそこまで人気はない。生産も人気もだいたい小麦7に米3ってくらいの割合だ。
王都になら米料理もそこそこあるらしいんだけどね、中間地点であるこの街ではそこまで人気があるわけではない。せいぜいが米粉として小麦に混ぜているくらいのものだ。
「それでは午前中はおとなしくしていてくださいね?」
「えー、みんなで動くから大丈夫だって」
「訂正します。問題事を起こさないでくださいね」
「はーい」
お高めの宿屋に着いてから、気になることがあったので冒険者ギルドまで行くことにする。
その間はお嬢様たちは宿屋でお留守番の予定だったんだけど、どうやらみんなでお出掛けらしい。
…………扉を閉めるときに明日のデートコースを〜〜と聞こえた気がするが気のせいだと信じたい。
滞在期間は3日くらいの予定なんですけどね? それと明日の予定とか何一つ連絡されてないんですが?
「では、情報料はこれで」
「はい、ご利用ありがとうございました」
後日請求するために支払った料金をメモにとり今貰ったここ半年の魔物の分布と討伐報告の統計を見る。
場所はギルドから少し離れた喫茶店。頼んだコーヒーを飲みながらしばしの休息だ。
「ああ……癒やされる……」
苦味のあるコーヒーが口内を満たして、スッキリした頭で情報を整理していく。
これも仕事だが普段どこぞの問題児を相手する仕事より数段楽に感じる。
ここまでの道中、ほとんど魔物に出会わなかった。それ自体はいいことなのたが……普段と違う状況ということは普段とは違う事態が起こってるということだ。
よくあるのは強い魔物が現れて弱い魔物が捕食されたり逃げ出したりしてるとか。
「うーん……?」
その場合、普段弱い魔物を狩っている魔物が出てきてもおかしくないんだが……その目撃情報もないと。
つまりなにもわかっていないってことだ。
ただまあ、ギルド側もおかしいとおもっているようで調査依頼は出してるそうだ。
なにかの前兆なのか? 判断するには情報が少なすぎる。
「あ、コーヒーもう1杯ください」
まあ、とりあえず今はこの癒やしの時間を大切にしよう。
「で、これですか……」
宿に戻るとフロントのところでお嬢様たちがなにやら話し込んでいた。
話を聞いてみるとどうも不在の間にここの領主の使いが来て3日後に食事に招待したい旨と招待状を残していたらしい。
「それは……舐められてますね」
「そうね、これはありえないわ」
漏れた言葉に反応してくれたのはハイネさんだ。数日前の接吻からちょっとギクシャクした感じはあったがそれも鳴りを潜めつつある。
よくわからないと首をかしげる他のパーティメンバー3人と共に部屋に戻って説明をする。
なーんでお嬢様も首をかしげてるんですかねぇ?
「さて、どう説明しましょうか」
まず、ここは辺境伯であるお嬢様の父上の領地と王都の領地との境である。ただこの国は中央集権気味なのでこの街を取りまとめているのは王都側の人間だ。
と、言っても国の中枢からは最も離れた王都側の土地なせいか貴族でも低めの爵位である子爵の者が治めているらしい。
子爵とは簡単に言えば伯爵の補佐役である。まんま伯爵の助力をするための爵位だ。
この国は王族と血縁関係の深い『公爵』、各地の領主を取りまとめる『伯爵』、そして伯爵の下で領地を管理する『子爵』がいる。『男爵』もいるが領地を持ってなかったり一代限りだったり町長みたいな立場だったりと権力が弱いので割愛する。
で、今回問題になるのは辺境伯の娘であるお嬢様に対する態度だ。
辺境伯はちょっと特殊で他の領主よりも武力を持つことが許可されている王直属の領主だ。
地球で例えるなら公爵と伯爵の間の『侯爵』に近いだろう。
(龍王を倒したときに『龍伯』なんて爵位を作られそうになったのは黙っておきますか)
「でも執事、なんか丁寧な言葉で書かれてるよ?」
「そうですね。言葉だけはそうでしょう」
招待状には丁寧な言い回しと貴族特有の飾り言葉で書かれているが……簡単に言えばこちらの都合も考えずに日時を指定して呼びつけているのだ。
こういう時はご来訪に都合のいい日時を教えてほしいって書けばいいんだよこの糞タヌキが!!
「なんか執事怒ってる?」
「いいえ? 気のせいですよ」
とは言え3日ですか。このアホはどんな意図があってこんなことをしたのか。それがわからない。
「あの、ここ領主なんですが……3年前に有能だった先代が急死していまはご子息が運営をされてるそうです」
考え込んでる俺に情報をくれたのはまたしてもハイネさんだった。なんかルルさんとお嬢様はむむむって唸ってるが無視。
「急死ですか?」
「はい。いえ、そっちは怪しいところはなかったと記憶していますわ。なにせ働くのが大好きな御仁だったらしくて」
(ワーカーホリックかな?)
「ですが、そのせいか子供のことは放ったらかしだったらしく……えっとその…………女好きのダメな息子という噂を聞いたことがありますわ」
よし、今夜にでも潰せるなら潰してしまおう。




