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お嬢様の執事  作者: 天然ソーダ水
学園編
45/58

ハイネさんとの模擬戦

前回のあらすじ

お嬢様は執事の外堀を埋め立てて城壁で囲みました。

「861、862、863」


 朝、まだ誰も起きていないような時間に庭に出て剣を振るう。

 ヨツバさんのお義父さんにもらった剣を身体に馴染ませるためだ。


「921、922、923」


 素振りではなく振り回すように。冒険者時代にこういう剣を使っていた奴らを見たことがある。

 その動きを思い出すように、休みなく、流れるように、剣先で円を(えが)くように。

 手首で、腕で、肩で、背中で、腰で、膝で、脚全体で、身体全体で、回転を続ける。

 振ってみた感じだと重心は真ん中より手元に近い。

 よく大剣は重さを利用して叩き切ると言われるが実際は重さを利用してぶん回して使う。

 それでも遠心力と重さによって腕を簡単に切り飛ばせるほどのエネルギーが先端にこもっている。

 そもそも漫画やゲームのような身の丈ほどの剣なんて重さ云々もだが人間の体格で持ち上げられるわけがない。


「998、999、1000!」


 が、それは現実(リアル)での話だ。

 一旦回転を止めて正眼に構える。そして振り上げて、剣道の素振りのように途中で止める!


「……ふぅ」


 人間離れしたステータスに任せた無理矢理の停止で身体が僅かに軋む。(あとちょっと目を回した)

 やっぱり物理的に無理があるか。


「現実逃避は終わりましたか?」

「王族が覗き見なんていいんですか?」

「駄目でも特権を使います」

「んな横暴な」


 背後から視線を感じていたが……誰かと思えばハイネさんだ。


「それにしても、そちらの口調が()でしょうか?」

「冒険者あがりなんでね」


 というか現実逃避とはなんだ現実逃避とは。


「ふふふ、ミリィちゃんにしてやられましたね」

「……」

「ぐうの音も出ないと言ったところでしょうか?」


 まさにそのとおりだ。保護者に見られた上にカメラまで用意してるなんて思わなった。

 しかもベッドの下から蓄音機まで出てきたからな!!

 『好き』って言い合った部分だけ再生された時には顔から火が出るかとおもったぞ、お嬢様がな!

 どうも蓄音機のほうはお嬢様も知らなかったらしい。ざまあみろとおもったがよく考えたら証拠が増えただけだった。ちくせう。


 この世界にもカメラと蓄音機はある。これまた過去にいた迷い人の発明だ。

 蓄音機のほうは地球にもある蝋管を使うタイプのやつで結構原始的な仕組みだ。

 一方カメラは500年前にピンホールカメラの原理と光を増幅させる魔法陣を組みあわせて火に強い白い紙に焼き付ける形でカメラの原型が開発された魔道具だ。

 さらにその年に急激に技術革新があったらしく太いペンのようなカメラ(ニューララ○ザーのようなもの)が開発された。

 ただ、そのときはカラーによる現像が出来なくて()()()()空中や壁に投影する装置(魔道具)もそのカメラの開発者が作り上げたらしい。


 …………おいこら過去の迷い人、やり過ぎだぞそれ。

 というか前にも500年前に騒動があったみたいな話を聞いたことがある気がする。よほどトラブルメーカーだったんだなその時の迷い人は。


 結局開発された小型のカメラはかなりの高級品だったらしく、ここ100年ほどでやっとカラーで写せる感光紙(かんこうし)が開発されてポラロイドカメラのようものが開発され、そっちが主流になってる。冒険者してたころに調査依頼で何度か使ったが地球のとほとんど原理は同じみたいだった。

 ここまで地球の物と似通っているのも理由があって、過去に迷い人が考案したもの、作りたかったもの、だが当時の技術で再現出来なかった物が資料として図書館に残っていて許可さえもらえば誰で閲覧できるのだ。

 知識は力なんだけどな、そのへんいいんだろうか?


 ちなみに、感光紙は妖精国に生息する特殊な(カイコ)の糸を一旦溶かして特殊な薬品でアレコレするらしく妖精の国の特産品になってるとか。実にファンタジーだ。


 あ、蚕がいるってことは桑の木とかあるんだろうか?

 桑の実があるなら欲しいなぁ。

 孫がなぁ、友達の家で採れた桑の実でジャム作ってくれたんだよなぁ。

 お砂糖たっぷりで甘かったけどおいしかったなぁ。

 娘に血圧のことで怒られたのはまあそれもいいおもいでだったということで。


「なにボーッとしてるんですの?」

「ああ、いや、なんでも――なんで抜剣してるんです?」

「ふふっ、貴方の正体は知ってると言ったでしょう? 英雄さん、前々から一度手合わせしたいとおもってたんですの」

「拒否権は……」

「襲いかかるので気にしないでください」

「気にしないでって……うわっ!? 真剣で斬りかかってきやがった!?」


 ハイネさんがレイピアを抜いて刺突を繰り出してくる。

 それをバックステップで回避しつつ距離をとって剣を構えようとしたところに更に踏み込まれての刺突。

 それを大剣の腹で防いだところでハイネさんは一旦下がって再び構える。

 いままで使っていた通常のロングソード(アーミングソード)とは異なり、今使っているのは所謂ツーハンデッドソードと言われる両手剣だ。

 使い勝手が違うせいでどうしてもワンテンポ反応が遅れてしまう。


「あら、防がれちゃったわ?」


 可愛く言ってもだめです。おっと!?


 あざとく笑ったかと思えば地面を蹴り上げての土かけ。それを思わず剣の腹で防ぐも――。


(しまった!?)


 幅広の剣で防いだせいで一時的に視界が塞がる。それを予測していたのか右から魔力の塊が、ハイネさん自身が左側に回り込むのを複数持っている感知系スキルが教えてくる。

 右から飛んできたのは属性を付与されていない魔力弾ってやつだ。コントロールしすいのが特徴なので迂回するようにして自身と反対の軌道で動かしたのだろう。

 それを剣で叩き落とすように迎撃。()()()で再び刺突を繰り出してきたのを今度は剣で上に払うようにして斬り上げて防ぐ。

 が、しかし。


「今度こそ!」


 右手のレイピアは()()()。おそらく本命であろう左手の短剣を懐に飛び込んで突き刺そうとしてくる。

 普段使っている片手剣なら簡単に迎撃出来ていただろう。だが今は剣を両手で持っている上に振り上げたばかりだ。

 もちろん、全力を出せばそのまま振り下ろしが間に合う。だがそんなことをすれば相手は真っ二つだ。


(っていうかなんでさっきから心臓狙いなんだよ!?)


 いや、好都合か。感知系スキルで周囲に誰もいないのを確認しつつ、花壇や木も生えていないなにもないところに落ちるようにコントロールして振り上げた両手剣をそのまま手離す。


「よい……しょっと」

「きゃああ!?」


 突きこんできた腕をとって一本背負いを敢行。

 途中、勢いは十分でも体格差で投げにくく感じたので膝をついて背負い落としにする。


「うう……負けましたわ。惨敗ですわ……」

「いえいえ、危なかったですよ」


 まだ慣れていない剣だったこともあるがステータスを考えるとかなり善戦したと言える。


 さて、そろそろ戻りますか。えーっと、鞘はどこにやったかな? 龍王の鱗を使った漆黒の鞘なんだけど。


「ねえ、ミリィちゃんと結婚するのよね?」

「しませんが?」

「ハーレムとか興味ない??」

「ないですが??」


 鞘〜鞘〜。あれ、どこかに吹き飛んだか?


「なによ、ミリィちゃんのどこが不満なの?」

「不満云々より恋愛対象として見れないんですよ」


 個人的にだが、子供の恋愛と大人の恋愛は違っているとおもってる。

 未成年の恋愛はそれこそその時の幸せを求めてだろうが、大人になるとどうしてもその後のことを考えるようになる。

 結婚してうまくやれるか、お互いを尊重出来るか。収入は? 人間関係は? どうしても色々と考えてしまう。

 

 子供の恋愛は感情のおもむくままに動いて自分の意思をおしつけてくる。

 今の状況がまさにそうだ。大人に恋して、周りを巻き込んで外堀を埋めるようにして追い詰めてきた。


「……ん?」


 あれ、そう考えると俺もヨツバさんに似たようなことしてるような。

 いや、俺は老後に仲良く一緒に暮らせるイメージが出来るかどうかが恋愛対象になるかどうかの基準にしてるから。ヨツバさんはセーフ。暴論とか言われそうだが聞こえないふりをする。


「いいじゃない。もう外堀はほとんど埋まってるわよ」


 本人の知らないところで追い込み、追いつめ、仕留める。人はそれを狩りというんですよ。


「私とも既成事実つくる?」

「だから年齢的に恋愛対象に見れないんですって」

「安心して? 欲しいのは子種だけだから」


 とんでもないこの言い出したぞこのお姫様。


「……スキル婚ですか?」

「ふふ、女の子にとって強い男は素敵におもえるし子供が欲しいと思うのは生物としておかしくないでしょう?」


 それは、どういう意味で言ってるんだ?? お、鞘見っけ。


「なんなら私の教育係ってことにする? それなら立場的に王城内でも相応の発言力が――――」

「し〜〜つ〜〜じ〜〜〜!!

「あら、()()()()()()がお呼びですわよ?」

()()()ですね。それ以上でもそれ以下でもありませんよ」


 懐から出すふりをしながらアイテムボックスからメガネを出してかけた後、自身とハイネさんの全身に【クリーン】をかけて綺麗にしてからお嬢様の部屋に向かう。


「教育係……自分で言っておいてなんだけどいい考えね」


 なにか怖いことをおもいついている様子のハイネさんはスルー。不安は心の棚に陳列して奥のほうに押しやっておく。

 王族には関わりたくないです。

数話前の『第六王女とか聞いていませんよ』でスキル婚について少し触れています。

ちなみに、大剣についてはゲームみたいに背中に背負うのではなくゴルフバッグや竹刀のように肩に背負う感じで装備してます。

ただ、普段はアイテムボックスに入れていて全力を出すときだけアイテムボックスからとりだす予定です。

あれ、鞘いらないんじゃ……。

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