もしも異種族と一緒になるなら
前回のあらすじ
ヴィアさんが知らない男と抱き合ってた!
「ごめんってば……」
「……」
ヴィアさんが傷の手当をしながらも謝ってくる。
ちょっとタンコブが出来ただけだけどね。このくらいなら所持しているスキルの中に回復を早めるスキルもあるからすぐ治るんだけど……。
あれですよ、妖精ってみんなスレンダーな体型で身体のラインがわかる服を着てるんですよ。
で、今は頭を治療するためにふわふわ浮きながら近くにいるから目の前に胸があるんですよ。
……いや俺だって男だし。冒険者やってた頃は歓楽街で遊んだこともあるし。
このくらいいいですよね!!
「……なにか邪なこと考えてない?」
「そんなことないよ」
本当である。男として純粋な反応なので邪ではない!
そんなことよりさっきからヴィアさんの視線が男の方にチラチラと向いていることのほうが問題では?
そう思うので説明をください。説明プリーズ。
さっきの、しっかり見てたからね? そう、抱きついてたんじゃない。抱きしめ合っていた。
胸のあたりがムカムカしてひどく不快な感じがする……。
一人の男としてのヴィアさんが幸せになるなら笑顔で送り出す覚悟はあるよ? でもまずは事実確認だ。変な男だったら衛兵さんのお世話になってでも排除する覚悟もある!
「ヨツバ、彼は?」
ヨツバ。
ヨツヴィアさんに昔聞いた話だが『ヴィア』という愛称の他に親しい者が呼ぶ愛称があるらしい。それが『ヨツバ』。それこそ家族や婚姻の相手くらいにしか許されない呼び方。それを
ぐぬぬぬぬぬ〜〜!!!
「気になってるみたいだから先に紹介しちゃうけど、この人が私の父さまよ」
「ヴィアさんのお父さんでしたか!」
いやーもちろん信じてましたとも。本当、本当。私嘘つかないでござる。
「彼は……仕事のお得意さんかしら?」
「本当か? その割には親しい気もするが」
「ほ、本当よ? エリクサーとか買ってくれる上客よ!」
個人的にはもっと親しくなりたいとおもってます。
ん? というかヴィアさんの年齢考えると人間が父親っておかしくない?
「あの……ちょっと質問いいですか?」
「なんだ?」
「ヴィアさんって確か200……じゃなかった。190歳くらいって聞いてますけど」
「ん? いや、ヨツバは200――痛いっ!?」
お義父さんのスネにヴィアさんのキックが炸裂した気がするが視界のスミだったのでよく見えなかったことにする。
「う、うむ。それを説明するにもまずは自己紹介からだな」
ふぅ、と一息つく。
「俺は人種、妖精族の中のヴィアの氏族族長補佐『チトセ』だ。こう見えて200歳は超えてて……まあそれから歳は数えていないんだが。とにかく! 別に敬語とかはいいからな?」
黒髪黒目の、俺よりちょっと老けたくらいの青年はそう言うのだった。
……
…………
………………
「……ってなことがあってな」
「それはなかなか壮絶な……」
普段、ヴィアさんが患者の容態を聞くための場所に座って話を聞く。
彼の話をまとめると妖精族に伝わるとある秘術があって、妖精王と精霊様にその秘術をかけてもらうことで番になった妖精と寿命を共有することが出来るらしい。
だがそれは一方的なもので、この場合妖精族が死ねば人間のほうもそれに引っ張られて死ぬが人間のほうが死んでも妖精のほうは特になにもデメリットはないらしい。
だがそれ以上に、この秘術そのものが歴史上数えるほどしか行われていないこと。そして人として生きていこうとすると親しい人が先に逝くこと。
彼もヴィアさんの母親と出会った頃は他の種族の嫁がいたらしいが今ではそのほとんどが亡くなっていると言っていた。
「だから……もしヨツバのことを思っているならその覚悟は必要になるぞ」
「ちょっと? なんの話してるの??」
「はい、わかりましたお義父さん」
「ねぇ、ねぇってば。そんな関係じゃないから!」
「まあ……きみは既に解決済みみたいだが」
「聞いて! 私の話聞いて!?」
む? 鑑定されたか?? そんな感じはしなかったけど……。なにか察したのかな?
「ヨツバの母親はハーレム嫌いな上に男なんて興味ない! 薬師の仕事一筋! ってヤツでな……だからヨツバも男に興味はないとおもってたんだが」
こちらを見てくる視線は見た目は若くても父親のそれで――。
「ヨツバの奴は素直じゃないがこれからも仲良くしてやってくれるか?」
「ええ、もちろん。彼女は信頼にたる人物ですから」
「うぅ……誰も聞いてくれない」
さてと、と彼は椅子から立ち上がって外に繋る扉に向かう。
「今日はヨツバの楽しそうな様子も見れたしそろそろ帰るよ」
「……」
「あの、ヴィアさんテーブルに突っ伏してるんですが」
「そうそう、そんなステータスだと武器にも困るだろ」
あ、この状態のヴィアさんスルーするんですね。つーかマジでステータス見られてたのか。普通は【鑑定】されるとわかるはずなんだけどなぁ……それにレベル差があると自然と弾くはず。
つまりヴィアさんのお父さんは妖精王や精霊様? に認められるくらい凄くてエリクサーの入手経路を持ってて俺と同格かもっと強い可能性が?? なにそれ怖い。
「ほれ、コレやるよ。あとエリクサーはヨツバに渡しといてくれ」
アイテムボックスから出した剣とエリクサーと思わしき色のポーションを放ってくる。っていうか剣が抜身じゃん!? 投げないで!?
「鞘はないから適当に作っとくんだぞー」
キャッチするためにお義父さんから視線をきり、次のセリフでもう一度視線を戻すとすでにいなくなっていた。
魔力の痕跡から【転移】だろうか? ……ちょっとカッコつけて退場したな??
「……ヴィアさん。ヴィアさーん。お義父さん帰りましたよ〜」
「……なんかニュアンスおかしくない?」
声は帰ってくるけど未だにテーブルに突っ伏したまま、おそらくスネているであろう妖精族の少女の扱いに頭を抱えるのであった。
あっ、というかここに来た目的ってポーションの補充じゃん!
すっかり忘れてた……。
妖精族の服はタイトワンピースみたいな感じで羽根部分が隠れないように背中が開いてる感じ。




