帰省:お嬢様の弟妹(ていまい)
マリー・サヴァテリア
お嬢様の妹。薄い金髪に濃いオレンジの瞳。命名は出産時の功績として主人公がつけることになった。由来はマリーゴールドのような瞳がキレイだとおもったから。
愛称はマリー。もしくはマリ。
ラルス・サヴァテリア
お嬢様の弟。マリーとは双子だが産まれた順で弟になる。待望の男児。薄めの赤髪にエメラルドグリーンの瞳。虫の観察&読書が好き。設定段階だが魔法・武術の才能がないかわりにテイマーの素質がある。
愛称はラル。
転移してきて【クリーン】で服のホコリと靴の汚れを綺麗にしていると子供の声が聞こえてきた。ふむ、屋敷に執事はたくさんいますしきっと私のことではないですね。さてと、扉を開けて……左右をコッソリ確認。よし誰もいませんね。
「執事?」
「いえ、なんでもないですよ。お嬢様」
まずはお嬢様の部屋に皆さんを案内して……いえ、先に客間でお茶でも出しますか。
「では、案内するのでついて来てくd――「「しつじーー!!!!」」――げふぅ!?」
廊下を曲がったところで身体に衝撃が響く。一応【気配感知】というスキルがあるので来てるのはわかってましたが……全速力で飛び込んできましたね!?
いま飛び込んできたのはお嬢様の妹と弟になる双子のご子息です。年齢は3歳と半年くらいでしたか。
二人とも身長が……その、頭の位置が股間のところになるのでダメージが大きいんですよ。魔力で強化して身体を頑丈にも出来ますがそれだとお二人がダメージを受ける可能性がありますからね……。
いや、本当に子供の股間ダイブは男もですが女性も結構ダメージがありますから誰かいい解決方法考えてください。前世でも結局解決方法は見つからなかったですし。
「しつじ! しつじ!! ごほんよんで!!」
「しつじ! しつじ!! あのね! みせたいものがね!!」
「お二人とも、今はお客様の前ですからね? あとでいいですか?」
「「やだー」」
やだーって。……あっ、メイド長。
「マリー様? ラルス様? お客様の前ですよ?」
「「あっ」」
メイド長の後ろに『ゴゴゴゴ』と擬音が見えますね。クワバラクワバラ……よし逃げましょう。ほら、お客様を案内しないといけないですしね? お嬢様、皆さん、行きますよー。
……
…………
■夕方
「ふぅ……」
お嬢様たちがお風呂から上がった後にゆっくりとお湯に浸かる。実はお館様に報告がてらちょくちょく屋敷には帰っていたのでお湯を沸かす魔道具の魔石に魔力を注ぐ仕事もしていたりする。
いや、俺がこっちにいたときは魔法でお湯を作ってたから毎日お風呂に入れたけどさ。だからって魔道具まで仕入れて設置してあるとは思わないじゃん? 最初に定期報告しに来たときは驚いたよ……。人間、一度生活基準が上がると戻せないっていうのは本当なんだなぁって……。
「あー、いい湯だぁ」
そういえばメイド長にはお嬢様の性教育のことお願いしないとなぁ。生理とか男が教えるのは辛いものがある。
「はぁ……」
あー、久々に一人でゆっくりお風呂だ〜〜〜! 学園でも一人で入るけどやっぱり自宅の安心感というかこの後はもう寝るだけと言う安心感! お嬢様が入った後だからもう入ってくるひともいないし。ちょっとくらい長湯してもいいかなぁ。
「しつじー、まだー? ごほんよんでー!」
「……」
ブクブクとお風呂に沈もう……これでなにも聞こえない……聞こえないんだ…………はぁ、あがるかぁ。
脱衣所で待機していたマリー様を追いだしてからもう一度執事服に着替えたら二人の部屋に向かう。お嬢様に関しては皆さんと一緒にパジャマパーティだそうです。いやいつも一緒ですよね? 屋敷だとメイドさんもいるし男の私がいるよりもいいでしょう。誘われましたけどね、こんなこともあろうかと王都でお高めのクッキーを買っておいてよかったです。上げたらさっさと部屋に向かいましたよ。
マリー様とラルス様は一緒の部屋で暮らしているそうです。私がお嬢様の執事として学園に行くようになる前は両親と一緒に寝てたんですけどねー。そういえばさっきもお風呂には突撃してきませんでしたね。成長を感じます。
「フェンリル、フェニックスをテイムし、猿型ギガントゴーレム(3m)を開発したタロー・モモはその旅の終わりにキングゴブリンとオークチャンピオンのいる山を目指しました」
「「おおー!」」
「ごほん」って絵本のことでしたか。というか仲間メンバーがエグい。なんで伝説に出てくるような生き物をテイムしてるんですか……いやでもこれ桃太郎ですよね? 内容はともかくこの世界でもこういう本あるんですね〜。他の本も軽く見てみましたが異世界だと鶴の鳥獣人がいたりツノのあるオーガ種(友好種族)もいるせいか結構改変されたりしてますね。
「そしてキングゴブリンとオークチャンピオンを倒し討伐部位を剥ぎ取ったタロー・モモは財宝を根こそぎ回収し、住処を再利用出来ないように焼き払いました。めでたしめでたし」
「「わーー!」」
ぱちぱちと手を叩く音を聞きながら本を閉じる。…………めでたしめでたしかコレ?
ま、まあこっち基準では普通なんでしょう。きっと。
「さて、そろそろ寝ましょうか?」
「しつじー! これみて!!」
「はいはい、なんでしょうか……なんですこれ?」
寝る準備をしようとしたら木で出来た化粧箱? いや小物入れですかね? それを出してきましたね。開ければいいんでしょうか?
「ん? これは……」
「この前見つけたのー!」
100円玉くらいの大きな蟻が入っていました。お腹の大きさからみておそらく女王蟻でしょう。
んー、なんとなくクロオオアリっぽいですね。クロヤマアリよりも黒っぽいですけど……蟻の同定なんか出来ないですよ? インターネットがあれば……いやそもそも異世界の蟻が地球と同じとは限りませんけどね。
魔物辞典とかはあるのにこういう昆虫辞典みたいなのはこっちの世界にないんですよ。まあ魔物の脅威のある世界ですし仕方がないのでしょうが。
「しつじ、なんとかなる?」
「ふふ、まかけてください」
なにを隠そう。そう、実は蟻の飼育経験があるんですよ! 離婚した妻にも娘にも孫にも理解されませんでしたけどね……おや、涙が。
「そうですね。まずは湿度を……いえ、育てるのは春からにしましょうか」
「えー」
「もうすぐ冬ですからね。虫も冬眠するんですよ」
「なんとかならないの?」
「しましょう。なんとかしますとも」
男の子とはいえ上目使いはずるいわぁ。
「卵は……ありますね。ならこのまま箱の中でしばらく様子を見ましょう」
部屋の中に置いてあって暖かかったせいか冬越し用の食べるための卵かはわかりませんがいくつか卵がありますね。これ、このまま部屋に置いておけば冬眠しないのでは?
ちょっと魔法で箱の中の温度を下げて蟻の動きを鈍くする。その間に箱の横に10mmほどの穴を空けておいてっと。
次にポーションを小分けにするときに使う試験管を土魔法の応用で細く加工して、中に水を3分の1ほど入れてからワタで蓋をするようにグイグイと詰めていく。
これで蟻が水分補給できる上に湿度が必要な種類だった場合は試験管の中で過ごすようになるはずだ。これを木箱の中で転がらないように固定しておく。
次はアイテムボックスに放置してあったポーション瓶を加工していこう。冒険者してたころのやつですね……捨てるの面倒だったんですよ。
これを10mm幅の細いガラス管に加工して割れないように魔法で強化して……ああ、シリコンチューブが欲しい。
これを木箱に開けた穴に繋いで……この先に餌場兼手作りの巣を作る。
試験管の中に赤土を魔法で固めたモノをつけていく。石膏か……せめて硫酸カルシウムがあれば……錬金術の世界になりますね。今度ヨツバさんに聞いてみましょう。
他にも同じようにワタで水の補給が出来るようにしたもの。空っぽの状態の試験管。試しに水苔を入れたモノなど6つを用意して組み合わせていく。
中に階段を作って……餌場もガラスを加工して作って……最後にガラス製なので面取りしてフチで指を切らないようにする。これをさっきのガラス管で木箱に繋げて……。
おっと、木箱とガラス巣の裏側のほうに保温の魔法陣を刻んでおきますか。ちょっと温めるだけなら周囲にある魔素で補えるくらいの感じで……。
「これでいいですね」
「おおー」
「ガラスなので割れないように気をつけてくださいね」
「はーい」
いい返事です。ふむ、女の子のマリー様は虫に抵抗がないんでしょうか? 興味なさそうに……あ、ウトウトしてるだけみたいですね
「これで働き蟻……えーっと子供が生まれるまでは暗い場所に置いておけば大丈夫です。生まれたら一緒に餌のことも考えましょう」
「しつじ、ありがと!」
問題はクロナガアリのような種を食べる種類だった場合ですね……。
さて、これで本当にやることが終わりましたね。今日は日が暮れてからお館様に聞きたいことがあったので時間を開けてもらっているのですが……まあ大丈夫でしょう。
「……ん? そういえば蟻を飼うことはお館様には話したんですか?」
「あっ……」
……え?




