ダンジョン演習-買いだし
執事さん、ちょっと怒ってます。
お嬢様とOHANASHIした週末、みんなで買い出しに来ていた。
「まったく執事はさぁ〜、週明けなんだから普通に間に合うってば」
「そうでしょうか?」
その考えは甘いとおもうんですがねぇ。実際もう明日ですよ? なんて考えている間に武器屋に到着。
「え? 防具ないの!?」
「ああ、もうすぐ新年生のダンジョン探索の時期だろ? もっと早く来ないと売り切れてるぜ?」
「そんな……」
まあそんなことだろうとはおもってましたよ。
「武器なら余ってるがたけぇやつか質が悪いやつだけだぞ?」
「うぅ〜〜」
涙目でこっちを見ないでください。自業自得です。
……はぁ。
「仕方ないですね……武器と防具はなんとかしますから、他の物を買いに行きましょう」
「他の物って?」
「おいこら」
一瞬、素の声が出たじゃないですか。着替え、テント、食料品、ポーションなどの物資。他にもあれやこれやうんぬんかんぬん。
「……あぅ」
あ、お嬢様の頭から煙が……
「執事! なんとかして!!」
「まあ、こんなこともあろうかと一通り用意してありますけど」
売り切れてるのは王都周辺だけですからね。お嬢様が授業を受けている間に他の街まで転移を使って買ってきましたよ。
「もっと早く言ってよ!」
「なに言ってるんですか。こういうのは失敗したほうがしっかり覚えられるものです。私がいる時はキチンとフォローしますから安心して失敗してください」
「うぅ〜〜」
っと、視界に黒髪の少女の姿が入る。
「あの! 食料はこういう感じでいいでしょうか?」
「うん……素晴らしいですね。このままで大丈夫ですよ」
「えへへ」
どうやら武器屋の中でモメている間に買ってきてくれたらしい。頭を優しくナデナデ……カンナさんはホント素直でいい子ですね。
「あとは……スコップもあるといいですね」
「スコップ?」
「はい、武器にもなりますし便利ですよ?」
叩く、突く、掘る。いざとなればフライパン変わりにもなるっちゃなる。いろいろと万能な道具だ。一説には使いこなせばビームを出せるとも聞くけど……さすがに眉唾ものだ。
「それとマントですね」
「まだあるの?」
「マントがあると地面からの熱がとられにくいので少しだけ横になるのが楽なんですよ。フード付きだと首のあたりも寒くないですし」
「あ、それなら当日に配るそうですよ? 学年ごとに指定された色であわせるためらしいです」
「……そうなんですか?」
「はい、あれ? ミリーちゃんも聞いてたから執事さんに言ってるものだと」
チラッとお嬢様を見ると他の二人(ルルさん、ハイネさん)の背後に隠れるところだった。もう一回OHANASHIが必要でしょうか?
「そして、一番大事なのが収納袋……」
「あっ! 1班1つまでらしいよ?」
「そういうことは早く言いなさい」
収納袋はアイテムボックスの下位互換アイテムだ。内部時間は経過するが一定の量まで重さも大きさも無視して入れることが出来る。まあ確かに無制限に持ち込んだらなんでも持ってこれますからねぇ。
まあそれはそれとして、だ。ドヤ顔で言ったお嬢様に詰め寄ろうとするがまた二人の背中に隠れられる。
「ちょっと失礼しますね」
「あ゛あ゛あ゛〜〜〜」
防御壁になっている二人の間に手を入れてむんずっとお嬢様の顔をアイアンクローして引っ張り出す。なんか叫んでいるが無視だ無視。
「お嬢様。報告、連絡、相談です。はい復唱」
「ほうこく、れんらく、そうだん……」
「略してホウ・レン・ソウ。です。大人になってからも大切なことですからね、しっかり覚えてください」
「ふぁい……」
反省したみたいなので手を緩めてあげる。涙目になっていたのでナデナデ。
「他には言い忘れとかはないですね?」
「うん…… 」
「ならいいです…………いま多分って言いましたか?」
「言ってないよ!!」
その日の夕方。
「執事ー! 手伝ってよー!!」
「ダメです。練習も兼ねてるんですから」
ちょっと反省のために寮の裏庭を借りて子供メンバーだけでテントの組み立てをさせている。もたもたした手付きでテントを組み立てているのはなんとも微笑ましい……。こうやってみると意外と役割がハッキリしてますね。お嬢様が動いてそれをハイネさんがコントロールしてカンナさんがサポート。ルルさんは……なんでしょう。青い髪を揺らしながらモクモクと作業してますね。普段からあまりしゃべる方じゃない印象でしたが単純作業のときの集中力がすごい。
「出来たー!」
「出来ましたね」
「出来たね」
「うん」
「いっちばーん! 今日はここで寝るー♪」
「「「あっ」」」
突撃していくお嬢様。ふむ、遠目から見ても見た目は大丈夫そうですね。なんだかちょっと杭の打ち込みが甘い気もしますが。
「ぬぎゃああああ!?」
「「「ミリーちゃん!?!?」」」
あっ、テントが崩壊しましたね。……はぁ、助けに行きますか。




