夜は一緒に
夜、メガネを外し寝る準備をしているとお嬢様が部屋にやってきた。ノックをして静かに開けるのは初対面の時と比べて成長を感じさせる。
「お兄ちゃんと一緒に寝ていい?」
「今日だけですよ?」
何度目かの「今日だけですよ」。もはや合言葉だ。
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「今日は怖かったか?」
「うん、すごく怖かった」
少し話す。最後に茶化したがやはり心の傷は大きいのかもしれない。
「お兄ちゃんが初めて戦った時ってどうだったの?」
「うーん、言うのは恥ずかしいんだけどなぁ」
うん、あれは黒歴史だ。
「え~、おしえてよ」
「そうだな。そこまでいうなら」
さて、どう話そうか?
「冒険者登録をして2週間くらいたったころでしょうか?薬草採取に行ったのですがいつもより奥に入ってしまいまして…運悪く角狼が現れたんですよ。
当時は知らなかったんですがハグレと言ってどんな魔物にも単独行動する個体が稀にいるらしんです」
「それでどうなったの?」
「怖くて腰を抜かしてしまいましたよ。立てなくなったところに跳びかかってきまして…おもわず【火球】をめちゃくちゃに撃って山火事を起こすところでした」
「なにやってるの!?」
「しかも全て避けられてしまって…あ、幸い油分の少ない木だったのか奥まった場所で湿気が多かったせいか山火事にはなりませんでしたね。
まあそのときの魔法のおかげで通りかかった冒険者が気づいて助けてくれたわけです」
「へー」
「ちなみにその助けてくれた人が元パーティメンバーのリーダーのドラルです。
それがきっかけでパーティに入れてもらえていろんな経験をして今はお嬢様に仕える執事をしています」
じっとお嬢様の眼を見る。しばし見つめ合うが会話が止まってしまった。
「……お漏らしはしませんでしたよ?」
マクラで殴られた。それ、俺の枕です。
自然と二人で笑いあった後、いつのまにかお嬢様は寝てしまっていた。やはり今回は精神的にも疲れてたんだろうな…おやすみなさい。
3話の冒頭で少し触れていたまだ異世界に来て間もないころのお話




