1/3
プロローグ 『僕らは【見て】いた』
――やめろ……!僕を【見る】な……!
僕は得体の知れない視線に犯され叫んでいた。
【見え】ない何かに訴えつつ、必死に赦しを乞う。
――やめてくれ!なんなんだよ一体!
何もない暗闇の空間。僕は目を閉じていた。
目を開けていても閉じていても、視線は僕を犯してくるからだ。
――もう……赦してくれ…………っ!
一縷の望みを口にした瞬間、途端に視線が僕を犯すのを止めた。
すると誰かが僕の元へヒタヒタとゆっくり歩いてきた。
周りが暗闇だろうと分かる。分かってしまう。
それはまるで音楽をヘッドフォンで聴くように、耳の鼓膜を直接刺激してくる。
その足はちょうど、僕の目の前で止まった……はずだ。
だが僕の視線にその誰かはいない。
目からの情報を得るのは諦め、
耳に意識を向けると小さな息遣いが聞こえてくる。
どうやら目の前にいるのは女性らしい。
どんな女性なのかと頭の中で想像していると、女性は深く息を吸い、
そして、声を発した。
「――あなたを……赦さない……」
瞬間、僕の意識は途切れてしまい、その場で倒れる。
そんな様子を『俺』は【見て】いた。
次からがらっと変わります。