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Part83 目と目が合う戦場で

五、六章までのプロットは既に考えてます。

両方ともかなり前から考えてたネタなので、四章に比べると更新ペースは速くなるかも……善処します。



「回避を!!」



 八百万の声とほぼ同じタイミングで、ネクロヴァージが無差別に腕を放出する。

 全体攻撃かつ威力も手数も通常の攻撃より上がっているのにタメはごく僅かという、かなり理不尽な技だ。

 これがあるせいでGOODが固定砲台を維持できず総ダメージが減ってしまっている。


 正直、キツい。

 俺は既に二度蘇生薬のお世話になってしまった。



 アンカーの時は死んでも何度でも挑戦できたし、その分何度も死ぬことが前提に作られていたように思える。

 単純な強さなら今のところネクロヴァージよりヴァイスの方が強く感じるのだが、死んだらどうなるかわからないこの戦闘においては死なないことが前提となるため、精神的な辛さはこちらの方が上だ。

 それに蘇生薬にも所持上限があり、使用時にかなり硬直が入ることもあっていつでも使えるというものでもない。

 使いどころを間違えると使用者が死んでしまうことさえありうるのだ。



「《射貫く霹靂(スリサズ)》!」



 少し高い位置から投擲した槍が、ネクロヴァージの胴を貫く。

 やはり狙いをつけるのが難しい。狙いは心臓部の目玉だったのだが、実際に貫いたのは鳩尾辺り。

 開いた穴もすぐに塞がり始め、何事もなかったかのようにネクロヴァージは攻撃を再開した。



「持って来たぞ!」


「ありがとう、キルカ!」



 礼を言って、キルカが持って来た槍を受け取る。

 スリサズは強力だが投げた後丸腰になるのが難点なので、投げる位置の近くにあらかじめキルカを向かわせておくことで素手の状態を少しでも減らそうという作戦だ。


 槍はハンマーや剣と違って多腕機神の刃影(ヘカトンケイル)のものをそのまま使っている状態であり、火力としてはハンマーに劣ってしまうとは思うのだが、ソウェイルの連撃バフをある程度蓄積させてからスリサズを撃つことによって割とどうにかなっている。


 このアルカナシナリオが始まって有耶無耶になってしまった訳だけど、まだ集めようとした武器の半分も集まってないんだよな。

 槍と刀と爪と楽器。

 楽器は作ってもらっているところだし、爪も素材は手に入れているが、槍と刀に関してはまだ何も決まっていない。強いのがあればいいんだけどな。



「よし、次だ——《射貫く霹靂(スリサズ)》!!」



 バフを蓄積させたうえで放った攻撃だが、力んでしまったのか先程よりも狙いが外れてしまう。

 槍の軌道は思ったよりも低く、狙いの心臓部の目玉には掠りもせず……右膝の眼に直撃した。


 開いた穴はすぐに修復され、複数の腕が身体を支えるように動いたためにネクロヴァージの体勢が大きく崩れることはなかったが、修復された箇所には先ほどまであった目玉は存在していない。

 このように、目玉は一度破壊すると出てこないのである。

 第三形態の突破条件は目玉を全部壊すことと見て間違いないだろう。

 


「残りは頭と心臓と……今ウルフさんが落とした腕も眼有りだったか」



 つまり、残りは二箇所。

 頭と心臓部の目玉は他の部位に比べて見てわかるほどに大きいのだが、本体もそこが弱点であると理解しているようで、攻撃が当たる寸前に若干の回避行動をとるため未だに致命傷を与えられていない。


 一応新しくとった槍スキルは二つあるのだが、そのどちらもこの状況を打開し得るものではない。

 武器種を変えることも視野に入れつつ、俺は再度槍を投擲するが、今回も心臓部の目玉を少し削り取ったのみに終わってしまった。



「上手くいかないな……」



 いっそのことキルカを覚醒させるか?

 いや、この状況で図体をデカくしてもデメリットしかない。

 危険だが、近づくしかないか……。



「キルカは安全なところで待機しててくれ」


「わかったぞ」



 一度呼吸を整えて、俺は暴れ狂う腕の中に飛び込む。

 的確に俺を捉える攻撃と、無差別的な攻撃。

 さながら弾幕STGのような戦場を駆け、俺は一息にネクロヴァージの元へと肉薄する。


 ——なんだ、意外と行けるじゃん。


 スリサズという強力な遠距離攻撃手段を持っていたせいでつい安全圏からの攻撃を狙いすぎていたようだ。

 まあそれも戦い方としては間違いでは無かったと思うけど。


 本体が持つ一回り大きい腕の攻撃を高く跳んで避け、槍を頭部の眼に勢いよく突き立てる。

 槍から伝わる感触に手応えを覚えつつ、俺は槍を横に薙いで頭部を破壊した。


 これで残すは心臓部の目玉のみ。

 そう確信し距離を取ってから振り向いた俺は、想定外の現象を目撃する。


 破壊箇所の再生と同時に、頭部の目玉が再生していたのだ。



「何で再生するんだ!?」



 今まで、どの目玉も一度破壊すれば本体の再生とともに復活することはなかった。

 それが全体に適応されるルールだと思っていたのだが……頭部は違うらしい。



「どういうことなのかしら……」


「そうですね……考えられるのは二つ。特定の回数破壊する必要があるか、或いは頭部と心臓部の両方を同時に破壊する必要があるかでしょうね」


「なるほど。まあ両方試してみるしか無いな!」



 笑顔でそういうGOODだったが、ぶっちゃけ第三形態では相性が悪すぎて全く活躍していない。

 同様に幻水もデバフがまともに通らないせいで完全に失業していた。


 それに、同時破壊を目標とするなら破壊のタイミングに融通が利く近接職の出番だろう。



「一先ずは同時撃破の方向で動こう。回数撃破の方は何回破壊すればいいかわからないし」


「そうね。タイミングに関しては、攻撃のチャンスがあったらその瞬間に破壊するのではなくて、もう一方の方への攻撃を見てから破壊する……という風にするしかないかしら」



 まあ、それが現実的なところだろう。

 なんだかんだ言って、俺はともかく他のメンバーはみんなガチ勢——もとい廃人だ。

 こんな作戦と呼べないような作戦でも、個々人の技量によってどうにか成し遂げてしまいそうに思える。



「よくわかんないけど、同時に壊せばいいんだよね!」



 ……やっぱ不安だ。

 それでもやるしかないのだけど。



 それぞれがネクロヴァージの間合いに飛び込んで数十秒後、最初にチャンスを掴んだのは御兎姫だった。



「……捉えた!」



 一呼吸おいて、御兎姫のナイフが頭部の目玉を破壊する。

 それに合わせてウルフさんが心臓部に殴りかかったが、しかしその攻撃はすんでのところで躱されてしまった。

 すぐに頭部は目玉ごと再生する。



「ごめーん!!」


「……問題ない。次、行こう」


「まだチャンスはあるからな」



 最初のチャンスは失敗に終わってしまったが、流石に最初から上手く行くとは思っていない。

 それに、確かな収穫もあった。


 御兎姫が頭部を破壊した瞬間、全ての腕は心臓部を守るように動いていたのだ。

 仮に回数破壊が条件だった場合、頭部の目玉が再生することは分かっているはずなのだから、心臓を守るのはともかく頭部を破壊した御兎姫に対し追撃を加える腕がいくつかあってもおかしくない。

 それなのに、全ての腕が心臓を守るために動いた。

 これはもう、条件は同時破壊で確定だろう。


 そう分かれば気が楽だ。

 全員に俺の考えを伝え、それぞれが同時破壊の為に動いて行く。


 二度目のチャンスは一度目と同様に片方しか破壊できず、三度目は両方とも破壊したものの時間が経ってしまっていた為に同時破壊にはならなかった。

 その後も四度目、五度目、六度目と失敗し、七度目のチャンスがやってくる。



「……《鎖斬華(サザンカ)》」



 御兎姫がスキルで強引にこじ開けた道にウルフさんが突っ込んで行くのを見て、俺は高く跳躍する。


 次の瞬間にはウルフさんの腕が胴を突き破り、心臓部の目玉を握った。

 後はウルフさんが目玉を握り潰すのと同時に俺が頭部を破壊すれば良いだけだ。


 高度を上げる為、俺は《スカイグライド》を使用してネクロヴァージの真上に昇る。

 ネクロヴァージがその動きを目で追いかけた為、俺と頭部の目玉の視線は一直線に交わった。



「よし、もう何度目かはわからねえけど……行くぜ、《射貫く霹靂(スリサズ)》!!」



 天から地へ迸る雷のように、俺の腕から槍は放たれ——しかし複数の腕が頭部を防御壁のように守った為に、槍は頭部に達することはなかった。


 スキルの効果が切れ、俺の身体は重力に引かれて落下し始める。

 もう俺の方から追撃を入れることは不可能だが……当然、これで諦めたわけではない。



「ミーティア、頼む!!」



 その言葉だけで、彼女は俺の言わんとしていることを理解してくれた。



「ええ、任せて頂戴!」



 瞬時に彼女は俺よりも高く飛び、脚を高く振り上げた。



「行くわよ——《凶星落》!!」



 爆発的な力で放たれた踵落としが槍の底に強烈な一撃を叩き込み、槍はさながらパイルバンカーのように射出される。

 槍は数十層の腕の防壁をいとも容易く打ち破り——ウルフさんが心臓部を破壊したのと同時に、槍は頭部を刺し貫いたのだった。

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