Part82 結構眼だらけ
なんかなろうの仕様変わってませんか?
あまり把握できてないんですけど、せっかくですし評価付けてくれると喜びます。
人型の異形と化したネクロヴァージ第三形態は、全身に生やした腕を一度折りたたむと、次の瞬間力を解放するかのように一斉に伸ばした。
「速っ!?」
迫る複数の腕を槍でなぎ払いつつ回避するが、どうにも間に合わない。
避けきれなかった二発は完全に直撃したわけではないものの、俺の体力を合計で半分持っていった。
直前にソウェイルを発動してたため、地味になぎ払いでバフが蓄積している。
攻撃できる箇所の多い敵に対してはソウェイルのバフが蓄積しやすいというメリットもあるが……だからと言って攻撃に繋げられなければ意味はない。
今回の場合は特にそうだ。腕を攻撃したところであまり効果的では無いように見えるし、やはり狙うべきは本体だろう。
しかし大量の腕が邪魔をしていて近づくのが精一杯だ。
「上手く入れる隙を探さないとな……」
腕の攻撃を処理しつつどうにか入れそうなポイントを探していると、荒れ狂う暴風のようなネクロヴァージの攻撃の中に御兎姫とミーティアが飛び込んでいった。
御兎姫は空中で身体を捻り、小規模な範囲攻撃を使って周囲の腕を殲滅していく。
しかし、いくら腕を斬ってもキリがない。また新たに伸びてきた腕に追いやられ、御兎姫は一度距離を取ることを余儀なくされた。
「……やっぱりキツい」
「だよなあ」
腕の攻撃はそれぞれあまり大きいダメージを与えてくるものではないのだが、俺や御兎姫のように防御力を捨てているタイプのアタッカーにとってはかなりキツい。
一方、ミーティアはかなり攻撃を食らっているものの、HPはあまり減っていなかった。
……いや、確実にHPは減っている。しかし、その度に回復しているようだ。
さすがに回復アイテムを使う余裕は無いと思うのだが……。
そう考えながらミーティアをよく見ると、何故彼女が回復しているのかがよくわかった。
「ミーティア、腕食ってない?」
「……ミーティアの職業『サヴェージ』は、近接格闘系上級職と料理人系格闘分岐職『食戦士』の複合職……敵を食べて回復したり、バフ付けたりする」
「……なんかショッキングな映像だな」
金髪碧眼の美女が異形の腕を貪りながら戦っている様は、なんかその手のマニアには高値で売れそうでもあった。
俺にはちょっと理解できないけど。
と、若干引いているのもつかの間、腕の一本が忍び寄るようにゆっくりとミーティアへ迫っているのを見つけた。
ご丁寧に眼まで付いている。どう考えても何か特殊な攻撃をしてくるに違いなかった。
「《射貫く霹靂》!!」
ミーティアに当たらないように、そして槍がフィールドから飛んでいかないように、《スカイグライド》を使って角度を調整し、俺は勢いよく槍を投げる。
槍は雷とソウェイルの炎を纏って突き進み、腕を貫いて地面に縫い止めた。
「!! 助かったわ!」
「眼が付いてる腕に気をつけて!」
眼が付いているのは今の一本だけではない。
パッと見ただけだが、他にもいくつかある。
俺は腕の攻撃をくぐり抜けて地面に突き刺さった槍を引き抜き、眼有りの腕と向かい合う。
先ほどは未然に防いだため、どんな攻撃をしてくるのかはわからない。
とにかく動きを見逃さないようにしなければ。
そう思い、じっと相手を見つめていると……なんだか、身体が…………
「——っ! 眼を合わすな!」
GOODの声で、俺はすんでのところで体の自由を取り戻した。
横から薙ぎ払うような攻撃を槍で受け、逃げるように間合いから抜け出す。
眼を合わした相手にバフを与えるタイプの攻撃か……眼は特殊行動をする敵を示すアイコンのようなもので特にそれ自体に効果があるようなものではないと思っていたのだが、そんなことはなかったらしい。
眼といえば、この形態になってからネクロヴァージの本体らしき眼は瞼を閉じた状態のままでいる。
試したわけではないが、流石に攻撃は通らないだろう。
第一形態も第二形態も眼は弱点と設定されているように感じた。
ついでに、第三形態に至るまで『腕』の攻撃は形を変えながら常に続いていたが、どの状態でも腕に攻撃することで本体が怯むような素振りは全く見せていない。
つまり、この第三形態においても攻撃するべきは眼になるはずだ。
先ほど槍で受けた時に貫通してきたダメージを回復薬で回復し、再度近づいて攻撃を躱しながら、改めてネクロヴァージ第三形態を観察する。
体長は三、四メートル程で、形としては人型に分類されるが、あらゆる箇所から人間のものと同じくらいの腕が生えている。
その殆どは暴れまわるように絶えず攻撃を続けているが、その中に数本、妙な行動をする腕がいた。
普通の腕と特殊行動する腕の違いは、恐らくは眼の有無。
これまでの形態から考えるに、攻撃するのならその眼有りの腕にするべきだろう。
また、眼は身体の方にも存在する。
巨大な目玉が頭部に一つ、心臓部に一つ。
それより若干小さいサイズの目玉が左肩、右肘、背中の中心、左手の甲、両膝の計六カ所に一つずつあるようだ。
腕の方はそれより更に一回り小さい。動き回っているため正確な数はわからないが、おそらく六、七本か。
十中八九、眼を全部潰すというのがこの形態の突破条件だ。
そうでなかったとしても、これ以外に思いつかないのでその方向性で行くしかない。
実際、他のプレイヤーもそれぞれ眼を倒す方向にシフトしている。
「よし、俺達も行くか」
「了解だぞ!」
……と、ここで俺は自分の右手に刻まれた傷痕が赤く発光していることに気づいた。
過去にペイルライダー戦で使ったキルカの覚醒スキルがチャージされたことを示す表示だ。
どうしようこれ。光ってたら怪しまれないか?
というかそもそも使うべきなのだろうか。
別クランの人間がいる以上、できれば隠しておきたくはあるのだが……出し渋って負けたらそれこそやり切れない。
今出来ることは全てするべきだ。どうせウルフさんは上手く騙せるだろうし、八百万に関しても……まあそれは後で考えれば良いや。
なんにせよ、使うタイミングは今ではないだろう。
必殺技みたいなものだから、ここぞという時に使う必要がある。
その時を待ちつつ、俺は槍を固く握って目前の眼付きの腕に躍り掛かるのだった。




