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Part69 虎狼霧中

短めなので二話更新です



「これがここのオブジェクトか」



 このエリアに並ぶ無数の枯れ木の中で、一際目立つ大きな枯れ木。

 そのうろの中にねじ込まれるようにして、それは存在していた。


 青白く淡く発光する球状の石は、触れることで光を強め、同時に現れたシステムメッセージは塔とオブジェクトの間でパスが繋がったことを伝える。

 これで登録ができたらしい。

 転移先の一覧に載っていないことから、自由に移動できるわけではなくあくまで塔から移動するためのものであることがわかる。まあ用途としてはそれで十分なのだが。



「さて……俺の修行の成果を見せる時が来たな」


「おー! 私も頑張るよー!」



 天高く拳を突き上げるウルフさんに親指を立て、俺たちは深い霧の中へと歩みを進めた。



————



「よしっ、三つ目破壊したよ!」


「ナイス!」



 俺の訓練は功を奏し、二回ほどリスポーンを経たものの、三回目にして三つ目の足を破壊するという快挙を成し遂げた。

 ここに来てようやく安定してきた感じだ。やはり死んで覚えるのが一番だな。


 ——と、ここで急に身体が息苦しさを覚え、頬を汗が伝った。

 スタミナ切れのサインだ。



「ウルフさん!」


「了解だよ!」



 合図を送った後、俺は前方から飛んできた魔法に合わせて身体を捻って方向を転換し、踏み出した左足で地面を強く蹴って白虎に肉薄する。

 それに合わせてウルフさんが退き、白虎の攻撃範囲内には俺一人だけとなる。

 大きく回転する近接範囲攻撃をスライディングで避け、その後隙を利用してスタミナポーションを流し込むと、たちまち息苦しさは消え、また走る為のスタミナが湧いて出てくるのを感じた。

 嚥下速度上昇のパッシブスキルを取ったお陰でこの動作もかなりスムーズに行える。今後も役にたつだろうし、取ったのは正解だったな。



「《軌煽爪風(きせんそうふう)》!」



 嚥下速度上昇スキルと同時に取得した爪スキル《軌煽爪風》は、身体を軸に竜巻のように回転して敵にダメージを与える技だ。ヒット回数が多く、ヘイトを稼ぎやすいことから、俺が爪を使うときの運用に適しているため取得したのである。



「オラオラァ!」



 回転する爪が何度も白虎の身体を斬ってゆく。

 そこまで大きなダメージにはなっていないだろうが、それは俺の仕事ではないしな。


 と、そこで俺は不意に違和感を覚える。

 白虎と目が合った瞬間、えも言われぬ感覚が、泡が浮かび上がるようにふつと生じたのだ。

 戦いに集中しなければと無理やり思考を切り替え、白虎の攻撃を回避し続ける。


 ……いや、やはりおかしい。


 脳裏に浮かんだ違和感は、強くこびりついて離れなかった。


 何がおかしいのか。何をおかしく感じているのか。

 その違和感の正体をようやく言語化することに成功した俺は、白虎の攻撃を避けながらウルフさんに尋ねる。



「なあ、なんか小さくなってないか?」


「え? ……あっ、確かに!!」



 俺の呟きに、ウルフさんが同意する。

 やはり俺がソロで戦った時に生じた違和感は単なる見間違えなどではなかったのだ。


 白虎(ヴァイス)は徐々に小さくなっている。

 それが何故なのかは分からない。

 敢えて推測するとすれば、あの身体は魔力が固まってできたものであるとか、あるいは霧が固まって出来たものであるとか、そんな感じだ。

 魔法攻撃のプロセスを見てみると霧で出来てる説は割と有力に感じるのだが、とにかく今考えるべきは白虎が小さくなることによって俺たちに降りかかるものが何なのかについてだ。


 小さくなれば、当然攻撃範囲は狭まる。

 しかしながら、小さいモンスターの常として、そういったモンスターは大抵すばしっこく、攻撃が当てにくいことが多い。

 わざわざデカい状態から徐々に小さくなっているのだ。そのような性質の変化は組み込まれてると見て間違いないだろう。


 とは言え、白虎は未だ三、四メートルはある。

 白虎の動きは殆ど変わっていないし、やるべきことは変わらない。



 俺がヘイトを受け持って、魔法攻撃を使わせている間にウルフさんに攻撃してもらう。

 そうして四本目の脚を破壊する頃には、白虎は既に高さ二メートル程にまで縮んでいた。



「これで全部!」



 ウルフさんの一撃が、白虎の後ろ足を破壊する。

 霧の噴出は止まった。俺たちの周囲を取り囲む霧も若干薄くなったような気がする。


 ……さあ、後はこれで何が起こるかだ。

 流石にこれで倒せるはずはない。魔法攻撃を使わなくなるのか、第二形態に移行するのか、それとも想像もつかない別の何かへと変化するのか。

 そう考えているのもつかの間、一瞬、白虎の身体が薄く霧のような状態へと変化する。

 そしてそのまま目に見える濃度で分散、凝縮し、それらはすぐに元の形に——



 ——二体になって戻った。



「うっわ」



 思わずそんな声が漏れてしまう。


 二体の白虎の体長はそれぞれおよそ一メートル程。分身前に二メートル程度だったので、これはもう分身というより分裂だ。

 一応、破壊した脚は戻っていない。魔法は封じ込めたと思いたいが……魔法が無くなっても、二体を同時に相手にするのは相当難易度が高い。



「やるしかないか……!」



 飛びかかって来る二頭の白虎を前に、俺は全力で回避の道筋を考え始めたのだった。

いつのまにか二十万字超えてました……

描き始めた頃はまさかここまでモチベが続くとは思ってませんでしたし、未だにリーサルエクリプス戦に入ってないとも思ってませんでした。

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