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Part5 ハードラックとバトる



 どのくらいの時間が経ったのだろうか。

 永遠にも思われたその戦いは、鋭く振り抜かれた角材の一閃により終結した。


 力なく倒れるカースゴブリン。

 その側で俺もゆっくりと腰を下ろす。



「あ゛ー……超疲れた……」



 1時間以上ぶっ通しでオワタ式の戦いを繰り広げたことは、実はこれが初めてではない。

 そういうクソゲーもあるのだ、世の中には。

 それでもやはり長時間の戦闘は頭が疲れる。

 ついでに満腹度もほぼ0だ。心身ともにヤバい。


 さあ、何か良いアイテムでもドロップしてないだろうか。

 そう思ってゆっくりと立ち上がった俺は、まだ消滅していないカースゴブリンと目が合った。

 ゴブリンの口元が、醜く歪む。



「マズっ——!?」



 気づいた時には遅く、ゴブリンの身体は勢いよく爆ぜた。紫色の爆発が巻き起こる。

 敵は消滅して数秒は動く可能性があるから意識しておくべきなのをすっかり忘れてしまっていた。

 暗い視界の中で、そう後悔していると……



[レアモンスター カースゴブリンを撃破しました]

[武器【赤き呪骨の杖】を獲得しました]

[アイテム【蝕媒髏】を獲得しました]

[称号【新参レアハンター】を獲得しました]

[称号【悪運憑き】を獲得しました]



「……あれ?生きてるし」



 何故か生きていた。

 ……何なんだ、今の。

 体力が削れているような感覚はない。防具も……いや、そもそも防具つけてなかった。



 ふと思い当たって、ステータスを開く。


 

——————————————

   [名前] ナツレン

   [職業] 侍

  [所持金] 1091アイン


  [生命力] 40→67

[物理攻撃力] 41→81

[魔法攻撃力] 20→20

[物理防御力] 35→37

[魔法抵抗力] 20→56

 [継戦能力] 30→87

[弱体抵抗力] 20→21

[総合思考力] 33→63

  [運命力] -100


アクティブスキル:《一閃 12%》《鎧貫 0%》

パッシブスキル:《構え 43%》《流風(ながしかぜ) 31%》


ステータス異常【禍患(かかん)

——————————————



 ステータスがものすごい勢いで上がっているのとか、スキルが増えているのとかはとりあえず置いておいて、問題はこのステータス異常だ。



 禍患……(わざわい)を患う?

 よくわからないので説明を開く。



 【禍患】

 バッドステータス。

 不幸を呼び寄せる呪いに罹った状態。



 なるほど。具体的な数値はわからないが、影響下にあるのは確実に[運命力]のパラメーターだろう。

 明らかに数値が異常だ。

 運がマイナス……なんというか、ロクなことにならない気がする。

 

 ウインドウを閉じ、辺りを見渡す。

 既に日は落ち、プレイヤーの姿も見えない。

 流石にこれ以上ログインするのは肉体的にも危険そうなので、念のため街に戻り、ログアウトした。



————



 ヘッドセットを外し、台座に置く。

 時計を見ると、短針は2時を指し示していた。

 予想以上にログインし続けていたようだ。もう夏休みなので問題はないのだが。

 その割に眠気がこないのはゲームのせいだろうか。未だにテンションが上がっている気がする。



 ひとつ伸びをし、テーブルに置いておいたスポーツドリンクを飲み干す。

 カーテンの隙間から射し込む光に目を細めながら、俺は勝利の余韻に浸るのだった。

 ……光?


 慌ててカーテンを開き、外を確認する。

 完全に昼だった。



「え? なんで?」



 急いでグッドに通話を飛ばそうとし、しかしログイン中の相手とは通話ができないらしく、仕方なくチャットを飛ばす。



『ログアウトしたら昼だった件』


『ん? あー、VOX-0での1日=リアルでの8時間だから』


『マジ? そんなこと出来るのか……』


『割と今は何処でもやってるけどな。3倍に圧縮されてるのはVOX-0くらいだけど』


『やっぱ神ゲーだな』


Exactly(その通りでございます)



 そういうシステムがあったのか……。

 今までやったどのゲームにもそんな有難いシステムはなかったのだが、MMORPG特有の要素なのか、それとも今までのゲームがクソゲーだから付いてなかったのか。多分後者だ。



 さて、そうなると、予想より時間を持て余すことになる。ゲーム内時間でもう1日プレイしても平気なほどだ。

 ただ……今ログインしても夜だろう。

 基本的にRPGは夜出てくる敵の方が強い。カースゴブリンを倒してステータスが上がったとはいえ、死にゲーにおいて一対多数は死を意味する。

 視界の悪い夜に雑魚敵と戦うのは危険だろう。

 

 そう考えて、とりあえず軽くwikiで情報を調べて見ることにした。


 基本的に自分は攻略はみない(というかクソゲーに攻略サイトはない)のだが、今回はあまりにも必要な情報が多いため、軽く目を通しておこうと思う。


 ただ、やはり自分で考えるのが好きなので、オススメのスキルとか、経験値稼ぎとか、そういうのは一応見ないようにしようと思う。


 今回調べるのはあくまでも大まかなシステム面だ。あと【禍患】についても。



 検索をかけると、公式サイトに次いで攻略wikiが出てきた。

 かなり規模の大きいwikiだ。

 あれだけ作り込まれているゲームなので、攻略wikiも比例して大きくなるのだろう。



「wikiがあるゲームは久しぶりだな……」



 クソゲーにwikiはない。一人の男がwikiの全てを運営する狂気じみたクソゲーもあったがそれはまた別だ。

 

 さて、禍患について検索をかけてみると、当然のように記述があった。


 【禍患】情報求む。



「いや情報ないんかい!!」



 凄い勢いで突っ込んでしまった。


 そもそもカースゴブリン自体が超希少なのかと思い調べてみるが、こっちは普通に情報があるようだ。


 『最初の町であるアインシア近辺のフィールドで、夕方にのみスポーンするレアモンスター。三種類の魔法や、HP50%で召喚するヘルスネイクなど、初見殺し的要素が多いものの、装備さえ整えばあまり強い敵ではない』



「あれで強くないのかよ……」



 と思ったが、実際のところ、装備の整ったプレイヤーであれば大して苦戦はしないのだろう。

 詳しい行動についても記されているが、やはり最後の爆発については記述がなかった。

 確認されていない行動、ということなのだろうか。

 爆発の後に討伐成功の表示が出てきたことから、あれは恐らく自爆技のはずだ。ということは、その自爆の条件が厳しい……とかそういう話なのかもしれない。


 何にせよ、情報がないなら仕方ない。

 あとは掲示板に頼るか、SNSで呟いて集合知の力を借りるか。


 ……いや。



「信用できる廃人に聞くのが一番だな」



 そう考えて、結局もう一度ログインするのであった。

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