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Part50 戦士の休息

未だにタイトルを悩んでいます

どういうのが良いんでしょうね……



 骸王ヴァンデリックを倒した後、俺たちは一度ツヴェルヘイムに着いてから、すぐに【アルゴノーツ】のクランハウスへと赴いた。



「ああ、ナツレン君か。おや? もしかして前に話してた人かな」


「ええ。活きの良いデバッファーですよ」


「人を魚みたいに言わないで欲しいな」


「ふふふ、歓迎しよう。説明は受けてると思うけど、入団テストがあるから、ちょっとこっちに来てもらおうかな」



 早速超さんに連れられてAliceの元へ行った幻水を見送りつつ、俺はブラウザを開いてテイムしたモンスターについてを調べる。

 テイム自体は一般的な技能なので、すぐにwikiのテイマー系職業の項目にお目当の情報が乗っているのを見つけられた。


『ログアウト時、テイムしたモンスターは自動的に登録された場所へと転送されます。場所が登録されていない場合はセーフハウスへ転送されます』


 なるほど、そういうシステムか。

 セーフハウスに関しては、キルカをテイムした時に機能が解放されたというメッセージが出ていたのを覚えている。

 流石に長時間ログインしているのでそろそろログアウトしたいところではあるが、とりあえずこれだけは確認しておこう。


 何となく話がややこしくなりそうなのでクランハウスの外で待機させておいたキルカに、声をかける。



「キルカ、ちょっと移動するぞ」


「了解だぞ、ご主人!」



 頭の狼耳をぴょこぴょこと揺らしながら、キルカは元気よく返事をした。

 


————



 メニューからセーフハウスを選択すると、俺たちはすぐに殺風景な空間に転送された。

 見渡す限りの草原だが、おそらく途中でループするタイプのやつだろう。見た目よりもかなり狭いはずだ。



「どんな家がいいとかある?」


「家か? ご主人と一緒ならどこでもいいぞ」


「いや、俺もずっとこっちにいるわけじゃないからな。そういう時用の家だよ」


「うーん……」



 難しい顔で考え込むキルカを横目に、メニューからセーフハウスに設置できるアイテムの一覧を見てみる。

 犬小屋や厩舎のような現実でも見ることのできるものから、グツグツと煮えたぎる溶岩溜まりや古びたタービンなど、恐らく特定のモンスターを住まわせるのに必要になるのであろうものまで沢山だ。

 人が住むような家も当たり前のように複数種類が存在する。キルカにはこういう家が必要だろう。


 幸い、金は沢山ある。

 家自体もかなり安いので、試しにグレードの低いものを建ててみることにした。

 メニューから購入すると、すぐにボフンと白煙がたちのぼり、一戸建ての家が現れる。

 中に入ってみると、家具自体は少ないが、ふつうに生活が送れそうなほどには整っていた。



「へえ……結構しっかりしてんだな」



 ただまあ、ここに一人というのも、かなり寂しいような気がする。

 普通のモンスターなら同類を一緒に入れておけばそういうのは平気だと思うが、流石に人狼なんて他にいないだろうし……どうするべきか。

 

 ……やはり、クランハウスに居させてもらうというのが理想的なのかもしれない。場所の登録をしておけば問題なさそうだし。

 ただ、それをするということは、クランメンバーとはいえ俺の握っているユニークについて開示するのと同義である。


 ……まあ、いずれバレるか。


 結局俺は、キルカをクランハウスに居させてもらうことにするのだった。



————



「……というわけで、テイムしたモンスターが人になりました」


「キルカだぞ、よろしくっ」



 幻水以外のクランメンバーが唖然とする。

 まあ、モンスターが人になったとか言ってもにわかには信じ難いだろう。逆の立場なら俺も多分そうなると思う。



「もふもふですわ!」


「ユニークの発見速度が尋常じゃないわね」


「……ほんとだ、ペット扱いになってる。こういうのもあるんだ……」


「人型モンスターのテイムか。気になることが多いな。是非とも実験してみたいところだ」


「…………悪い虫が……」



 それぞれがそれぞれの反応を示す中、超さんが歩み寄って来て、キルカの手を優しく握る。



「戦力の増強は大歓迎だ。幻水ちゃんも無事Aliceちゃんに懐かれたし、これで当面の目標は達成かな」



 どうやら幻水は問題なかったらしい。相変わらずAliceに懐かれるかどうかの基準がわからないが、まあ良い。

 関係ないけど、幻水がちゃん付けで呼ばれてるのなんか面白いな。



「キルカちゃんをクランハウスに住ませたいって話だったかな。もちろん、問題ないよ。常に誰かがいるわけじゃないけど、セーフハウスよりは幾分マシなはずだ」


「ありがとうございます」


「ユニークについて話してくれたしね。こちらとしても断る理由はない。……ああそうだ、リンネちゃん、ココロアちゃん、幻水ちゃんは、後でそれぞれ私のところに来て欲しい。ちょっとした特訓をしようと思ってね」


「特訓、ですの?」


「そうそう。なんかナツレンくんだけユニークで突出してるでしょ? だからまあ、追いついてもらおうと思って」



 戦力の底上げということだろうか。

 前から思っていたのだが、超さんはクランメンバー全員で何かに挑戦しようとしているような気がする。

 それが何なのかはわからないが……まあ多分ユニーク関連だろう。


 そんなことを考えていると、目の前にログアウトを促す表示が現れた。

 流石に長くログインし過ぎたようだ。

 この状態でゲームをプレイしたところでパフォーマンスが下がってロクなことにならないので、大人しくログアウトすることにしよう。



「じゃあ、キルカ。俺は少し離れるから」


「うん。待ってるぞ、ご主人」



 ああ、ログインする理由が増えてしまったな。

 元より引退するつもりはないが。


 ログアウトボタンを押し、少し経つと、俺の視界は徐々に黒く染まっていくのだった。



————



 顔に覆いかぶさる異物感。

 それをゆっくりと外し、ベットから起き上がる。

 長時間プレイの後の軋む身体を伸ばし、大きく息を吐く。



「……寝汗がすげえ」



 手に汗握る戦いを連続で行ったのだ。当然だろう。

 やることは色々あったが、とにかくまずはシャワーを浴びることにしたのだった。

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