Part45 狼の伝説
メンテがあったので二話投稿です
「なんで喋れるようになったんだ?」
「なんかよく分からないけど、喋れるようになったぞ」
「よく分からないのか……」
廃教会の中、俺は突如喋れるようになったキルカと会話をしていた。
キルカ自身もなぜ喋れるようになったのかは分かっていないようだが、ユニーククエスト進行の表示が現れたことから、参傷狼伝説に関わるものだということがわかる。
ちなみにキルカは戦闘終了後に煙と共に元の大きさへと戻った。
「そうだな……狼に関する伝説ってないか? 何でもいいんだけど」
「おとぎ話に近いけど、あるな」
そう言ってキルカは過去の記憶を思い出しつつ語り始めた。
まとめると、こうだ。
かつて、群れを統べる一匹の狼がいた。
その狼は強く、戦いを好み、身体には三つの傷跡が残されていたという。
ある日、縄張りに一人の人間が侵入してきた。
その人間は単に迷い込んだだけであったのだが、傷の狼は彼を強者と見ると、単身で戦闘を始めた。
その結果として、傷の狼は敗北してしまう。
今まで出会った誰よりも強い男に、彼は更なる強さを求めて付き従うことにした。
その意図を汲み取ったのか、人間は言った。
「その傷を付けた敵を倒そう」と。
こうして彼らは協力して敵を打ち倒してゆき、狼に傷を付けた三体の異形を倒すことに成功した。
すると、狼は人へと変化し、その身体で男の側に付き、一生をかけて彼を守ったのだという。
……と、こんな感じらしい。
伝説なので色々とよく分からないところはあるが……これ、ビンゴじゃないか?
一致するものがあまりにも多いし。
ほぼ確実に、参傷狼伝説のクリア条件はキルカに傷を付けた三体の敵を倒すことだ。
その内の一体は、先ほどのペイルライダーだったのだろう。
ふと手の甲を見ると、爪痕のような三本の印の内、一本が赤くなっていた。
三本が赤く染まるとクエスト達成で……恐らく、キルカが言う通りであれば人型NPCになるのだろう。
「傷を付けたやつって、どんなモンスターなんだ?」
「うーん……あんまり覚えてないけど、ここから西に行った方にいる丸い火のやつと、あと何処かにいる黒いやつだ」
「名前まではわからないか」
『丸い火のやつ』とやらに関しては見つけやすいだろう。
方角も示されているし、形状までわかっている。
しかし、何処かにいる黒いやつってなんだ?
場所も形も分からず、はっきりしているのは色だけ。
これでは探しようもない気がする。
ただ、火のやつがキルカに付けた傷は恐らく火傷痕だろう。
そうなると、残りは顔の一文字の傷痕と右肩の裂傷痕。
そしてペイルライダーが付けた傷はほぼ確実に右肩の傷だ。
終始大鎌を使っていたペイルライダーが、こんな鋭い直線の傷を付けられるはずがない。
という事から、ある程度の絞り込みはできる。
……と言っても、まだ特定できるほど絞り込めてはいないのだが。
「まあ、火の方から行ってみるか。大丈夫か?」
「回復したから大丈夫だぞ」
一応全体マップを見ておくと、ここから西には森があるようだった。
エリアらしい場所は森くらいなので、多分ここで大丈夫だろう。
時間的にもまだ余裕があったので、俺たちはそのまま森へと向かったのだった。
————
淡き森クルテュレイというエリアの奥に、光球の舞うエリアがある。
キルカの言う『丸い火のやつ』とは、そんな光球を統べるボスのような存在であった。
名前は纏統光球エルズァー。
ペイルライダーがあれほどの強敵だったのだから、こちらもヤバイのではないかと思ったが……実際戦ってみると大したことはなく、すぐに倒すことが出来た。
せいぜいノーマルモンスターに毛が生えた程度だ。
キルカの覚醒スキルは戦闘中にゲージを溜めることで発動可能になるらしく、今回はそれが溜まることは無かったので、覚醒スキルを使うこともなかった。
「よし、傷痕も赤くなったな」
「ご主人、肉が食べたいぞ」
「ああ、肉な」
インベントリから猪肉を取り出して与えると、キルカはすぐにがっついた。
さて、ペイルライダーを倒した時にはキルカが人間の言葉を喋れるようになったが、今回は特に何かが解放される様子はない。
もしかしたら強くなっているかもしれないが、その辺りは実際に戦ってみないとわからないところだ。
そんなわけで、二体目を無事に倒せたわけだが……問題は、やはり三代目のモンスターだ。
二体目を倒すと思い出すんじゃないかと密かに期待していたのだが、そんなことはなかった。
面倒ではあるけど、ネットで調べるなりグッドとかに聞くなりして絞り込んで行こう。
多分、最初の街くらい遠い場所にはいかないだろうし、そこまで膨大な作業になるということはないだろう。
とりあえずは、今連絡のできるグッドにチャットを飛ばして聞いてみよう。
そう思ってメニューを開いた瞬間、新着メッセージが読み込まれた。
差出人は……幻水。
ああ、アイツか。
——————
やっほー!!!ナツレンくん今暇?
ティースリーのイベント終わったからそっち行けるよう☆
ちなみに今回のイベントは私が考えた自爆空中ドリフト戦術が猛威を振るったんだけど、ナツレンくんも試してみないかい?
——————
相変わらず文章でもウザい。
どうせ意図してやってるんだろうな。
そういえば、こいつを勧誘していたのをすっかり忘れていた。
何やら自爆空中ドリフト戦術とかいうヤバイ文字列が見えるが、それは気にしないでおこう。
それはそれとして……今こいつと合流するのはマズイ気がするな。
確かこいつはヴォックソを過去にプレイしていたと言っていた。
であれば、ユニークの重要性というのは確実に理解しているだろう。
洞察力の鋭すぎる奴のことだ、キルカを見られるとそれだけでバレる気がする。
アイツなら、それをネタに強請ってくるに違いない。
「つっても、無視したらそれはそれで面倒だしなあ」
ココロア程じゃないが、アイツはアイツでネットストーカー的なところがある。
恋愛感情に基づくものではなく、知的好奇心を満たすためのもので、なんならココロアも幻水のストーキング対象に含まれているのだが、まあそれは良い。
「仕方ない……会うか。キルカ、三体目に関しては情報が少ないから一旦保留な」
「わかったぞ」
幻水にチャットで短く返事をすると、すぐに待ち合わせに関する話がきた。
どうやら幻水は俺が思っていたよりも進んでいたようで、進行度的には俺とほとんど同じところまで進んでいるようだった。
ゼーヴェンクライツの次に向かう街は、例によって四つ存在する。
その中で、俺が遺都メノスランテを通ってクノーヴェへ行ったのに対し、幻水は別のエリアを通ってシビルフに行ったようだ。
「はあ……面倒だなあ」
「大丈夫か? ご主人」
「逃げられないことだから仕方ないな……キルカも気をつけろよな」
「?」
そんなわけで、俺たちはゼーヴェンクライツで落ち合うことになったのだった。




