表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/104

Part38 戦利品


 既にケルベロスは倒していたようで、今はトリバードが叩き落とした鷹をプレイヤーたちがボッコボコに殴っている。

 多分もう長くはないだろうし、任せておいても大丈夫そうだ。



「門を経て、成長したようだな」


「はい、おかげさまで」



 ゲーム上では相手が敬語で話しかけてこない限りは大抵タメで返す俺だが、ユーゴさんを相手にすると何故か自然に敬語が出てきてしまう。


 ロールプレイが凄くそれっぽいからだろうか。

 †暗黒の黒炎剣士ユーゴ†とか完全に地雷ネームだし、そんな人間がカッコつけた喋り方をしていたら最悪晒される可能性すらありそうなものだが、彼の場合は実力が伴っているのもあって言動に説得力があるように感じられる。


 まあそれはそれとして名前は痛いとは思うけど。黒って二回言ってるし。



「ふう……どうにか倒せましたわね」


「おつかれ様、ナツレンくん……!」



 二人はひどく疲れているようだった。

 流石に連戦はキツかったのだろう。遠くの方ではまだ戦っているのが見えるが、一先ずは休憩しておこう。



「あっ、そうだ。この人はユーゴさん。黒盟騎士団のクランマスターだ」


「十二クラン同盟の方ですわね! お噂はかねがね伺っておりますわ!」


「男なら安心……よろしくお願いします」



 そう言って近寄ってくる二人を見て、ユーゴさんは顔を赤くしてそっぽを向いた。



「……すまない、女性は少し……難しい」



 ウブか。


 これは偏見かもしれないが、どうせ女アバターの五割は男だし、気にすることは無いと思う。

 ちなみにショタアバターは九割女だ。こっちは偏見じゃ無い。



「…………やっぱり安心できないかも」



 そしてお前は何を危惧してるんだ。




 さて、ハカアバキが消滅した場所に目をやると、何やら球体のエフェクトが光り輝いていた。

 注視して見ると、どうやらプレイヤー毎に個別に入手できるレアドロップのようだった。

 レイド報酬というやつだろう。システム的に取り合いになるものでもないので、早速取ってみることにする。



————


 ・ディセントゥーム・グリーヴ(レムナント)

 かつて墓荒らしの一族が身につけていたという脚装備。

 秘められた力により、悪路においても軽快に走り去ることが出来ると言われている。


————



「これは……割と良いな」



 説明文を読む限り、効果は主に移動速度の向上だろう。

 いくら装備で防御力を上げたところでまともに受ければ貫通して来たダメージで死に至るクソ雑魚装甲の俺にとって、必要なのは防御力ではなく身軽さだ。

 早速装備してみようとするが……



「あれ、装備できない」


「……黒蝕の禍でのレイドドロップはレムナント状態になっている。その状態では装備出来ないが、生産職がいれば復元出来る」


「あ、そういう感じなんですね」



 なるほど。たしかに先程出てきたレイドモンスターは全て名前にレムナントと付いていた。

 残滓などを意味する言葉であるそれは、やはりそのままあのモンスターたちが何かの残滓であることを示しているのだろう。


 極めてゲーム的に言うのなら、既に存在するボスをレイドモンスターとして使い回すためのシステムだ。

 まあ黒蝕の禍というイベントだけにしか出ないだろうし、その上でこれだけの数のレイドモンスターが生み出されるのなら、使いまわすのも当然だろう。


 にしても、生産職か。

 やはりここは信頼できる人間に任せたいものだが、生憎俺の知り合いにそんなヤツはいない。

 一応アルゴノーツにも生産職はいるが、当の人物は遠くの方で大蛇に大量の爆弾を投げつけている。生産職とは言え、流石にアレは違うだろう。


 まあ、もしアテがなければ自分でやってみるのもいいかもしれない。

 流石に生産職に人生を捧げるつもりはないが、副職的にやってみるのもいいだろう。

 せっかくのゲームなのだから、出来そうなものは色々と体験してみたいし。



 と、そんなことを考えている間に鷹狩りが終わったらしい。

 プレイヤー達が群がる上で、背中に翼の生えた変人が見得を切っていた。

 ギャグみたいな絵面だ。



 とりあえず俺もレイドドロップを確認してみる。

 ケルベロスの方は魔法関係のステータスを上げる腕装備で、鷹の方は単なる素材だった。

 このゲームのレイドドロップは貢献度によってテーブルが変わるらしい。鷹のドロップがショボいのは、ほとんど戦っていないからだろう。


 まあ、あの鳥男を呼んだのは俺なのである程度貢献していると言えなくもないのだが、システム的にそこまで判断は出来ないから仕方ない。



 ケルベロスの腕装備がどのくらいで取引されているのかを調べていると、バッサバッサと音を立てて、トリバードがこちらにやってきた。



「そちらも終わったようだな。……って、暗黒の! お前も来ていたのか」


「鳥人族の男か。久しいな」


「ん? 知り合い?」


「ああ、俺のクラン【野鳥を見る会】は十二クラン同盟の一員だからな」


「そういうことだ」


「えっ、色々と初耳なんだけど」



 十二クラン同盟の全貌がよくわからない……というかそもそもクランに関しての知識があまりないな。

 俺自身もクランに所属しているはずなのだが、アルゴノーツはクラン感がないというか、各々好き勝手やってるような感じだ。

 大概のことは超さんがこなしているようだし、新規の俺が出来ることなどあまりないだろうが、それはそれとしてもっとこうクラン対抗戦みたいなものがあるのかと思っていた。



 クランに関してはまた今度調べるとして、一先ずの休憩はとったので、再度レイドボスの殲滅に戻ろう。


 トリバードの話では、後はもうレイドボス達を倒すだけで黒蝕の禍は終わるらしい。


 辺りのレイドボスは粗方狂人達が殲滅していったようだが、それでも少し残っているので協力して倒すことにしよう。


 集まったプレイヤー達とともに、俺たちは今まさに地中から飛び出した巨大な土竜の方へ向かうのだった。

 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ