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Part31 冥幻闘剣ヘカトンケイル




[ユニーククエスト 冥き門を護る者を達成しました]



 その表示がポップアップした直後、空間は折りたたまれるように収縮し始め、数秒後、俺は冥き門の前に立っていた。


 横に立つゲートキーパーが、笑顔で告げる。



「ふふふ……おめでとーじゃん! これで試練クリアじゃん!」


「っしゃあ!!」



 自分でも驚くほど綺麗なガッツポーズが出た。


 ギリギリだったが、なんとかクリアできて良かった……。もし最後を失敗していたら、もう一度ミーティアの料理を食べなければならないところだったし。

 


「じゃあ、これで冥幻闘士になれるのか」


「その通りじゃん! 付いてきてじゃん」



 門が重い音を立ててゆっくりと開き、ゲートキーパーが俺を手招きする。

 中は完全な闇のようで、ただそこに黒い壁があるようにすら見えたが、ゆっくりと足を踏み入れると、一瞬水に触れたような感覚がして、急に視界が晴れた。


 薄暗い部屋を、淡い緑色が覆っている。

 空間そのものの概念的な冷たさから、俺の脳裏に浮かんだのは「墓所」という言葉だった。

 そう表現するのが正しいのかはわからないが、石の台座に並べられた黒い武器は墓標のようでもあり、それらを緑色の炎がゆらゆらと照らしているさまは、どこか神秘的だ。



「どこだったっけ……あ、ちょっと奥の方にあるじゃん」



 どんどん奥へと進んでいくゲートキーパーについて行く。

 台座に並べられた武器は、剣や槍、銃や杖などのわかりやすいものだけでなく、円盤が複数連結しているものや、四角い箱のようなものなど、見ただけでは攻撃方法すらわからないものもあった。


 やがて周囲に存在する武器種にほとんど見覚えがなくなったとき、たったひとつ、見覚えのある剣の前でゲートキーパーは立ち止まった。



「これが冥幻闘剣——ヘカトンケイルじゃん」



 台座に横たわる、黒い剣。

 俺が今持っているもののオリジナルだろう。


 肘から指先までと同じくらいの長さのそれを、ゆっくりと手に持ち、鞘から抜く。

 揺れる光を受けて、黒い刀身がゆらりと妖しく輝いた。



[上級職:冥幻闘士が解放されました]


[自動的にジョブチェンジします]


[冥幻闘士へとジョブチェンジしました]



 見習いだったからだろうか、自動的にジョブチェンジがなされたらしい。

 確認のために、早速ステータス画面を呼び出してみる。



———————————


   [名前] ナツレン

   [職業] 冥幻闘士


  [生命力] 1220

[物理攻撃力] 1591

[魔法攻撃力] 318

[物理防御力] 344

[魔法抵抗力] 520

 [継戦能力] 2289

[弱体抵抗力] 903

[総合思考力] 2085

  [運命力] -800


———————————



「んぇっふ」



 変な声が出た。



 ……え、何これ?

 パラメーターが軒並み上昇してるんだけど、これは……何?

 格上と戦い続けた結果か?


 なぜか運命力が下がり続けているのはとりあえず置いておくとして……なんというか、意図せずパワーレベリングをしてしまった感じだ。


 たしかに格上を相手取れば莫大な経験値を得ることが出来るだろう。それは大体のゲームでそうだ。


 俺が試練で戦った相手は軒並み「料理バフがかかった状態から見た格上」だ。

 本来の俺のステータス的には出会った瞬間死が確定するレベルの強敵なわけで、そんなやつらをソロで撃破すればこうなってしまうのも仕方ない……のか?


 正直言って、ステータスの上限もよくわかっていないし、ステータス隠しのせいで上級者がどれくらいの値なのかもわからないので、複数ステータスが1000を超えている今の俺がどのくらいのレベルに位置しているのかは把握できない。


 しかし、少なくとも今の俺が得て良い力では無いだろう。それはわかる。



 ……うーん……こういうの、俺あんまり好きじゃないんだけどな。ギリギリで戦いたいというか……まあ過ぎたことを悔やんでも仕方ないので、とっととストーリーを進めて適正レベルのエリアまで向かってしまえばいいか。



 そんなことを考えつつ、剣を鞘に収める。


 ふとゲートキーパーを見てみると、目をこすって小さくあくびをしていた。眠いようだ。



「ふぁ〜あ。久しぶりにたくさん動いたから疲れたじゃん。私はもう寝るじゃん」


「そっか。……ありがとう、先生」


「んふふ、やっぱ先生って呼ばれると気分がいいじゃん。私は大体暇だから、いつでも遊びに来るといーじゃん。稽古くらいなら付けてやるじゃん!」



 基本的にこの空間は秘匿されているため、俺とユーゴさん以外の人は来ない。ゲートキーパーが何者なのかはわからないが、多分寂しいのだろう。

 

 そのまま手を振って地面に沈み始めた彼女だったが、途中で「あっ」と短く漏らし、こちらを振り返った。



「あとそのヘカトンケイル、まだ上の段階があるじゃん。詳しいことは使い熟せるようになったら教えるじゃん」


「えっ」



 おやすみー、と言いながら地面に沈んで行ったゲートキーパーと入れ替わるように、メッセージウインドウがポップアップする。



[ユニーククエスト+ ヘカトンケイルの覚醒 に関する情報が解放されました]


[受注条件:冥幻闘剣ヘカトンケイルの熟練度100%]



 …………えっ。まだ上あんの?


実質的なパワーレベリングを行う主人公、いいのか?

とりあえず修行編はこれで終わりです。

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