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Part29 最終試練



「《十字光(クロイツリヒト)》ッ!!」



 縦横に十字架のように交差する斬撃が竜の胴体を斬り裂き、傷口から光が溢れる。

 これがトドメとなったようで、赤竜ヴォルカリードはポリゴンとして爆散した。



「はぁ……はぁ……」


「おつかれ〜。よく勝てたじゃん!」


「十二回か……まだマシな方だな」



 自在に瞬間移動を繰り返し、視界外から魔法を撃ってくる黒腕、ディストーション・アームズ。


 蠢く大量の虫が集まって大きな人型をなしているというビジュアル面最悪な巨人、バグズィット。


 半透明の兵士が無限に湧き出てくる「戦いは数だよ」を体現するような軍隊、エイドロン・コホート。


 音による不可視の魔法を繰り出す白い銅鑼の様な魔物、ハクラビャクラ。


 そして、見た目通りに炎やマグマを放出する赤竜、ヴォルカリード。



 バグズィットは見た目がキモいだけでそこまで強くはなく、エイドロン・コホートも慣れれば無双ゲーのようで、どちらも二、三度のリスポーンで撃破することができた。


 その代わりディストーション・アームズとハクラビャクラは本当にキツかった。

 それぞれ何十回もリスポーンしたほどだ。

 認識外からの魔法と、ほとんど見えない魔法。

 どちらも共通して認識が難しく、その上魔法によっては予備動作も小さいため、見てから回避を強制されるのだ。

 おかげで若干コツは掴めたが……もう二度と戦いたくない。マジで。


 ちなみに今倒したヴォルカリードは王道な外見をしているだけあって強さも王道で、単純にステータス的な強さを持つ分トリッキーな攻撃などは無く、十二回のリスポーンで勝つことができたのだった。



「ここまでよく頑張ったじゃん! 次がラストじゃん!」


「おお、あと一体か」



 途中休憩を挟んだが、残り時間はゲーム内時間で六時間ある。あと一体なら何とかなりそうだ。



「最後はちょっと特殊じゃん! 一撃でも当てられたら君の勝利じゃん!」


「一撃当てるだけでいいのか?」


「もちろんじゃん! べつに、武器投げてぶつけるだけでも良いじゃん!」


「やけに条件が緩いな……」



 今までに戦った相手から考えると、やはり俺にあった戦闘で勝つことができるはずだ。

 どれも攻撃力が高い分防御は高くなく、避けることと継続して戦闘することが求められる相手だった。

 一撃当てるだけでいいというので、多分小さかったり素速かったりで攻撃を当てることがそもそも難しいタイプの敵なのだろう。


 ……それにしても、影の剣士と戦った時に俺に向いている戦闘スタイルを把握されたのか?

 めちゃくちゃ良くできてるゲームだな……やっぱ神ゲーだ。



「で、最後の相手は?」


「最後は……この私! グルーミー・ジャンク・ゲートキーパーがお相手するじゃん!!」


「なるほどな、まあそうだろうとは思ってたけど」


「えっ」



 ゲートキーパーは、驚いた様に目を見開いた。

 いや、こういうパターンはゲームで無くともよくあるし……



「ま、まあいいじゃん。私は斬った程度じゃ死なないから、思いっきり攻撃してきていいじゃん」


「ああ、わかった」


「じゃあ……スタートじゃん!!」

 


 ゲートキーパーが手を挙げてそう告げるのと同時に、俺は新しく会得したスキル《アクセラ・バースト》を発動し、爆発的に速度を上昇させる。

 ハクラビャクラを撃破するための試行錯誤の末に取得したこのスキルは、発動直後が最も効果が高く、そこから時間が経過するに従って段々と遅くなっていき、最後の方は本来のスピードよりも遅くなるという短期決戦向きのスキルだ。


 速度を保てる時間は[継戦能力]のステータスが関わってくるようで、今の俺の2000近いステータスでは最高速が三分、徐々に低下する加速状態が七分続き、その後に五分間の速度低下状態が入る。

 速度低下はかなり痛いが、どうせこの場においてはその前に死ぬので特にデメリットを感じることはない。



 一歩目を踏み込み、強く地面を蹴る。

 風が吹き付けるような音が鳴り、視界が背後に流れるように加速する。


 未だ棒立ちのゲートキーパーに対し、細剣(レイピア)に変形させた武器を振るい——



「まだまだじゃん?」



 俺以上のスピードで、ゲートキーパーが背後に飛び退いた。


 残像が残る程のスピード。

 ステータスが上がっているせいか、目では追える。

 しかし、身体が付いていかない。

 ゲートキーパーの動く方向を予測して動かなければ、並走することすら不可能だろう。


 初撃を回避されるのはわかっていたが、ここまで凄まじい速度だとは……



「こっちからも攻撃しちゃうじゃーん!」



 バチバチと空間が裂け、飛び出した赤黒い荊が地面を叩き潰すように暴れ狂う。

 次いで青い炎が虚空に燃え上がり、それが荊に燃え移った途端、爆発するように棘が四方に弾け飛ぶ。

 光の剣が空を舞い、レーザーを放ち、赤く熱された地面が一瞬置いて高く炎柱を放つ。


 …………はい、ここまで数秒。

 


「はあっ!?」


「まだまだ行くじゃん!」



 氷の牙、闇の塊、爆発する蜘蛛、毒の雨。

 攻撃をどうやって当てるか、とかそういう次元じゃない。

 ゲートキーパーの攻撃を回避することすらままならない程の攻撃の連続だ。


 それだけでもキツイと言うのに、ゲートキーパーが使う魔法はそれぞれ特殊すぎて、ゲーム知識的な経験値を生かすことが全くできない。


 蛇の様にうねる電光が地をのたうち、人の背丈ほどある赤い薔薇がふつふつと煮えたぎる液体を発射する。


 セオリーなど存在しない攻撃の数々に対して、真の意味での見てから回避をしなければならない。



「くっ……!?」



 避けきれなかった鎖が腕に絡みつき、流れる様に動く光が俺の身体を眩く焼いた。

 一瞬で生命力が0になり、視界が暗転する。



 ……これ、六時間で行けるか……?

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