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Part28 D・M・L・G




「ォォォォーーーー!!」



 高く吠えるような音が鳴り、浮遊する鉄塊が勢いよく叩きつけられる。

 爆発したかのように地面が吹き飛び、破片とともに雷が迸った。



「くっ……!」



 複数のステータスにバフがかかっているものの、物理防御力だけはほとんど変動していない。

 魔法防御力は強化されているため、雷は一度食らってもとりあえずなんとかなるだろうが、鉄塊による物理的攻撃を食らえば確実に即死してしまうだろう。



 つむじ風に弄ばれる木の葉のように弧を描きながら叩きつけられる莫大な質量を前に、新スキル《エアグライド》を発動する。

 グライドステップとマナステージングの組み合わせによって進化したそれは、今までとは違い空中を滑ることが可能だ。

 あまり立体的な動きができるわけではないが、高さを変化させることが可能で、更に効果時間も伸びているため選択肢の幅が広がったと言える。


 鉄塊の間をすり抜ける様に滑り、効果時間が切れるタイミングで大きく踏み込んで跳躍する。


 本体であろう、雷を纏う一際巨大な鉄塊に狙いを定め——



「《ハウザーブラスト》ッ!!」



 スキルの発動とともに、ハンマーがロケットエンジンの如く炎を放ち、莫大な推進力が生じる。

 瞬間、衝撃。

 豪快な爆発音とともに迸る火炎の渦が大きく唸り、ダーク(D)メタル(M)レヴィン(L)ゴーレム(G)の表面を包む様に一瞬広がり、次いで二度目の爆発を引き起こす。



「中級職のスキルは派手だな……超楽しい」


「コォォォォォーーー」


「お、怯んだな」



 怯みが入り、一瞬DMLGの動きが止まったのを見逃さず、武器種を切り替えて追撃を加える。

 ハンマーがどろりと流動し、形成されたのは金棒だ。

 ほとんど金属バットの様なもので、ハンマーに比べて隙も小さく取り回しがしやすい。



 金棒スキル《壊央撃(かいおうげき)》による装甲無視の打撃を複数回当て、《エアグライド》で離脱。

 職業が変わってもやることは同じだ。

 接近して殴って離脱して、接近して殴って離脱して。これらの動作を敵の攻撃を回避しつつ行い続ける。

 避けゲーは得意なので、これが俺向きの戦法なのだ。



「まともにやり合えてる……けど、難しいな……!」



 強力なステータスバフのおかげで、確実に格上であろう相手に対しても問題なく戦うことができている。

 しかし、そのステータスバフが逆に俺の思考を苦しめていた。

 攻撃力や防御力が上がるのはともかく、速度の上昇にまだ対応しきっていないのだ。

 

 総合思考力が6倍近く向上しているからか、どうにか今までのように行動できているとはいえ、一瞬でも意識を散らすと叩き潰されて即リスポーンだろう。



 叩きつけられる鉄塊を予測して動き、飛び交う雷撃を身体を捻ってギリギリで躱す。

 注意すべきは雷ではなく鉄塊……なのだが、一瞬雷に掠った部分がチリチリと焦げ、体力が三分の一程削られてしまった。



「カス当たりでもこんな削られんのかよ……!」



 上、左、上下。

 影の剣士ほど的確に避けにくい場所を狙ってくるわけではないが、その分技の密度が高い。

 避けられそうにない鉄塊を金棒でどうにか打ち返し、その反動で受けたダメージをポーションで回復する。



 ハウザーブラスト、壊央撃、メテオライトスマッシュ、鎧砕撃(がいさいげき)

 十分以上にわたる絶え間ないスキルの応酬を越え、小型の鉄塊を金棒で叩き捨てて、最後に残った巨大な鉄塊——DMLGの本体を見据える。


 DMLGは、直線的な雷撃を小型鉄塊を経由して巡らせることによって読みにくい変則的な攻撃を行っていた。

 つまり、単体になったDMLGはもはや恐るるに足りない。



「——ォォォォォオオオ!!!」



 発狂モードの開始だと言わんばかりに複数本放たれる雷撃。

 その全てを完璧に回避し、《エアグライド》で空を滑り上がる。

 武器をハンマーへと変形させ、大きく振りかぶり——



「ブチかます!!」


「コォォォォォオオオ!!」



 俺がハンマーを叩きつけるより先に、DMLGはその身体から太いレーザーのような雷を放つ。

 しかし、振るわれたハンマーはその雷を飲み喰らい、逆に力を増してDMLGに叩き込まれる。


 《マギディフィート》。魔法攻撃を叩き潰し、残骸を巻き込んだまま敵に叩きつけるこのカウンター技は、判定がシビアな分、期待以上の火力を叩き出してくれた。



 めり込むようにひしゃげたDMLGが、制御を失って落下する。

 ズシン、と重い音が響き、黒い鉄塊はポリゴンへと分解されていった。



「よっしゃあ!!」


「DMLGちゃんを一回で倒すとは……中々やるじゃん!」


「自分でもビックリだよ」


 

 ボソッと「これ、もっと強くても大丈夫じゃん?」と言っていたのが怖いが、今の俺ならどんな敵でも……いやちょっとアドレナリンが出過ぎて正常な判断が出来てないな。

 あれ以上強いのをバンバン出されたら流石に厳しいわ。



「早速次に行くじゃん?」


「うーん、そうだな……」



 少し休みたいところだが……しかし、俺には明確なタイムリミットが存在する。

 この試練は、ミーティアの料理によるバフがかかった状態を基準として難易度が変化している。

 つまり、ゲーム内時間で3日経過するまでに全て終わらせなければ詰んでしまうのだ。

 PSがどれだけ優れていたとして、能力値が貧弱なら戦うことすらままならない。

 PSは、あくまで同じ土俵に上がらなければ効果を発揮しないものなのだ。



「じゃあ、次のやつ頼む」


「了解じゃん!」



 ゲートキーパーが軽く手を打ち鳴らすと、彼女の背後の空間が歪曲する。

 歪みは二つの円形を形作り、黒く染まったその空間から、巨大な黒い腕が突き出してきた。



 俺が武器を剣に変化させるよりも早く、ディストーション・アームズと表示されたその黒腕が指を鳴らす。



「何……をぉぉ!?」



 目の前を通過する黒い刃が地面に突き刺さる。

 反射的に背後に滑りながら上を見ると、暗雲のように立ち込める霧から、無数の刃物が落下してきていた。


 滑ってそれを避けていると、腕が虚空へと消え、背後からパチンと指の鳴る音が聞こえる。


 俺を囲むように死角から放たれる大量の魔法とともに、生み出された黒い狼が迫り、俺の喉に食らいついた。



「嘘だろ……」



 ……これ、やばいな。

 

流石にボス戦を連続で書くのはあれなのでダイジェスト的になります

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