Part27 冥き門の試練
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寝たら気分が落ち着いたので、再度ヴォックソにログインすることにした。
開始地点を冥き門前にしてログインする。
……が、身体の自由が利かず、そのまま倒れてしまった。
「は?」
慌ててステータスを開くと、状態異常が凄いことになっていた。
猛毒、麻痺、火傷、スロウ、恐慌、病気、侵食、感染などなど、およそRPGに存在するすべての状態異常が一堂に会し、俺の身体を蝕んでいる。
どの状態異常にも解除が非常に難しいことを示すマークが表示され、今の俺にはどうにもならないということだけがわかった。確かこの赤黒いマークが付いている状態異常は上級職のヒーラーでも解除できない……とかwikiで見た気がする。
「おっ、きたじゃん……って、どうしたじゃん!? うわっ、猛毒とか麻痺とかいっぱいかかっちゃってんじゃん!!」
地面から滲み出るように現れたゲートキーパーは、倒れ伏す俺を見るなり慌てて門の中から杖のようなものを持って来た。
彼女は何やら詠唱らしい言葉をつぶやいて、その杖を振るう。ジャラジャラと音を立てて、その先端に付いた黒い鎖のようなものから明るい光が溢れた。
動かない体で目だけを動かして見てみると、俺の身体は緑色のエフェクトに包まれていて、少し経つと状態異常は全て消滅していたのだった。
「おお……ありがとう」
「別にいいけど、何があったんじゃん?」
「激しい戦いだった……」
食卓は戦場だ。あれほど無味が恋しい瞬間はなかっただろう。
俺の顔を見て察したのだろうか、ゲートキーパーはそれ以上聞いてくることはなかった。
「まあ、あまり深くは聞かないじゃん。……さてと、転職も出来てるみたいだし、早速試練をやるじゃん?」
そう言ってゲートキーパーが手に持った杖でトントンと地面を突くと、一瞬闇が空間を覆い、それが晴れた時、辺りは広い空間へと変わっていた。
岩の壁は黒い無機質なものへと変わり、それをいくつもの正方形に区切るように青白い光が走っている。
格ゲーのコンボ練習用のステージみたいな感じだ。
「これから君には色々と敵を倒してもらうじゃん!強い敵だから、いくら死んでも最終的に倒せれば問題ないじゃん!」
「あ、死んでも平気なんだな。……よし、いつでもいいぞ」
「じゃあ、まず一体目はレッドアイアンゴーレムじゃん!」
ゲートキーパーが手を叩くと、虚空にモンスターの形を描くように線が描かれる。
具現化した赤いゴーレムが大地を踏みしめ、地面を揺らした。
なるほど……これが最初の敵か。
その名の通り、金属で構成されているのだろう。
効率よくダメージを与えるには魔法が良さそうだが、あいにく俺は単体だと物理攻撃しか出来ない。
それならせめて剣よりはハンマーの方がいいだろう。
構えた剣——ヘカトンケイル・レプリカを握り、浮き上がったウインドウを目線で操作してハンマーへと変形させる。
ロボットが変形するような段階的な変化ではなく、液体が流動するような変化だ。
白い剣はドロリと溶け、直ぐにハンマーの形に変化した。
深く腰を落としてハンマーを構えると、ゴーレムはその腕を打ち鳴らし、勢いよくこちらへと突進し始めた。
「行くぞ!」
迫る赤い巨体を見据え、ハンマーを勢いよく振り抜く。
ゴグシャア、と凄まじい音がして、ゴーレムの身体に放射状にヒビが走った。
「えっ」
鉄鎚の一振りは凄まじい風圧を伴って唸り、レッドアイアンゴーレムの身体をいとも容易く打ち砕いたのだった。
ガラガラと音を立ててゴーレムの身体は崩れ落ち、後には無残に砕け散った鉄塊だけが残った。
「え、なんだこれ……何?」
「めっちゃ成長してるじゃん!?」
一つ思い当たってステータスを見てみると、バフ情報がおびただしい数のバフで埋め尽くされていた。
確実にあの料理の副作用だ。
筋力や速度、思考力などあらゆるパラメーターにゲーム内時間で3日続くバフがかかり、ステータスは大変なことになっていた。
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[生命力] 210+1000
[物理攻撃力] 330+2500
[魔法攻撃力] 60+1000
[物理防御力] 62
[魔法抵抗力] 63+1300
[継戦能力] 318+1500
[弱体抵抗力] 140
[総合思考力] 329+2000
[運命力] -200
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「うわぁ」
ヤバすぎるだろこれ。
流石にこれだけの圧倒的なバフが3日ノーリスクで続くはずがない。
本来であれば、あの上級職でも解除できないような状態異常がデメリットなのだろう。
しかし、そんなデメリットを、謎のNPCであるゲートキーパーは容易く解いてしまった。
結果として超強力なメリットだけが残ってしまったようだ。
つまり、ミーティアの料理を食べて、デメリットをゲートキーパーに解除して貰えば、超強力なバフをノーリスクで得ることができる……?
……いや、そもそもアレを食べるということがリスク高すぎて無理だ。あんなものを常食していたら現実の肉体が食中毒を起こしてもおかしくない。
「えっと……」
「これなら、もっと強いコースでも大丈夫じゃん!」
言葉を詰まらせる俺を余所に、ゲートキーパーは新しい敵を召喚した。
それは先程と同じくゴーレム系の魔物だったのだが、しかし、その様子は明らかに別物だ。
黒く発光する鉄塊が複数宙を舞い、青い電撃が迸る。
「ダーク・メタル・レヴィン・ゴーレム……略してDMLGちゃんの登場じゃん!」
「ホォォォォーーーーンッ!!!」
高く吠えるような音が、開戦を告げた。




