Part23 グルーミー・ジャンク・ゲートキーパー
ここから新章
感想欄の更新きてましたね
[ユニーククエスト 冥き門を護る者を開始しますか?]
「ユニーククエスト……?」
ユニーク……つまり「独特」? 「唯一」かもしれないが、どちらにせよ特殊なクエストであることは間違いなさそうだ。
若干困惑している俺に、ユーゴさんが話しかけてくる。
「……俺はこの情報を秘匿している。お前も、例えクランのメンバーであろうと口外するな」
「わ、わかりました」
「あはは! まあ、新しい復讐者サンが来てくれて、私的にはありがたいじゃん! ユーゴはもう卒業生だし」
「ふん、これ以降人が来るかは知らんが。……まあいい、俺は帰る」
そう言って、ユーゴさんは羽のエフェクトと共に消えた。
[†暗黒の黒炎剣士ユーゴ†からフレンドリクエストが届いています]
……受けた方がいいのかな、これ。
まあ困るものでもないだろうし、フレンドになっておくか。
フレンドリクエストを受理し、後に残ったのは、ユニーククエストを開始するか否かのウインドウのみ。
「で、どうするの? 受けるか受けないか、とっとと決めるといいじゃん」
「あー……じゃあ受けます。気になるし」
「そうこなくっちゃじゃん!」
[ユニーククエスト 冥き門を護る者を開始します]という表示が現れる。
ユニーククエストがどんなものなのか現状わからないが、とにかくやってみるしかない。
「よーし、じゃあ早速始めよーじゃん」
「何をするんです?」
「敬語じゃなくていいじゃん! 代わりに先生って呼んでほしいけど。まあ何をするかっていうと、復讐者のトレーニングじゃん?」
「トレーニング?」
「ま、説明しても始まらないじゃん。とりあえず適正見るから、一度戦ってみるじゃん!」
先生が足で地面をトントンと叩くと、黒い影のようなものが立体化していき、人の形を作り上げた。
手には一般的な大きさの剣を持っている。
「とりあえずこの影と戦ってみるじゃん。頃合いを見て止めるから、全力で戦ってみるじゃん!」
その言葉と共に、影は揺れるように剣を構えた。
頃合いを見て止める……ということは、勝てないことを前提としたデザインなのだろうか。
別に倒してしまっても構わんのだろう、とは流石に言えないが、出来るところまではやってみよう。
刀を抜き、構える。
慎重に相手の行動を——
「……ん?」
——ゆらりと剣が揺れ、空気が歪んだ。
「ちょっ!?」
咄嗟に《グライドステップ》で斜め後ろに退いた俺の頬を掠め、透明の斬撃は背後に飛んで行く。
……あまりに速すぎるし、予備動作が小さすぎる。
ジェネラルゾンビ第二形態の飛ぶ斬撃も脅威だったがこれはその比ではない。速いだけでもキツイのに、その上ほとんど目に見えないとは……。
「あれを避けるとは、なかなかやるじゃん?」
「そりゃどーも……って危ねえ!」
影の持つ剣が揺れ、透明の刃が連続で振るわれる。
辛うじて避けてはいるが、スタミナがマズい。
グライドステップを温存するが……かなり難しい。
狙って避けにくいところに振るわれる刃が辛すぎる。
「くっ……キッツイなぁこれ!」
胸の辺りに迫る斬撃を身体を逸らして回避し、ブリッジの姿勢で《グライドステップ》を発動する。
最近気づいたのだが、グライドステップは発動時に地面に触れている部分が滑るようになるため、例えばうつ伏せの状態でも発動すれば滑ることが可能だ。
実際にやってみたら効果が切れた瞬間に顔を削られたので二度とやらないが、それはそれとして応用は効く。
ブリッジの状態で滑る姿を客観的にみるとあるホラー映画を思い出してしまいそうだが、追撃を躱すことはできた。
効果が切れるタイミングに合わせて足を上げ、手に力を込めて後ろに回転し、上手く立ち上がる。
「へー、奇妙な動き方するじゃん!」
「それほどでもない!」
まあ曲芸じみた回避だというのは自覚しているが。
回避に関しては過去に友人が学校の課題かなんかで作った「不規則な攻撃をただひたすらに避け続けるだけのゲーム」で鍛えているので、なんだかんだで自信があったりする。
縦にうなる斬撃を短く回避し、続く足元狙いの二発を跳んで回避する。
空中への攻撃は《マナステージング》で無理やり体制を変えてギリギリで躱し、着地直後に左手を地面に添えた前傾姿勢で《グライドステップ》の加速を発動。
そのまま影へと接近して行く。
「よし……よし!! 来てるぞ!」
テンションが上がってきたのと同時にパフォーマンスも上がっていくのを感じる。
やっぱゲームは楽しんでこそだな!
「ようやく射程距離範囲内に入ったぜ……!」
顔がないので察せないが、影は慌てたように斬撃を乱発する。
しかし、剣を振るってから到達までのタイムラグがない分、透明の刃を相手にするのであれば近距離戦の方が幾分か楽だ。
斬りはらうような攻撃を軽く跳び避け、刀の柄に手を掛ける。
「《居合……一閃》!!」
鞘から放たれた聖鉄の刀が、白く光るようなエフェクトと共に空間を薙ぎ、影の首を捉える。
ビッ、と空を斬る音が響き、影は霧のように分散した。
「おー」
ゲートキーパー先生がパチパチと手を叩く。
とりあえず、いい結果が残せたようだ。
息を吐き、刀を鞘に収め——
「あ、まだ終わってないじゃん?」
「えっ」
周囲を見回すと、俺を取り囲むように五体に増えた影がいた。
「えっ」
五つの剣はほぼ同時に振るわれ、斬撃が迫る。
「いやこれは流石に無理ぐぼぁ」
HPを全損し、視界が遠ざかって行く。
……ちょっと流石に理不尽すぎでは?




