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Part14 塵に還るまでがモンスターです

改行の頻度を悩んでいます




「よし、完全に……では無いけど実戦に耐え得るレベルになった気がする」



 自動攻撃機能付きのマネキン相手に延々とグライドステップを繰り返すことゲーム内時間で2日。

 間に給水タイム(ログアウト)こそ挟んだものの、ログイン中ずっと練習をした結果ある程度使いこなすことが出来るようになった。

 速度の調節が可能だということにもっと早くから気付けていれば良かったのだが、過ぎたことを悔いても仕方ない。


 特殊回避系の中では獲得に必要なスキルポイントが高い《グライドステップ》を習得し、その他にも少しスキルを取って、今のスキルはこのような感じになっている。



——————


《一閃Ⅲ》

《鎧貫Ⅱ》

《兜割Ⅱ》

《居合》

《時雨》

《飛燕斬》

《燕返し》

《マナステージング》

《構え》

《流風》

《ジャンプアシスト》

《グライドステップ》


——————



 スキル名の後にⅡとかⅢとか付いてるのは熟練度をMAXまで上げることでグレードが上がったものだ。

 構えや流風なども熟練度は上がりきっているのだが、Ⅱにするには中級職につく必要があるらしい。


 マナステージングというスキルは、足の裏に魔力の塊を作って一時的な足場とする——つまり実質二段ジャンプというわけなのだが、俺の[魔法攻撃力]ではかなりのリキャストを挟まないと使えないようで、現状はそこまで戦闘に絡ませていけるものではなかった。

 現状[魔法攻撃力]を上げる手段はこれ以外にないので隙あらば二段ジャンプしていこう。



「ありがとうござ…………」



 スキルセンターを出る時になんとなく二段ジャンプをしたら店員に変な人を見る目で見られたのでなるべくフィールドでやります。



 さて、今日はリンネと次の街へ向かうという約束をしている。

 デュオクレインから向かうことのできる街は四つ。

 トロワトリア、カトルフィア、ペンテローネ、ゼクスラだ。

 もうすでに話し合って決めたのだが、今回はペンテローネに向かうことになっている。

 ペンテローネは水の街として有名らしく、リンネが興味を示したのだ。



「あっ、ナツレン。こっちですわよ!」



 往来に、リンネのよく通る声が響き渡る。

 リアルでの声の出し方が再現されるというのは地味にすごい気がする。ボイスチャットのように実際に声を出してるわけではないし。


 

「よっ。待ったか?」


「いえ、わたくしも着いたばかりですの。そうだ、わたくし姫になりましたのよ!」



 そう言って、その場でくるりと一回転するリンネ。

 


「カエル倒した時と変わってないな」


「見た目上の変化はありませんし、仕方ありませんわ」


「だろうな。まあ、前と同じくバフよろしくな」


「勿論ですわ!さあ、早速ペンテローネに向かいましょう!」




————————




 暗く冷たい岩肌に、揺れる水面が映し出される。

 陽の光の届かない場所にあって、しかし少し先まで見通せるほどの灯りに満たされた洞窟内を、俺たちは歩いている。

 水神の洞窟——それがこのダンジョンの名前だ。



「なんというか……とても幻想的ですわね」


「ファンタジーはファンタジーでも、若干毛色が違うよな」



 NPCによると、水底に張り付いた藻のような魔物が強い光を放っているらしい。

 魔力に満ちた水に棲み、その魔力を吸収して生きる魔物であるそれは、個体の強さを輝きで判断することができるのだとか。

 つまりこの洞窟の藻たちは相当強いということなのだが、刺激しなければ大人しいとのことなので問題はないだろう。

 グライドステップをミスって水没した時が怖いが……まあ、その時はその時だ。愉快な水死体にならないように気をつけていこう。


 さて、ダンジョンに入り少ししたところで、不意につんざくような高い音が洞窟内に反響した。



「最初の敵ですわね!」


「これはまあ、多分コウモリだな」



 洞窟の中で甲高い鳴き声といえばコウモリだろう。

 すぐに、バッサバッサと音を立てて大きなコウモリが俺たちの前に躍り出てきた。

 


「なんか……でかくありませんこと?」


「確かにデカイけど、リアルにもこのくらいデカイのはいるらしいぞ」


「ひえ……」



 東南アジアの方のコウモリは普通に1メートル超えてくるらしいからな。

 それはともかく、刀を抜いて構える。

 


「何属性が有効なのでしょう……」


「そうだな……光属性とかあるか?」


「それなら先ほど覚えましたの!《属性号令:光(オーダー・ライト)》!」



 姫になったことで付与(エンチャント)から号令(オーダー)へと変化したバフを受け、構えた刀が輝きを放つ。

 コウモリがその光に一瞬怯んだ。当然、その隙は見逃さない。

 グライドステップを利用して距離を詰め、上段から一気に刀を振り下ろす。

 《兜割》の発動を示すエフェクトと共に、コウモリは一段と高く鳴いた。


 コウモリは洞窟という暗所に棲むため光に弱いというのは他のゲームでの話なのだが、VOX-0においても同じであるようだ。


 《兜割》の効果で物理防御力低下が付与されたのを確認しつつ、すぐさま刀を翻す。



「もう一撃!」



 強く切り上げられた刀が先ほどとは逆の方向にコウモリを切り裂く。一撃目よりも大きいダメージを与えられたことが、感触という形で伝わってきた。

 一度目の斬撃の後すぐに逆方向に斬ることによって発動する《燕返し》は、後隙が若干大きいがその分与えられるダメージも大きい。

 攻撃役が俺一人しかいないこの状況では積極的に《燕返し》を狙って行くことが重要だ。


 弱点属性で二度斬られたコウモリはその場で旋回し、その口を大きく開いて俺に牙を剥いた。

 噛み付き攻撃だが、攻撃範囲がわかりやすいので正直そこまで脅威ではない。《グライドステップ》は使わず軽く後ろに跳ねて攻撃を躱——



「って三連続かよ!」



 瞬間的に《グライドステップ》を発動、なんとか攻撃は回避したものの、バランスを崩し転倒してしまった。


 

「大丈夫ですの!?」


「問題ない!」



 噛み付きの間隔が短すぎる。調子が良くて若干忘れてしまっていたが、このゲーム、攻撃に関してはかなりエゲツない。

 知らない攻撃は大袈裟に回避するくらいが丁度いいのだ。


 コウモリの追撃を回避しつつ、リンネに攻撃バフをかけてもらう。

 一度距離を置いて《飛燕斬》で斬撃を飛ばし、コウモリが回避行動を取ったのを見てから一気に《グライドステップ》で距離を詰め、攻撃を叩き込む。



「しぶといなコイツ……!」



 雑魚の体力がいやに多い。

 その後もスキルを数発入れ、ようやくコウモリは力無く地面に横たわった。


 

「ふう……しんどいなこれ」


「お疲れ様ですわ」



 倒れ伏すコウモリを一瞥して、刀を鞘に納める。

 …………ん?



「コウモリ、消えないな」


「何故でしょうか?」



 不思議に思ってもう一度刀を抜いた瞬間、コウモリは今までにない程の声量で鳴き声を上げた。

 断末魔に似たその叫びは、洞窟内にこだまする。



「くそッ、やられた!」


「なんですの!?」


「多分これ、仲間を呼ばれたんだと思う!」



 カースゴブリンで得た経験をまるで活かせていなかった。雑魚相手でも最後まで気を抜けないな……。


 急いでトドメを刺し、コウモリが消滅なったのを確認したところで、予想通りコウモリの羽ばたく音が近づいてくる。


 洞窟の奥から現れたのは、三体に増えたコウモリだった。


 ……きっついなこれ。

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