儂、町へ行く
町の入り口にある看板には、ホタルが期待したとおり、
『ノズリーデ
モルテテ』
と、書かれていた。
(ほんとに町の名前が書かれてるー!!)
それを見たホタルは足を止め、きららきと目を輝かせる。
「どうしたの、ホタルさん。足とか腰、痛くなった?」
「どっちも大丈夫なんだが……あの、リュエルさん。ちょっと頼みがあるんだが……」
ホタルはもじもじしながら、リュエルに願いを告げる。
「うんうん、ふんふん……いいいけど……こう?」
リュエルは看板の前に立つと、ホタルに頼まれたとおり、ニコッと笑って語りかけた。
「ようこそ、旅の方。ここはモルテテの町です」
「ふぉぉぉぉぉぉぉ~~~~~っ!!」
「えっ……なんで、泣きながら、あたしのこと拝んでるの?」
「男には叶えたい夢がたくさんあるからじゃ~……まさか、こんな形で叶うとは……マジ尊い~……」
「なんだかよくわからないけど、満足してもらえたなら良かった。じゃあ、あたしのうちに行こう」
リュエルはまたホタルの手を握って、ゆっくりと歩き出した。
丘から町に続く道は徐々に太くなり、石畳となる。
やがて、左右に三階建ての建物が連なっているのが見え始めた。
建物の入り口や窓の下にいくつもの看板がぶら下がっている。
(この道は大通りで、左右の建物はオフィスビルのようなものかのぅ……)
リュエルに手を引かれながら、ホタルは好奇心旺盛にきょろきょろと辺りを見回す。
(なんか妙じゃのぅ。小さいが立派な建物がたくさんあるのに、なんというか、町が冷めているというか……活気がない?)
不思議に思って歩いていると、正面から低い音が聞こえてきた。
(この音は地響き……? 異世界でも地震があるのか?)
地震大国と呼ばれる国で暮らしていた習性で、ホタルは身構える。
音はやがて土埃と一塊の影を引き連れて大きさを増してきた。
ホタルは音の発生源をじっと見る。
影は大勢の人の塊……鬼のような形相で駆けてくる女達だった。
(え、ええ? なんであの人達、怒ってるっぽいんじゃ? 包丁とかめん棒とかフライパン持ってるんじゃ!?)
土埃と共に、手に得物を持った怒れる女達はどんどん近づいてくる。
それはリュエルとホタルを目指していた。
(なっ、なんじゃああああ!!!???)
眉を吊り上げた女達は、あっという間にホタルとリュエルを取り囲んだ。




