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儂、リードされるがまま

「ある晴れた昼下がり……なのか? 町へ続く道……」


「なあに、それ?」


「儂の国の歌の歌詞というか……そういえば、ここはなんという国じゃ?」


「ノズリーデ王国。あたし達が向かっているのはね、モルテテって町なの」


 『ノズリーデ』も『モルテテ』も、ホタルには聞き馴染みのない名前だった。


(やはり、異世界なのかのぅ……)


 異世界という言葉で、ホタルは孫の健司を思い出す。「転○ラ」や「盾の○者」を見ては、興奮していた中二の孫を。


「うう……健司……」


(お前の行きたがっていた異世界に、儂が来てしまうとはのぅ……)


「はい」


「ん? なんじゃ、この手は」


「お爺さん、歩くのゆっくりだから疲れたのかなって。だから、手を引いてあげる」


 少女は半ば強引にホタルの手を掴むと、そろそろと歩くホタルの歩調に合わせ、先導し始めた。


 ホタルの歩調がゆっくりなのは、疲れた為ではない。別の理由があった。


(ゆっくり動かんと、借りた服を駄目にしてしまいそうでなぁ……)


 だから、ホタルはできるだけ静かにしずしずと内股で歩いていた。それが少女には疲れて見えたようだ。


(老人が疲れやすいのを知っているということは、この子は老人と暮らしているのかな?)


 そういえば、これは祖父の服と言っていたことをホタルは思い出す。


(この子の祖父が貸してくれたのを持ってきてくれたのかな。優しい子じゃ……)


 そのようなことを考えながら歩いていて、ホタルは掌の中の少女の手がとても小さいことに今さら気づいた。


(ちっちゃい手じゃ。大柄になった儂の胸辺りの背ということは、五十センチほど違うのかの……ということは、この子は百四十センチくらいか。そりゃ小さくて当然か)


 そんな小さな子に無体を働こうとするとは……と、暴漢達のことを思い出し、ホタルは口をへの字に曲げる。


(こうして、孫くらいの子と手を繋ぐなんて、久し振りだな。最後は、確か……健司が五、六歳くらいちだったかな。小学校一年生になったら、もう一人で大丈夫とか言って、横断歩道も手を繋がずに歩くようになってしまったから……)


 そのまま、二人はホタルのペースで歩き続けた。


 丘の上からは小さな規模に見えた町は、近くなればなるほど、ホタルの第一印象より大きかった。


(建物は大体が平屋。高くても三階建てか。なんだか、景観の為に高さ制限のある町にイメージが近いな)


 道の先に町の入り口があった。

 その脇には、地面に刺さった杭に看板らしきものが打ち付けられているのが見える。


(ドラ○エだと町の名前が書いてあるやつだ)


 と思い、ホタルは胸をドキドキさせる。


「はい、着いたよー。あたしの家はこの町の商店街の中にあるパン屋さんなの。そこまで頑張ってね……えっと……お爺さん、自分の名前、覚えてる?」


「儂の名はホタル。お嬢ちゃんの名は聞いてもいいもんかな?」


「うん。リュエル。リュエル・サエラっていうの。忘れても遠慮しないで聞いてね。何回だって答えるから」


 少女――リュエルはホタルを見上げ、優しく笑った。


 ホタルも笑い返す。

 しかし、頭の中には疑問が浮かんでいた。


(儂、そんなに忘れっぽく見えるのかのぅ……)

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