儂、文明人に一歩近づいた……? のか?
そろそろサブタイトルにネタバレ的なものを書かざるを得ない状態になってきた気がするので、次辺りからひとまず「儂、」的なタイトルをやめるかもです。
丘に続くうねうねとした道を駆け上ってくる人影を、ホタルはじっと見つめる。
視力や視野に問題はない。
その辺りもキャラメイク時に設定が可能だったので、サバンナに住むマサイ族並みにしていた。
その良く見える目が驚きで大きくなる。
「さっき、暴漢に襲われていた女の子じゃないか!!」
ホタルは慌てて茂みの陰にしゃがみ込み、身を小さくする。
(なんで戻って来たんじゃ? さては、大人を呼んだ? いや、あの子一人じゃった。というか、暴漢は逃げたが、まだこの辺りに潜んでいるかもしれない。だとしたら、あの子がまた狙われるかも……というか……)
「なんで一人で戻ってきたんじゃ~~~!」
「お爺さんに、これ持ってきたの」
「ふぉぉぉぉぉぉわあああああああぁぁぁ!!!!!?????」
頭上から可愛らしい声が降ってきた。
口から心臓が出そうなほど驚いたホタルは、甘く良い声で絹を引き裂く悲鳴を上げた。
「さっきも思ったけど、お爺さん、すっごく良い声ね」
少し悪戯っぽく笑うような声色に、ホタルはそっと頭上を見上げる。
そこには間違いなく、さっきの少女がいた。
太陽に煌めく長く真っ直ぐなツインテールは、少し赤みの強いストロベリーブロンド。
零れ落ちそうなほど大きな瞳は濃い蜂蜜色。
健康的な丸い頬は駆けてきた為に赤い。白桃の薄皮を想起させるような紅に染まっていた。
「持ってきたって……何を? 儂を縛る縄か?」
「違うよ、これっ」
少女が差し出す両手には、少し古びた男物の服と、木製のサンダルがあった。
「あたしの祖父のだけど。じいじも躰が大きかったから、多分入ると思うよ」
「いいのかい……?」
「うん。だって、その格好だと夜は寒くてつらいと思うから。はい」
戸惑うホタルに少女は服を押しつける。
「ありがとう……じゃあ、遠慮なく……」
ホタルは服を受け取ると、深く頭を下げる。
そのまま立ち上がり、躰をくの次に曲げたまま、手近な太い木の陰に身を隠した。
(さっき、怖い目にあったばかりだというのに、一人で服を持ってきてくれるなんて……優しいけど、ちょっと心配……)
などと思いつつ、ホタルは白い布を広げた。
それは開襟タイプのシャツだった。
少女が言うとおり、確かに大きい。
ベージュ色のズボンもかなり足が長かった。
木製のサンダルは、足の甲の部分に布のアーチがあるタイプ……ホタルが元いた世界では、便所スリッパと呼ばれる類いに近いものだった。
新品と思しきトランクスのような下着まで揃っている。
(本当に大きいな。これなら着れるかも……)
ありがたさにまた涙して、ホタルはシャツの袖に腕を通した。
「……ん……あ、あれ? これって……あれ……あれ?」




