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儂、やってしまった、色々

 茂みを越えた向こうには、案の定の光景が広がっていた。


 見るからにならず者といった風情(ふぜい)の男が四人。

 全員、地面に膝をついている。

 その中央には、まだ年端(としは)のいかない少女が一人、仰向けにされていた。


 男の一人は少女の顎を手で固定し、股ぐらを近づけている。

 二人は、それぞれ左右の細い手を乱暴に掴んでいた。

 最後の一人は少女の足の間に割り込み、膝を掴んでいる。


(輪姦かーーーーーーい!!)


 その光景を見て、ホタルの頭に一気に血が上った。

 猛スピードで脳が動き、最適解をはじき出す。

 時間にして0.01秒。



『面倒な喧嘩は、奇声を上げて暴れりゃ問題ねえよ』



 それは、学生時代からの悪友である高森の言葉だった。

 高森は若い頃、所謂(いわゆる)、不良と呼ばれていた。

 中学時代は特に酷く、校内で暴れるだけ暴れ、隣県の超田舎の学校に無理に転校させられるほどだった。


 そんな男からのアドバイス。


 適切以外の何がある。


 ホタルに一切の迷いはなかった。


「きえあああああああああああああああああ!!!!」


 甘く良く通るを裏返し、ホタルは甲高く叫んだ。


 奇声を上げただけでなく、肢体も遮二無二動かした。


 広げた両腕は肩の高さに上げ、肘を直角に曲げた。

 手首も直角に曲げた。

 足もがっつりと開き、腰を落とす。四股(しこ)の形だ。

 そして、動かした。

 腕を素早く。

 高速で尻を。


「キエエエエアアアアアアアアア!!!!」


 初め、男達は呆然とホタルを見つめていたが、ホタルの声が一オクターブアップすると、徐々に恐怖を顔に浮かべ始めた。


 カッと目を見開き、途切れることなく甲高い奇声を上げ続け、ホタルは踊る。

 高速で踊る。踊り続ける。

 ペチペチペチペチと太腿に何かが当たる音をリズミカルに響かせて。

 8ビートから、16ビート、32ビート、64ビートへ。


 そのまま、じり、じり、と前進するホタル。

 我知らず立ち上がり、同じ速度で後退する男達。


「なっ、なんだ、こいつ~~~!!」

「ひ~~~!!」

「うわぁぁぁぁぁぁ!!」

「やめっ、ちょっ、ひっ、うわぁぁぁぁ!!」


 限界突破。

 ホタルの奇矯(ききょう)に恐れを成した男達は、大慌てで逃げ去った。


「…………よしっ!!」


 爽やかな達成感を噛みしめ、ホタルは額の汗を手の甲で拭った。


 そして……気づいてしまった。


 自分が全裸で奇声を発し、珍妙なダンスを踊ったことを。


 威嚇の為とはいえ、激しく腰を左右に揺らしていたことを。


 その揺れに合わせ、ペチンペチンと音がしていたことを。


 それが局部と太腿がぶつかり合う音であることを。


 恐る恐る、ホタルは自分の股間を見る。

 キャラメイク時、そこのサイズも調整が可能だった。

 大きめに造ってしまった。


(見栄張ったんじゃああぁぁぁ……)


 見栄を張って造った(きょ)(こん)は、鎮静状態でぶら下がっていた。

 少なくとも臨戦状態ではないことには安堵した。


 問題は、地面に在る。


 そこには、声を上げることもできないでいる少女が、そのままそこにへたり込んでいた。

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