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儂、初めてのキャラメイク

(ここはどこだ)


 無限に広がる漆黒に、目覚めたばかりの”  ”は戸惑い、おろおろと周囲を見回した。


(わし)は、なんでこんなところにいる?)


 ”  ”は目を閉じ、記憶をたぐる。


(確か、N○Kの朝ドラを見ていて……愚かではない、○樹お祖父ちゃんは愚かではないともらい泣きをして、そして……)


 ――そして。


(そこから記憶がない。どういうことだ? もしかしたら、これは死後の世界というものか?)


 そう思った瞬間だった。

 ”  ”の目の前に映像が現れた。

 長方形のそれは、テレビやパソコンのディスプレイを思わせた。

 画面の左側に人体のシルエット。

 右側には円グラフ。その下にはこう書かれている。


(CHARACTER MAKING……キャラクターメイキング? まさか、ゲームの? こんなタイプの作成画面のゲーム、あったかのぅ?)


 またも、”  ”は記憶をたぐる。


(そういえば、孫の健司(けんじ)がこんなタイプのをスマホで何やらちみちみといじっていたな。確か、円グラフをこう……)


 ”  ”は円グラフに指を添えた。

 指の腹に硬く滑る感触を覚えた。

 それはスマホのディスプレイを想起させた。

 スマホを操作する感覚で、円グラフの中央から端に向かい、すっと指を滑らせる。

 あっという間に指は円グラフの端を越え、ぐんぐんと伸びていく。


(なんだ、これは?)


 ”  ”が指を滑らせると、円グラフの右下にある数値の一部が減少した。

 それを見た”  ”は目を(みは)る。


 【9950/10000】


(んんん? 円グラフに振り分けできる上限数値は百なのに、一万も振り分けられる数値があるじゃないか……どういうことだ?)


 ”  ”は円グラフから指を離すと、今度は左の人体のシルエットを見る。

 向かって右の太腿に指の腹を添え、外側に伸ばしてみた。


(おおっ!?)


 すると、”  ”の左太腿が、ぐっと逞しくなった。

 右側に変化はない。


(筋肉大移動……!?)


 ”  ”は、恐る恐る指を戻す。それに合わせて、画面の太腿も元に戻った。


(このキャラクターメイキングとは、儂の(からだ)をメイキングするということのようだが……)


 画面の太腿に添えた指をうにうにと左右に揺らす手遊びをしながら、”  ”は、ふむふむと頷く。


(どうやら、自分の好きな体格にできるようだな……ここがどこか、自分がどうなったかわからんが、これは理想の躰になれるチャンスでは?)


 ”  ”は思いを巡らせる。


(どんな躰になるのがいいかな……○樹お祖父ちゃんもかっこいいが、円グラフには魔力という項目がある。ガ○ダルフのようなスタイルも捨てがたい。しかし、筋力という項目もあるということは、ジョセ○・ジョー○ターのようなスタイルもアリではないか? 若い頃から禄な運動もせず過ごしていたから、筋肉はガタ落ちだし、腰痛はあるし、膝も痛かった……だから……)


 ――こんな状態であるからこそ。


(あれもこれも理想を詰め込んでみるとしよう)


 そう思ってからどれだけの時間が過ぎたか”  ”にはわからない。

 長かったのか、短かったのか……とにかく、手間だけはかかった。

 しかし、長く画面を見ていても疲れぬ目。ずっと動かし続けていても痛まぬ指。

 ”  ”は夢中になって己の躰をメイキングした。


 そうして、画面から指を離す。


(こんなところかな)


 ”  ”は満足そうに言って、右上の隅にある決定ボタンにふれた。

 画面が変化する。


 【新規ユーザーはお名前を入力ください】


 その説明の下に、名前を入れるボックスが表示された。


(名前か……本名を入れるか? だが、ここがどこで何がどうなっているかわからん。軽々しく入れるのは危険かもしれん。本名をもじるとするか……)


 ”  ”は、名前を入れるボックスにふれ、入力した。


 本名である『(ケイ)』をもじった、『ホタル』という名を。


(よし……儂の名はホタルだ!)


 名前を入力し、決定ボタンを押すと、無限に広がる闇が徐々にはれていった。

 たまらず、ぎゅっと強く目を閉じた”ホタル”は、真っ白な光に包まれた。

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