乙女な彼氏の相川くん
「…みやびちゃん…今日も、可愛いね…!」
「う、うん、ありがとう…」
こちらはクラスメイトであり、彼氏くんでもある相川くん。半年前に付き合い始めた。彼はなぜか私に対してだけ乙女だ。本来なら私が恋する乙女なはずなのだが、相川くんがあまりにも乙女なので、私が彼氏のようになっている気がする。
今は登校中で、教室に向かって学校の廊下を歩いている。周りに生徒は結構いる。多分この中に相川くんのファンもいるだろう。彼の容姿はかなり整っており、バスケ部のキャプテンということもあり、学校で絶大な人気を誇っている。
だから私が相川くんに告白された時はとても信じられなくて、なにかの罰ゲームでやらされてるんじゃないかって疑った。
ふと思い出したが、告白の時の相川くんもなかなか乙女だった。
そんな人気者の彼と私が付き合うことになると、何であんな奴と!?と不満を持ったファンが続出。
今のところ、嫌がらせなようなものは無いが、ビクビクしながら毎日過ごしている。恋のことになると女子は怖い…。
しかし、私も疑問なのだ。カースト上位とは程遠い平凡な私はイケメンとフラグを建てた覚えは無い…。いや、そんな機会すら無かったはず…。
私たちが廊下を歩いていると、相変わらずファンの女の子は相川くんを見て黄色い歓声を上げ、頰を赤らめている。
あとは私に敵意を持った視線が送られてくるのを感じる…。
しかし相川くんはそれに気付かずに通常運転だった。
…鈍感だな…。
「…それであのさ、えっと、今日みやびちゃんにお弁当作ってきたんだ…!…食べてくれないかな??」
「え!?私に!?」
…マジで彼女か!?それって普通は私の役目だよね!?
「その、俺とみやびちゃんは将来…ふ、夫婦になるわけで…今のうちからみやびちゃんに相応しい夫になれるようにしなきゃと思って…」
手をモジモジとさせ、顔を赤らめる様は顔立ちが整ってることもあり女子より可愛い。
でも夫婦になった時のことを考えるのはまだ早すぎると思うの…。
いや、別れるつもりはないけど。私もちゃんと好きだし。
「…じゃあ、有り難く頂こうかな…?」
「…本当!?良かった〜!みやびちゃんのことを考えながら作った俺の愛情弁当をみやびちゃんに食べてもらえるなんて…!」
相川くんは頰を染めて胸の前で両手を絡め、うっとりしている。私以外にはこんなんじゃないんだけどな…。
私が複雑な感情で相川くんを見つめていると、教室に辿り着いた。
教室に入ると、私の幼馴染の木之本瑛太が挨拶をして来た。
「おーっす」
「おはよー、昨日は勉強教えてくれてありがとう」
「別に気にすんなよ、幼馴染の特権ってやつだ」
昨日は瑛太の家で勉強を教えてもらっていた。実は1週間後に数学のテストがあるのだ。私は数学が苦手なため、頭の良い瑛太にお世話になった。
「……みやびちゃん、俺、聞いてないんだけど」
私の隣から抑揚のない低い声が聞こえてきた。
あ、そういえば言ってなかった…。
やばい…。相川くんは女々しい。「私と瑛太は幼馴染だから下心はどちらにも無い」と言っても信じず、瑛太くんを敵視している。
…とりあえず事情を話そう。
「あ、えーと、1週間後に数学のテストあるじゃん?瑛太は数学得意だし、教えてもらおうと思ったの!」
「なんで木之本なの!?俺を頼れば良かったじゃん!!」
「いや、昨日は相川くん部活あったし、バスケ部ってテストの日ギリギリまであるし、頼むのも悪いかなーって…?」
私が話すと相川くんは涙目になった。
いや、可愛いな、おい。
「うぅ、みやびちゃんがそこまで俺のことを考えてくれていたなんて…!俺、みやびちゃんのためなら部活を休んででも教えるよ!だからこれからは木之本を頼らず俺だけを頼って!」
相川くんは私の両手を握りしめ、前のめりになり、顔を近づける。
そんな相川くんに、瑛太は苦笑いだ。
「…俺とみやびには何もないって言ってるのにな。相変わらずだな相川…」
「みやびちゃんには俺しかいないもんね?俺がこんなに好きなんだもん、みやびちゃんだって俺のこと大好きだよね?」
脅しに近い…!無言の圧力…!
「う、うん、そうだね…その、言わなくてごめんね…?」
私が相川くんの頭を撫でると相川くんは嬉しそうに口元を緩めて頰を染める。
相川くんに、彼氏にされたら喜ぶことをするといつもめちゃくちゃ嬉しそうにする。
瑛太は、乙女やぁ…と私たちを面白そうに眺めている。
「…じゃあ、そろそろホームルームも始まるし、座ろっか」
私がそう言うと、相川くんは寂しそうにする。
私と相川くんの席は離れていて、休み時間の度に相川くんは私のところへ来る。
「…うん、また後でね…」
相川くんはしぶしぶ自分の席へ向かった。
私も自分の席へ向かう。
これが私と相川くんの日常の一部であった…。
シリーズ連載になるかも?




