表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
槍の乙女と螺旋の剣  作者: トト
第一部 「王国篇」
28/42

第二十七話 後の祭り


 ベルテーン祝祭当日。

 大通りを行く熊成たちのパレードに、街は歓声で溢れかえっていた。

 筋骨隆々な熊成の兵士たちは寸分たがわぬ隊列を組み、その先頭では逞しく巨大な軍馬が豪奢な戦車を牽いている。

 戦車からは凛々しい鎧姿の熊成の女王が、観衆に手を振っていた。

 色とりどりの花びらが紙吹雪と共に街に降り注ぎ、春の祝祭は、まさに盛りを迎えようとしている。

 その喧騒の中を、シックザールが旋風のように裏路地を駆け抜けていく。

 手には小さな封筒が握りしめられていた。

 差出人の名は彼の幼馴染だ。

 シックザールは焦りと怒りを滲ませた顔で唸る。


「あの、馬鹿たれが……!!」




 街がパレードで賑わっているまさにその時、城の王座の間では恐ろしいほどの静寂がその場を支配していた。

 熊成を迎えるための衣装に身を包んだティターニアが、跪く師団長を王座から見下ろして静かな笑みを湛えている。


「では城の中にエリアスはいないのね」

「はい。隈なく捜しましたが城内にお姿はありません。ただいまシャンテらが街を捜索中です」

「ふふ、リヒトったらお馬鹿さん」


 ティターニアが笑う。

 鈴のように澄んだ声だが、その目は笑っていない。

 兵士たちが思わず肩をびくつかせた。

 リヒトも姿勢こそ崩さないものの、米神に冷や汗が伝っている。

 女王の冷めた声が呟いた。


「いつまでも街に留まるほど、あれは間抜けじゃないわ」




 同じ頃、カメリア姫は窓の外を見ながらフェアギスの報告に耳を傾けていた。


「城の兵士が総出で捜索しましたが、エリアス様のお姿は発見できませんでした。……そして、あいつも……」


 下を向いて唇を噛むフェアギスの前に、音もなくカメリア姫が立つ。

 姫の泣き腫らした目元が痛々しい。

 ライラが去った後、一晩中泣いていたに違いない。

 フェアギスは姫の顔をそれ以上見ていられず、思わず下を向く。

 次の瞬間、姫の平手が飛んでフェアギスは床に崩れ落ちた。

 姫は無言で馬乗りになり、再び手を振り上げる。

 蹲る身体に、憑りつかれたかのように何度も手を振り下ろす。

 フェアギスはその間一切抵抗することはなかった。

 食いしばった口元からぱたぱたと赤い血が零れて散っていった。




 王座の間で女王が一喝する。


「捜しなさい」


 ティターニアは穏やかな女王だった。

 決して声を荒げることはなく、春風のような母性でこの国を包み込んでいたのだ。


「草の根を分けてでも、必ず見つけ出すのです」


 そのティターニアが怒っている。

 凍えそうなほど冷たい声で命じられて、兵士たちはただ慄くことしか出来ない。

 ティターニアが王座から立ち上がる。

 そして牙をむき出しにすると凶暴な笑みを浮かべた。

 城門の方向を指さし、耳を劈くような高い笑い声で叫ぶ。

 

「攫われた我が国の王子を、そして裏切り者のライラを!!」





 ここまでお読みいただき本当にありがとうございます。

 おかげさまで、第一部「王国篇」をなんとか終わらせることが出来ました。

 今後はエリアス視点での番外編、第二部「逃避行篇」の掲載を予定しております。

 引き続きおつきあいいただけると大変嬉しいです。

 本当にありがとうございました。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ