幼児退行?
連続とーこう!!!
あれから3年。
俺はこの佐田家に生を授かり、すくすくと育った。
名前は千秋。
俺的には女性っぽいと思うが、男女どちらが生まれてきても良いように考えていたよう。
うむ。
やはり新しく命として生まれたんだから、いつまでもジジ臭いしゃべり方だとおかしいと思われるからの。
とりあえず一人称も俺に戻すことにした。
まだちょいちょいジジ臭さが出るが、そこは慣れ。追い追い直す。
ふと、思考を現実に戻すと、
「はーい、ちーちゃん?あーん」
母さんが俺の口元にカレーを持って来ていたので、パクつく。
いや、一応もうスプーン使えるんだがな。
というか、体にもある程度慣れてきたし、なんなら一人で風呂も入れるぞ?
まぁ、母さんも美人だし悪い気はせんけど。
今日は日曜だし、家族が全員家にいる。
平日はいつも仕事で遅い父さんは、俺が2歳の時に生まれた妹の小夏とじゃれあっていて、母さんは「はい、あーん」…これだ。
母さんは何故か俺に激甘なのだ。
一番最初の子だし分からんでもないが、理由はそれだけではない。
俺の容姿はどちらかと言うと女の子寄りなのだが、幼児だからとかそんなレベルではない。
俺も初めて鏡を見たときはビックリしたぐらいだ。
人と会うたびにも勘違いされるし。
しかも、最近の母さんに至ってはたまに女の子物の服を着せてくるくらいなのだ。
俗に言う男の娘ってやつだの。
正直、さすがにこれにはウンザリしている…
ともかく。
母さんがちょっと変わっているって事を抜けば、ごく平凡な家庭と言うことだ。
とはいえ、前世ですでに平凡は味わい終わったからの。
平凡はここまで。
こっからは小学生に上がるまでに野球漬けにする。
もちろん、小学校では野球をやるつもりだし、その為に身体作りもって意味合いでもあるが。
そこだけではない。
知識だ。徹底的に野球脳にする。
俺のやりたいことは天才野球少年ではないからな。
「あれ、ちーちゃん?どこ行くのー?」
「てれびー」
「千秋はホントに野球が好きだなー。将来プロとかになったりしてな」
「やーん、まさかー!ちーちゃんはアイドルよ」
アイドル?
ありえないですよ、母上殿。時代は野球ですぜ、野球。
野球がテレビで放送されていると常に集中して見ていたので、父さんも母さんも俺が野球好きなのは既に知っている。
俺は父さんの隣に座り、流れていた野球放送を見ながら買ってもらったボールのニギニギに集中。
夏真っ盛りのこの時期は野球放送がたくさんあるからな!
あまり動けないこの歳は出来ることをできるだけして、プロやら高校球児やらを観察しまくってやる。