ありえない宣告
「あなたの"男性余命"は後半年です―--」
------------------------------------------
とある病院の診察室で、ヒゲでメガネをかけた小太りの医師から、そう告げられる。
「いやいやいやいや、何を冗談言ってるのかなおじさん……ヒゲ抜くぞ?」
「冗談じゃないよ、君は徐々に女性化する病気にかかってるんだよ」
「はぁ!? そんな病気あるわけないだろ!」
そんなとんでもない宣告を受ける彼の名は、
桑原 伊織
某次元刀使いを彷彿させる、いかつい苗字で男として生まれた彼は、親にせめて名前だけでもかわいらしくと、ある種の情けで付けられたという。今年15歳になったばかりの、中学3年生だ。
おほんと、ヒゲ医師は一息付く。
「今は自覚がないだろうけど、その内分かるよ。でも、女の子の人生もいいと思うぞー」
伊織は、この親父は何をニタニタしてやがるんだ、と思わず胸倉を掴みそうな勢いで席を立つ。
「風邪引いたから診てもらおうと思って病院きたのに、なんだよこれ! 子供だからってバカにしやがって!」
ほっほっと、ヒゲメガネの医師はからかう様に笑う。
「信じる信じないも、まぁその内、身を持って分かるよ。それまで、残りの男性生活を楽しむんだねー」
「ここの病院の口コミ、めちゃくちゃ悪く書いてやるからな!」
伊織は中指を立て、精一杯の反抗をしながら診察室を後にする。
そんな出来事があったことも忘れ、日常を過ごす伊織。そして半年後、高校入学直前……
伊織は身をもって思い知ることとなる。